第3回:人間中心の設計がデジタルワークプレース成功の鍵

今回は「第3回:人間中心の設計がデジタルワークプレース成功の鍵」についてご紹介します。

関連ワード (ビッグデータ、誰一人取り残さない、ユーザー中心のDX改革等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 新型コロナウイルス感染症によって、働き方の変化に注目が集まりがちだが、従業員の働く環境を支える企業の間接部門も役割が大きく変化した。

 人材がとても流動的な米国では、企業の成功のために最も価値のある資源が人材であると認識されている。優秀な人材の獲得は、競争の激しいゲームのようでもある。人事(HR)領域への投資が成功の要となると考えられており、革新的な人事制度が目まぐるしいスピードで導入されている。

 一方、今日の従業員は、Amazonのような消費者向けのサービスやテクノロジーに慣れており、勤務先にもそうした利便性の高い仕組みを期待していると言われている。人材は、創造的な文化と最先端の人事テクノロジーを備えた先進的な企業に引き寄せられる。そこで、先進的な企業では、優秀な人材を獲得するだけでなく、データとテクノロジーを活用した魅力的な組織文化で人材をサポートし、あらゆる面で競争優位性を獲得しようとしている。

 ある調査では米国企業におけるIT部門の74%は、コロナ禍により最高情報責任者(CIO)の役割が高められたと回答している。つまり、これまでIT部門が担っていた役割が、故障しないITシステムをいかに予算内で計画通りに提供するかという観点から、ビジネスで成果を上げるためにどのように最先端のテクノロジーを活用していくかに移り変わっているのである。

 また、人事部門の役割も変化している。あらゆる規模の組織で、従業員が価値を感じ、職場への帰属意識を維持できるよう、従業員への共感戦略の開発に力を注いでいる。McKinsey & Companyの最近の調査では、雇用者と従業員の間の認識のズレがより大きくなっていると指摘されている。

 調査によると、従業員は上司や組織からの評価や帰属意識などの関係要素を優先する可能性がはるかに高いにもかかわらず、雇用主は不十分な報酬やワークライフバランスなどの取引要因に焦点を当てる傾向があった。すなわち、雇用主は組織構造や給与・休暇管理などの要素を最低限なものとみなして、それよりも従業員の体験を重視する必要があるということが分かった。こうした雇用者と従業員の意識の隔たりを減らす手段として、テクノロジーが期待されている。

 実際、世界に100万人以上の従業員を抱えるAmazonの人事部では、ビジネスの成功は「テクノロジー」と「ヒューマンエクスペリエンス(人の体験)」を融合させることであるという学びから、部門の機能とテクノロジーと密接に結び付けている。それにより、従来の人事の役割から、「ピープルエクスペリエンス&テクノロジー」を実現するチームへと変化を遂げている。

 では、どのような従業員体験が今の時代に求められているのだろうか。

 PendoでNew Products(新製品)を担当しているシニアバイスプレジデント(SVP)のTatyana Mamut(タチアナ・マムート)は、グローバル・デザイン・イノベーション・ファームとして知られるIDEOで、Organization Design(組織デザイン)サービスを立ち上げた人物だ。Visaのようなグローバル企業が、従業員の働き方を変えることでよりイノベーティブになるための組織デザインを手がけてきた。2012年ごろの当時、より効果的で効率的なイノベーションを生み出す革新的な企業はウォール街で高く評価されたからだ。

 最も依頼が多かったのは、ワークプレ-ス体験の再設計プロジェクトで、文字通りオフィス空間をより創造的で協調的なものに作り変えるというものであった。なぜ、最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)がオフィススペースのデザインにこれほどまで時間とコストをかけるのかというと、従業員の働き方次第で、ビジネスの成果が変わることを理解しており、革新的な製品を生み出すためには、従業員のイノベーションを支えるためのシームレスな環境を提供することが重要だったからだ。

 2007年の「iPhone」誕生をきっかけに、IDEOはデジタル体験が職場環境にどのような影響を与えるかを考え始めたそうだ。モバイル技術の進展によって会社などの特定の場所に縛られることがなくなり働き方が変化しただけでなく、従業員はデジタル技術を用いたより快適な仕事環境を求めるようになった。

 そして、新型コロナウイルス感染症の大流行により、デジタルワークプレースの整備が急速に重要度を増していったというわけだ。

 2021年に発表されたHarvard Business Review Analytic Servicesによる調査レポート「競争力強化に向けたデジタルアダプションの推進」によると、75%の経営者が、従業員に適切なソフトウェアを使用させることが、組織の競争上の差別化要因であると回答し、89%が従業員向けソフトウェアのアダプション(活用・定着化)が優先課題としているにもかかわらず、その取り組みに大きな効果があると答えたのは30%に過ぎないという結果だった。

 一昔前のマネジメント理論では、マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド、すなわちマネージャーは現場に足を運び、現場の状況を把握、改善することが重要だと言われていた。だが、従業員がリモート環境で働くデジタルワークプレースでは実践できない。

 そこで、前述のTatyanaは「デジタルワークプレースも、物理的なワークプレースと同じ原理で、人間を中心に設計することが重要」だと提唱する。つまり、デジタルワークプレースを従業員の行動データ(定量データ)とテクノロジーに対する感情という人間的な側面を定性データで観察し、そして従業員に寄り添う形でビジネス成果に導くことを、最新のテクノロジーで実現させるのである。

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