急成長から赤字転落見込みのモンスターラボ、拠点撤退や人員削減などで再成長図る

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 デジタル関連のコンサルティングや受託開発をグローバル展開するモンスターラボホールディングスの株価が8月15日に大きく下落した。14日に発表された決算で、2023年度上半期(1~6月)の売り上げが5%超増にとどまり、22%とする期初予想を大きく下回ったからだ。日本を含めた世界各地におけるプロジェクトの縮小・延期、積極的な人材採用による人件費など原価・販管費の増加が重なり、通期は赤字に転落する見通し。創業者で代表取締役社長の鮄川宏樹氏は15日の決算説明会で、人員削減やグローバル拠点の縮小など構造改革を通じて成長軌道に戻すとした。

 同社決算によると、2023年上期の売上高は前年同期比5.2%増の67億6000万円、営業損益は第2四半期に損失が拡大し、黒字予想から4億6800万円の赤字となった。その結果、通期の見通しも売上高を174億4100万円から142億7300万円に、営業損益も14億6800万円の黒字から12億5500万円の赤字へと、それぞれ下方修正した。

 同社は世界20カ国・33拠点で事業を展開するグローバルファームを標ぼうする。日本企業からDX関連の案件を受注し、プロジェクトの上流から下流まで一貫して支援する。システム開発は主にアジアなどの技術者に任せる仕組みで、アジア、欧州、中東、北米へと拠点を拡大。各国のコンサルティングファームや開発会社を買収することでグローバルの組織体制を構築し、各国の顧客を開拓してきた。

 ところが、日本の売上比重が9割以上を占めるアジア太平洋(APAC)地域で既存案件の縮小や終了が拡大した。ユーザー企業の内製化も影響し、「上流フェーズの案件は取れるが、開発フェーズが想定より取れなかった」と鮄川氏は嘆く。「DXは終わりなく改善を続けるものだが、契約上、縮小したり終了したりする」とも話す。プロジェクトを継続的に請け負えるようにすることに課題があったという。

 また、欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)では、中東でのラマダンの影響をよく知らず、売り上げの鈍化につながってしまったと振り返る。「(ラマダンの影響で)プロジェクトに遅れが生じたり、新規案件がなかなか進まなかったりした」(鮄川氏)。欧州では、ロシア・ウクライナ情勢の長期化などに伴う景気後退でプロジェクトの縮小や減少があった。北米地域も景気後退懸念の影響を受け始める。

 このようにグローバルで厳しい状況に陥る中、モンスターラボは構造改革を実施する。6億2500万円の費用を計上し、欧州ではオランダ・アムステルダムの拠点から撤退するほか、デンマークや英国などの各拠点を縮小する。北米でも、カナダ・バンクーバー拠点の撤退のほか、米国やコロンビアの体制を縮小する。APACでも中国・成都の拠点を閉鎖する。「私がホームグラウンド(本拠地)である日本の代表になり、再成長をけん引する」(鮄川氏)。これらによって従業員1566人の約7%に当たる110人を削減する。

 その一方、成長に向けてライフサイエンスや金融などDX受容が旺盛な領域に注力する。鮄川氏は「全方位は止める」と語るとともに、開発フェーズからの案件受注にも力を入れる。「戦略など上流案件を取ることにエネルギーを取られすぎて、売り上げを作ることがおろそかになっていた」と反省する。開発拠点となるデリバリーセンターの稼働率を向上させることにもなる。

 取締役副社長で最高財務責任者(CFO)の中原淳博氏によると、デリバリーセンターの稼働率を2023年度上半期の60~65%から下半期に5~10%改善し、2024年度には80%にするという。粗利益率も今の30%弱を35~38%の適正値に戻す。販管費も2024年度第4四半期には、売上比で現状の約50%から25%以下にする。

 鮄川氏は「DXのニーズは落ちていないし、上流案件の受注は取れている」とし、APACにおける「ChatGPT」などを使った大手金融機関の顧客接点自動化や、中東の不動産会社によるスマートシティー計画、欧州のヘルスケア企業の大型DX案件の受注獲得を挙げる。

 「グローバル企業や政府機関による戦略性の高いDXプロジェクトを獲得できていることから、当社の強みであるビジネス戦略とデザイン、テクノロジー、データ活用の4つのサービスラインを融合したDXソリューションの優位性は変わっていない」(同氏)とし、短期的に負担増になったが採用したコンサルティングやプロジェクトマネジメントなど上流工程の人材を生かし、成長への回帰を確信しているようだ。

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