事業にインパクトあるデータ活用を提案–フライウィール横山CEOの意気込み
今回は「事業にインパクトあるデータ活用を提案–フライウィール横山CEOの意気込み」についてご紹介します。
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データ活用が売上増加などの企業成長につながると言われる一方で、ガートナージャパンが2022年10月に発表した調査結果によると、日本企業のデータ活用状況は「全社で十分な成果を得ている」とする回答がわずか2.2%。その背景には、データ活用のスキル不足、経営者の意思決定などさまざまな理由がありそうだが、そもそもビジネスにインパクトを与える活用シーンを描けないことにある。
そうした課題を解決すべく、データ活用プラットフォームを開発・提供するのがデータエンジニアリングを専門とするスタートアップのフライウィールだ。共同創業者で代表取締役CEOの横山直人氏、取締役CTOの波村大悟氏をはじめとする経営陣やITエンジニアらの多くがGoogleやFacebook(現Meta)、Microsoftなど米テック大手の出身で、大量データを使った事業成長を経験してきた。横山氏は「2010年以降になってAIフレームワークが次々に出てきて、AIによるデータ活用が進み、事業が急激に成長するのを実感した」と振り返り、「日本企業にも同じことができる」と狙いをつけて2018年4月に同社を起業した。
フライウィールが提供するのは、大量のデータを連携させるデータ活用基盤と、それを効果的に活用するコンサルティングなどのプロフェショナルサービスになる。データ戦略を策定するコンサルティングやユーザーインターフェイス(UI)や管理コンソールの開発、既存システムとの接続など、「事業にインパクトがあるようになるまで手がける」(横山氏)。多くの企業でAIを用いたデータ活用プロジェクトが概念実証(PoC)の段階にとどまり、商用利用に至らない様子を見てきたからだ。
データ活用を妨げる誤解もあるという。1つ目はデータサイエンティストのみで完結できると思っていること、2つ目はAIモデルを作ればうまくいくと思っていること、3つ目は監視やメンテナンスは必要最低限でいいと思っていること。つまり、データを活用してビジネスを成長させるには、ソフトウェアエンジニアのスキルや能力も必要となり、何度もPoCを繰り返しながら成果に結びつけていくことになる。また、優れたAIモデルを構築できても、精度を維持・向上させるために日々の運用や保守が欠かせない。
こうした課題を解決するために開発したのが、データ基盤とオファリングから成るデータ活用プラットフォームの「CONATA」になる。「パフォーマンスの良いAIモデルをスピーディーに見つける」(横山氏)などデータ活用を効率化する仕組みと、レコメンドや検索、シミュレーション、需要予測などのソリューションがある。
例えば、ある小売企業で利益率を10%から20%に改善するため、商品の欠品率や実売率などから、Aセンターの在庫を減らし、Bセンターの在庫を増やすなど、適切な在庫量や発注量を予測する。商品Aの取り扱いを止めたら売り上げにどう影響するのか、商品Bを購入した消費者にどの商品をレコメンドすれば効果的なのか、こうした米IT大手が得意とするデータ活用の仕組みをフライウィールが提供する。横山氏によると、企画から稼働まで3~4カ月ほどというが、業務改革にまで踏み込んだプロジェクトになると1年越しになることもある。
ただ、同社のデータ基盤にいったんデータを統合してしまえば、さまざまなことに活用できるようになる。同氏によると、日本生活協同組合連合会(日本生協連)では1年半で6つの施策を支援したという。目的の1つは若い世代の利用を増やすこと。そのため、商品の陳列や演出方法、販売接点、在庫管理を改善・改良した。ECサイトでレシピから必要な食材を注文できるなど、新たな顧客体験も構築する。
もう1つはカタログ配布の最適化になる。生協では、店舗とECのほかに宅配サービスも提供している。各組合員に月50枚ほど紙のカタログを配布し、マークシート用紙で注文できるようになっている。カタログの配布数を減らすと「売り上げが減るのではないか」との懸念があったが、顧客の購買データや行動データ、発注データなどを分析し、配布部数を50%削減しても売り上げは減らないと予測した。実際に想定通りの結果となり、本格的に利用を始めている。不要なカタログの削減は、顧客体験の改善だけでなく、SDGs(持続可能な開発)の貢献にもつながったという。
ほかにも、レンタルチェーンの「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)では、書籍返品率の低減に取り組んでいる。同社が保有する会員7000万人、800店舗、450万タイトル以上のデータを活用し、店舗ごとに最適な在庫量や発注量などを導き出すシステムを構築した。