原点は「Facebook」–Metaの最高ダイバーシティー責任者が語る、“包括的なメタバース”
今回は「原点は「Facebook」–Metaの最高ダイバーシティー責任者が語る、“包括的なメタバース”」についてご紹介します。
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Metaは、女性や有色人種の従業員の比率向上や、マイクロアグレッション(悪意のない攻撃)をリーダーに報告するツールの立ち上げなど、社内のDEI(多様性・公平性・包括性)を推進している。同社は、性別や人種といった属性の多様性に加え、「Cognitive Diversity(認知の多様性)」の向上にも取り組んでおり、さまざまな視点を自社の方針や製品開発に生かしている。
現在同社が注力しているメタバースの構築においても、DEIの概念は欠かせないという。DEIを反映したメタバースとはどういったものなのか。昨今度々発表されている人員削減についてはどのように捉えているのか――。Metaの最高ダイバーシティー責任者(CDO)を務めるMaxine Williams(マキシン・ウィリアムズ)氏に尋ねた。
MetaがDEIを推進する意義について、Williams氏は「われわれは、世界中で利用される製品を作っています。多様な人々に使ってみたいと思ってもらうには、彼らを考慮する必要があります。さらに、QOL(人生の質)を向上させるとなると、DEIを中心に据えなければいけません」と説明し、「DEIを軸とした開発では、利用者の多様性や彼らのニーズをよりオープンに考えるほか、世界中の多様な考え方や経験が反映されている人材を採用・維持することが求められます。当社には“認知の多様性”が存在し、それは従業員一人一人のバックグラウンドや経験、興味関心、優先順位などが基になっています」と語る。
同社は、DEIを反映したメタバースの構築に向けて、さまざまな取り組みを行っている。例えば、世界中のユーザーやクリエーターが自分自身をうまく表現できるよう、2021年時点で100京以上もの組み合わせが可能なアイテムを提供し、その後も新しい顔の形や車椅子などの補助機器を追加している。翻訳ツールの構築にも着手しており、人々が平等に参加し、海外のユーザーとも気軽にやりとりできるようになることを目指している。
先述した通り、DEIの概念はMetaの従業員にも適用される。メタバースの構築では、特にAI、ゲーム、仮想現実/拡張現実(VR/AR)などの分野を担当する人材の多様性を高める必要があるという。そのため同社は、アフリカ系アメリカ人の大学や専門学校、ヒスパニック/アジア系アメリカ人やネイティブアメリカン太平洋諸島民の教育機関などとの提携を進めている。
メタバースにおけるDEIについて、Williams氏は「あらゆる側面で取り組んでいますが、個人的にはコンテンツを生み出すクリエーターの多様性に注目しています。われわれはメタバースを所有しているわけではなく、あくまでも没入型の空間づくりをサポートしています。メタバースの鍵となるのは、その空間内でクリエーターが生み出すコンテンツです。日本でも複数のクリエーターの方々が活躍しており、彼らが作ったコンテンツでユーザーは自身を表現し、他者とつながっています」と話す。
昨今、人員削減を度々発表しているMeta。DEIは本来、従業員の「心理的安全」にも寄与すると言われているが、こうした状況において同社は自社の取り組みに説得力を持たせることができるのだろうか。
この問いについて同氏は「われわれは効率化を進めていますが、その解は必ずしも人員削減ではなく、まずは消費者のニーズや自社の得意分野を考慮して事業の優先順位を付けています。当社はプロダクトカンパニーなので、特定の製品の優先順位が低い場合、それに従事している人々の処遇も考える必要があります。まずは別のチームに異動してもらうことを試みますが、どうしても解雇しなければいけないケースも残念ながら存在します。DEIと人員削減は矛盾しておらず、優先順位を決めることもDEIの一つであり、そこでは人員の問題に対処しなければならない時もあります」と見解を述べた。
最後にMetaのDEIを推進する上で、Williams氏ならではの強みを聞くと「私は非常に多様なバックグラウンドを持っています。出身地のトリニダード・トバゴ共和国は面積の小さい国ですが、国民のルーツはインドやアフリカ、アジア太平洋(APAC)、中東など多岐にわたります。私は多様性を理解しながら成長し、その後はさまざまな国でいろいろな仕事をしてきました。こうした経験を通して多様性がもたらす力を実感し、それを最大限生かす組織運営のノウハウを会得していきました」と語る。
「その結果、私は特定の国や人々だけでなく、世界中のあらゆる人にサービスを提供しているMetaのような企業で働いています。振り返ると、当社は世界中のあらゆる人が利用でき、海外の人ともつながれる『Facebook』からスタートしました。今、われわれはメタバースを構築しており、“存在の力”を実感しています。つまり、ユーザーは物理的に離れている人々がすぐそばにいるような感覚を持てるのです。多様性の力を理解し、さまざまな国で働いてきた経験が、包括的なメタバースの構築に寄与すると信じています」(Williams氏)