中国のアントグループ、作業車のリース事業にブロックチェーンを活用

今回は「中国のアントグループ、作業車のリース事業にブロックチェーンを活用」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 「支付宝」(アリペイ、Alipay)や「芝麻信用」(ジーマ信用、Sesame Credit)で知られる螞蟻集団(アントグループ、Ant Group)のブロックチェーン部門「螞蟻鏈」(アントチェーン、AntChain)がブロックチェーンを使ったソリューションを展開している。それも非代替性トークン(NFT)とひも付けられたデジタルアート(NFTアート)というだけではなく、耐改ざん性の高さや取引の透明性といったブロックチェーンの特性を生かした商用向けのソリューションになる。

 例えば、同社は大疆創新科技(DJI)と農業用ドローンで提携している。ドローン大手であるDJIの業務用ドローンとなるとそれなりの値段はするし、ドローンでの作業が必要になるほどの農地となれば、その広さに応じた機体数とそのアクセサリー類を用意しなければならない。ドローンを運ぶための車両も必要になるだろう。当然、気軽に投資できるものではないので、機材を購入せずにリースすることも多い。DJIと提携し、中国全土に展開する農業用ドローンリース会社のHaisinもその1社だ。

 アントチェーンは先ごろ、「ドローンパイロットの信用スコアとモノのインターネット(IoT)、スマートリスク管理などの技術を組み合わせ、プライバシーを保護しながら資金や資産の安全性を強化する」と発表した。「これによってドローンパイロットが5万人増え、サービスの利用が拡大し、農業の現代化を進められるだろう」とコメントしている。ブロックチェーン技術を活用して保存された過去の利用履歴が与信情報となって銀行やリース会社から与信枠を取得し、資本がない人でもドローンを借りやすくなるという仕組みだ。ただ、これではあまりイメージがつかめないため、別の例で紹介しよう。

 上海の隣にあってアリババの企業城下町である浙江省杭州市に華鉄応急という高所作業車や足場のための資材を貸し出す企業がある。同社とアントは、建設機械に信用データを持たせるためのMaaS(Module as a Service)端末「T-box」をリリースした。これにもブロックチェーン技術が活用されている。

 T-boxはIoT端末であり、高所作業車が稼働している間は、車両の動作軌跡、総走行距離、連続動作時間、機器の位置、持ち上げ時間、バッテリーの残容量、起動時間といったデータをリアルタイムに取得し、サーバーにアップロードする。アップロードされたデータは改ざんされないようにブロックチェーン技術が使われている。高所作業車がどのように運用されているか、整備が行き届いているかが記録され、それによって利用者が評価される仕組みである。

 これまで、中国全土でリースされている高所作業車の稼働状況を厳密に管理できていなかった。そのため、金融機関や保険機関のリスク管理が難しく、資金調達のハードルが高かったり、保険料が高くなったりといった問題があった。つまり、作業機材をリースして事業を開始するには相応の資金力が必要だった。

 この領域にIoTとブロックチェーンの技術を適用することで、高所作業車の稼働データに基づいて保険料を算出するモデル「Usage-based Insurance」(UBI)が可能になる。実際の車両の使用状況に応じて価格を設定することができ、しかも従来よりも大幅に低く抑えられる。金融機関にとっても、事業運営や設備運用のデータが明確になるメリットがある。つまり、融資の前後で評価をする際により正確な根拠を出すことで、保険会社と顧客の間の相互不信を解消し、コストとリスクを削減できるようになる。

 アントと華鉄応急は今後、T-boxを搭載する高所作業車を拡大していくとともに、他の種類の事業車両のリース事業へと横展開させていくという。ちなみに、T-boxには通信ユニットが組み込まれており、これにはスマートフォン向けチップで実績のある紫光展鋭(UNISOC)が開発した4G/5Gチップが搭載されている。こうした製品では部品レベルでも国産を実現しているのだ。

 冒頭で紹介したアントとDJIの農業用ドローンのリースについても、詳しい説明はないが、おおむね高所作業車のリース事業のようなものだと推測できる。つまりそれ自体がIoT端末であるドローンの動作データをブロックチェーンで保存する仕組みだ。さらに報道によれば、信用スコアを作り出したアントらしく、ドローンパイロットである事業者の信用度と組み合わせて与信枠などを算出するという。これからドローンを使った事業を始めようという人でも、ドローンを操作する技術力があれば、資金を集めやすくなるだろう。

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