中国の「アプリ申請化」でインターネットがより閉鎖的になると不安の声

今回は「中国の「アプリ申請化」でインターネットがより閉鎖的になると不安の声」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 中国在住者が「X」(旧Twitter)などのモバイルアプリを利用するには、これまでよりも危険を伴うようになるかもしれない。

 中国では、モバイル端末向けのアプリが申請制へと完全移行することが決まっている。これまで、開発者はモバイルアプリをアプリストアに登録するだけでよかったが、今後は関係当局に事前の申請手続きが必要となる。アプリストアは届け出がされているアプリだけを公開し、未届けのアプリの提供は禁止される。この変更に対して一部のネットユーザーが大きく反発している。

 ことの発端は、2023年8月に中国の情報産業省に相当する工業和信息化部が発表した「モバイルインターネットアプリケーションの登録の実施に関する通知(工業和信息化部関于開展移動互聯網応用程序備案工作的通知)」というもの。中国では、基本的に「Android」端末で「Google Playストア」が利用できないため、騰訊(テンセント)・百度(バイドゥ)などのネット大手や、小米科技(シャオミ)・華為技術(ファーウェイ)などのメーカー各社は自前でアプリストアを運営している。そこで、アプリ開発者は当局の通達に従って申請手続きを行い、登録が完了すると各アプリストアに公開されることになる。「iOS」も同じで、Appleは当局の通達に応じて開発者に登録を促している。

 「微信(WeChat)」で動作するミニプログラムも対象となっている。また、スマートテレビやセットトップボックスについても「アプリストア以外からアプリをインストール/アップデートできなくなった」という声が上がっている。スマートテレビは、アプリストア以外からさまざまな便利アプリを入れてカスタマイズするのが当たり前となっていたので、今後は不便になるだろう。

 通達によれば、「アプリケーションサービス事業者(ASP)やプラットフォーム事業者、デバイスメーカーは未登録のアプリにネットワークアクセスなどを提供してはならない」とし、「法律や行政法規によって公開や送信が禁止されている情報を発見した場合」はアプリへのアクセス停止、配信した情報の拡散防止、関連記録の保管と当局への報告といった「違法かつ不法な情報を監視し、処理するための仕組みの確立が必要」だとしている。

 中国製のアプリだけでなく、外国製のアプリも申請手続きをしないとアプリストアで公開されないし、未登録アプリの利用は禁止措置に触れることになる。これまで、Google系アプリや各種SNSアプリも中国でインストールすることはできた。だが、今後はこれらのアプリも消されることになる。実際、シャオミのスマートフォンで「Telegram」を使っていたネットユーザーはアプリの更新情報を受け取り、従来通りにシャオミのアプリストアからパッケージをダウンロードしてインストールしようとしたところ、正常に完了せず利用もできなくなったという。

 中国には、仮想私設網(VPN)で海外にアクセスする人々が一定数いる。海外のSNSやニュースを見たり、サービスを使ったりするだけでなく、オンラインゲームやコンシューマーゲームのアップデートなどにもニーズがある。こうしたネットユーザーは、今回のアプリ登録の義務化によって、将来中国からネットの壁を越えることができなくなるのではないかと心配している。また、特定の通信を遮断するブラックリスト制から、必要な通信だけを許可するホワイトリスト制にかじを切るのではないかと危惧する声もある。

 中国メーカーのデバイスだけでなく「iPhone」も対象となっているように、中国国内で展開されているスマートフォンを利用する際に問題が発生する恐れがある。Google Playストアが最初から入っている海外のAndroid端末なら問題ないと思いたい。国内で手に入れたスマートフォンのROMを書き換えるという手もあるが、工業和信息化部が2022年に発表した「スマートフォンのプリインストールソフトの行為の通告(関于進一歩規範移動智能終端応用軟件預置行為的通告)」にあるように、ROMを更新してはならないという条文に引っかかる。スマートフォンの修理やオンラインショップで請け負う業者もいるが、グレーなサービスだといえる。

 中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉がある。SNSには、並行輸入品のスマートフォンを購入するか、Andorid端末のroot化やiOS端末のジェイルブレイク(脱獄)などをするというコメントがあった。だが、海外製のアプリがインストールできなくなるだけではない。開発者の多くは数十~数百のアプリを開発しており、それらの申請手続きなどさまざまな手間がかかる。これによってアプリ開発のモチベーションが低下するという声もある。

 工業和信息化部は、アプリ申請制度の導入が詐欺防止に役立ち、インターネット業界の標準化された健全な発展を促進するとメリットを説明する。3月までが申請期間で、4~6月のアプリ届け出の検査期間を経て、7月から運用段階に入る見通しとなっている。

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