課税事業者への変更は6割、未対応企業はインボイス制度を「理解していない」
今回は「課税事業者への変更は6割、未対応企業はインボイス制度を「理解していない」」についてご紹介します。
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freeeは10月20日、インボイス(適格請求書)制度に関する報道関係者向け勉強会を開催した。インボイス制度は2023年10月1日から導入される。法人企業における課税事業者への変更依頼は「約6割に迫る状況。だが、インボイス制度に反対する事業者は1割弱。未対応の企業はインボイス対応を認識していない」(同社 プロダクト戦略本部 プロダクトマーケティングマネジャー 尾籠威則氏)と指摘した。
freeeが9月26日から2日間、20~50代の個人事業主を対象にした調査によれば、「理解済み」と回答した割合は14.4%。約1年後の実施を踏まえて名称は知りつつも仕組みを把握しない割合は26.3%、「認識していない」割合は26.7%におよんだ(有効回答数926)。
インボイス制度の仕組みを理解している個人事業主に限定して、インボイス制度への意見を聞くと、賛成はわずか4.4%。反対は32.6%、両論併記は26.3%(有効回答数435)。
インボイス制度は必然的に事業者と取引先が存在するものの、「取引先と協議を進める」「予定がある」個人事業主は12.6%、残る87.4%は「不明・未定」と回答した(有効回答数926)。
ただし、業種によって協議状況は異なり、導入業種別に見ると卸売業(33%)、デザイン業(29%)、コンサルティング業(26%)が上位に並ぶ。さらに政府は農業・非課税者に含まれる116万者をのぞく372万者のうち、約161万者が課税事業へ転換すると見込んでいる。尾籠氏は「事業者あたりの税負担額は約15万4000円におよぶ。(インボイス制度の)重要キーワードは仕入税額控除」と指摘した。
仕入税額控除は個人事業主などに対して課税仕入れの消費税額を差し引く仕組みだが、事業者が免税事業者と取り引きする際は事業者側の仕入税負担が発生する。当然、個人事業主が課税事業へ転換になれば済む話だが、事業継続する事業者は23.7%、免税事業者を続ける事業者は26.1%、その他・不明は50.2%だった(有効回答数283)。
他方で法人企業の経理部門責任者や担当者558人を対象に9月12日から5日間実施した調査によれば、免税事業者との取り引きがある企業は43.4%。そのうち課税事業へ転換依頼を行う予定の企業は57.4%におよんだ(有効回答数242)。こちらも業種による隔たりがあり、上位には製造業(21.6%)、商社(15.8%)、IT(12.2%)、建築業(7.2%)が並ぶ(有効回答数139)。
説明会では発注側(事業者)が留意すべき「独禁法」(私的独占の禁止および公正取り引きの確保に関する法律)や「下請法」(下請代金支払遅延等防止法)の注意点も語られたが、興味深いのは、freee法務部に所属する弁護士が税務署のインボイス制度説明会に参加した報告である。
同社 法務部 弁護士 水井大氏は「税務署の職員はインボイス以前に消費税の知識がまったくないと手厳しいコメントを発していた。そもそも自身が『課税事業者か免税事業者から分からない』レベル。(ただ、税務署の説明も)資料は読み切れないほど多く、『結局自分はどうなんだ』とのニーズを満たしていない」と指摘する。さらに「直接税金を上げればいいものの、当事者間取り引き(の仕組みとして導入)となると実質的な増税になる」(水井氏)とも言い当てた。
同社は10月から3つの質問に回答するだけで対応の有無が分かる「インボイス制度対応簡易診断」、今後は「簡易課税のフローチャート」のリリースを予定している。