人工の皮膚をロボットに–その可能性とさまざまな取り組み
今回は「人工の皮膚をロボットに–その可能性とさまざまな取り組み」についてご紹介します。
関連ワード (経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
人間をロボットで再現するというのは簡単な取り組みではない。人間の脳を作り上げる?研究者らは既に、ソフトウェアとハードウェアでシナプス(神経節)やニューロン(神経細胞)をモデル化する取り組みを始めている。人間のように動けるロボット?研究者らは既に、二足歩行ができるマシンに搭載する人工の筋肉や関節、腱を開発中だ。
しかし、本当に人間そっくりのロボットを作り上げようとした場合、最大の課題はおそらく皮膚になるだろう。
まず、大きさの問題がある。皮膚は人間の体の中で最大の器官であり、その表面積は1.5~2平方メートルにも及ぶ。また、皮膚にはさまざまな働きがある。体内のものを中にとどめておく一方で、体外にあるものが体内に侵入しないようにするだけでなく、驚くほど複雑な働きを数多く担っている。圧力や質感、振動、冷たさ、熱さといったさまざまな感覚を検出するための個別の受容体を有している上、体のいたるところで発生したほんのちょっとした接触でも検出する能力を有している。
人間の皮膚に匹敵するくらいの多彩な皮膚感覚とともに、生物の皮膚のような適応能力を有し、1秒間に数百万個というセンサーからの情報を収集、処理できるスキン(皮膚)を搭載したロボットを作ろうした場合、電力という乗り越えなければならない大きな障壁がある。
皮膚組織には、情報を収集するための数百万に及ぶ受容体がある。ロボットに同程度の密度でセンサーを搭載し、1秒間に数百回、あるいは数千回のペースで情報処理をさせようとした場合、大量の電力と処理能力が必要となる。
このため、ミュンヘン工科大学(TUM)で認知システムの教授を務めるGordon Cheng氏は、ロボットの腕1本を電子スキンで覆い、従来のコンピューティング手法でデータを処理した経験により、人間の体が用いているシステムの方がはるかに有益なモデルだと確信するに至った。
Cheng氏は「われわれは従来からある知識を使い、電力を用いてデータを理解しようとし、ある程度の成功を収めた。しかし規模を拡大しようとすると、さらに多くのコンピューターが必要になった」と述べた。生物学的システム全体で最も巧妙な点の1つに、何かが変化し、その情報を脳が必要とするまでは情報を送信しないというものがある。
というのも、皮膚は脳が必要とする情報のみを、脳が必要とするタイミングで引き渡すようになっているためだ。例えば朝起きて靴下を履いた際には、皮膚は脳に対して、靴下が足を覆っていると伝えたはずだ。しかし皮膚は、靴下を履いている間ずっとその情報を脳に伝える必要はないと分かっている。つまり、皮膚の受容体は靴下を履いた際に信号を伝え、1日の終わりに脱ぐまで信号を弱めておく。
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