「日本発の国際的なプロダクトを開発する」–AI技術集団Helpfeel・洛西CEOの意気込み

今回は「「日本発の国際的なプロダクトを開発する」–AI技術集団Helpfeel・洛西CEOの意気込み」についてご紹介します。

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 「日本発の国際的なプロダクトを作れる会社になる」。AI技術を組み込んだクラウドサービスの開発・販売を手掛けるHelpfeel 代表取締役 最高経営責任者(CEO)の洛西一周氏は、同社を立ち上げた目的をこう説明する。グローバルで通用する日本発のプロダクトが生まれない理由は「タイムマシン経営にある」とし、洛西氏は設立当初からクラウドサービスの開発とマーケティング体制の構築に力を注いだ。

 洛西氏によると、タイムマシン経営とは米国で成功したプロダクトを日本風にアレンジして開発・販売すること。グループウェアなどがその典型だろう。しばらくの間は日本企業から受け入れられるが、先行する米国の巨大企業が日本市場に本格進出すれば、開発力も販売力もかなわない。多くのソフトウェア会社の売り上げ規模は500億円にも満たず、数十億円のソフトウェア会社がほとんどだ。対して洛西氏は、「当社は最初からグローバル展開を目指す」という。創業時、資金不足などを理由に受託開発からスタートし、余裕ができたら自社プロダクトの開発に取り組むパターンは少なくない。しかし、日本市場向けとなると日本語ワープロなどはその代表格で、海外で売れるのは難しいだろう。

 実は、洛西氏には大学時代の苦い体験がある。同氏は高校生の時に、「Windows」のアプリケーション「紙copi」を開発し、ジャストシステムと共同販売をした。100万人に利用された実績をもつものの、徐々に売れなくなっていったという。米Microsoftが日本市場に進出し、ジャストシステムの牙城に乗り込んできたことなどが背景にあるとみる。開発・販売競争の激しさを目の当たりにした同氏は「Microsoftのやり方を学ぶために渡米しよう」と決意し、2007年に米国・シリコンバレーで起業する。シリコンバレーにはGoogleなどビジネスモデルの参考になるITベンダーが数多くあり、投資家やスタートアップ支援施設などのエコシステムも整っている。

 シリコンバレーでは、現在テクニカルフェローの増井俊之氏が発明したオープンソースソフトウェア(OSS)のスクリーンショットソフト「Gyazo」を洛西氏と2人で事業化した。洛西氏によると、「画像などをアップロードし、共有できる世界初のクラウドサービス」で、利用者数は累計で約2200万になり、日本のユーザーはその約1割だという。しかし、マネタイズ化がうまくいかずに倒産寸前になり、5年間のシリコンバレー生活を終えて帰国した。

 皮肉なことに帰国後、Gyazoの有料ユーザーが増え、売り上げ数億円の規模に成長した。同氏は「生き延びた」と語る。これを機に米法人の営業所を日本に設置し、活動を開始。この間にGyazoの販売を伸ばすとともに、新しいプロダクトの開発に着手した。2014年にはベンチャーキャピタル(VC)などから約2億円の資金調達にも成功する。

 そうした中、「Helpfeel」の開発に取り組んだ。同サービスは、テクニカルフェローの増井氏が考えた新しいヘルプデスクツールだ。洛西氏は、「世の中にあるヘルプデスクは使いづらく、詳しい人に聞いたほうが早いこともしばしばあるだろう」とする。また、答えはマニュアルなどにあるが、人の質問とマニュアルに書かれていることが一致しないことに問題があるとも指摘する。そこで、素人や消費者の視点からヘルプデスクを作り直したという。消費者の言葉で質問や問い合わせをすると解決してくれる。回答が足りなければ蓄積していく。マニュアルを改良するのではなく、予測できるよう質問と回答を充実させる。それがHelpfeelだという。

 2019年に提供を開始したHelpfeelは、これまで約500サイトに採用されている。2020年に営業所を法人格にするとともに、企業向けの営業部隊に約100人を配置し、国内企業に本格的に提案し、JR北九州やLIXILなど大企業にも次々に使われ始める。約30人のサポートチームが、受注した企業のデータを2~3カ月かけて読み込みながら、よくある質問(FAQ)などのウェブサイト構築や稼働を支援する。データの分析や使い方なども含めて伴走する形態にし、最近では北洋銀行、福岡銀行、足利銀行などの地方銀行や生命/損害保険会社、クレジットカード会社、消費者金融などの金融機関にも採用されたという。

 次のクラウドサービスに開発にも乗り出す。洛西氏は「2025年をAIエージェント元年」と位置付け、多くの企業がAI活用の試用から業務変革の結果を出す段階に入ったと考えている。まずはFAQの検索、社内ナレッジの検索・活用するAIエージェントを開発し、早ければ6月ごろ、遅くても年内に提供を開始する。

 意思決定を支援するAIエージェントは、例えばある企業にどんな提案をするのかというように営業を手助けする。“猫も杓子(しゃくし)も”AIエージェントを開発する中、「当社はAIの専門家集団で、自前で検索エンジンを開発し、ユーザーインターフェイスも作れる」と洛西氏は違いを主張する。洛西氏ら5人が情報処理推進機構(IPA)が実施する未踏事業に採択経験があるエンジニア(うち2人はスーパークリエーター認定)だという。

 もちろん、Helpfeelのグローバル展開も開始する。まずはテストマーケティングから始めた。ターゲットにするカスタマサポートの管理職にメッセージを送り、オンライン商談に持ち込む。そのために、ウェブマーケティングと営業などの体制を整備もする。

 洛西氏は売り上げを明かさないが、年平均成長率は70%だという。従業員は2024年に数十人を採用し、200人体制になった。2025年も約50人を採用する予定だ。同社のグローバル市場における実績、つまりグローバル展開へ向けた真価が2025年に問われることになる。

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