インテルの「AI Everywhere」戦略–プラットフォームを問わず、AIを利用可能に

今回は「インテルの「AI Everywhere」戦略–プラットフォームを問わず、AIを利用可能に」についてご紹介します。

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 インテルは12月18日、最新戦略「AI Everywhere」を説明するとともに、同戦略を支える新製品「インテルCore Ultraプロセッサー」「第5世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー」を発表した。米国時間12月14日にニューヨークで開催された「AI Everywhere」イベントでの発表内容を日本でも展開した形だ。

 概要を説明した代表取締役社長の鈴木国正氏は「AI Everywhere」というメッセージについて「インテルの大きな、また、新しい方向性を示すもの」とし、さらに米本社最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏が数カ月前から使い始めた言葉だという「Siliconomy(シリコノミー)」も紹介した。

 これは「Silicon(シリコン)」と「Economy(エコノミー)」を合わせた造語で、「シリコンなくして経済成長はない。シリコンというものを相当理解した上で経済というものを考えていかなければならない。産業というものを考えていかなければいけない、という意味合い」だといい、さらに「インテルがこれを発信することで、自ら『インテルに責任があるぞ』と、この半導体業界のリーダーとしての責任があるよということだと思う」とし、いわば社会全体に向けた覚悟のメッセージだと位置付けた。

 鈴木氏は同社の最新状況の紹介として、ファウンドリー事業への取り組み「IDM 2.0戦略」や製造プロセスの微細化のロードマップの紹介も行った。プロセスノードに関しては、現在Intel7とIntel4が量産出荷中、Intel3が2023年下半期製造開始、Intel20Aが2024年製造開始予定、Intel18Aが2024年の製造開始に向け順調という。

 現在最新となるIntel4に続くIntel3、Intel20A、Intel18Aの3世代があと1年ほどで続々製造開始となるという驚異的なペースとなっている。この分野での進化を急ぐ理由は、10nm世代への移行に手間取った結果台湾TSMCに製造技術で遅れを取り、「凋落」「没落」といった厳しい評価を受けたことを意識してのことだろう。先端技術への取り組み例としてIntel4でのEUV露光の採用やガラス製サブスレートの研究といったトピックも紹介され、急速なペースでイノベーションを起こし続けているというカウンターメッセージを発信した形となった。

 続いて、執行役員 経営戦略室長の大野誠氏が同社のAI戦略について概要を説明した。この数年で急速な発展を遂げたAIが「私たちの毎日の生活に変革をもたらしている」という認識を踏まえ、同社は「クライアントからエッジ、データセンターやクラウドまで、プラットフォームを問わず、AIを利用可能にすること」という「AI Everywhere戦略」を打ち出している。

 現在のAI処理は膨大なコンピューティングリソースを使用するため、主にクラウドで実行されている。同氏は「それ自体が問題ということではなく、今後多様なユーザーのニーズに応えるためには、推論処理の一部をユーザー側に近いエッジやローカルで処理するということを考えていく必要があると思っている」とした。

 機密性の高いデータを学習に使用する場合などは、クラウドを使わずにオンプレミスで処理したいというニーズは間違いなく存在している。さらに、今後はオフィスアプリケーションを始めとするクライアントPC上のワークロードでもAIアシスタント機能などが実装されていくと考えられる。

 後付けオプションのような形だと普及に時間を要するが、最新のプロセッサーにAI機能を組み込んでしまえば市場展開は迅速になるほか、そうしたハードウェアが広く普及しているという状況を前提としてソフトウェアやサービスが豊富に提供されることも期待されるだろう。この手法は、無線LANの普及期にチップセット標準機能としてWi-Fi機能を搭載した際にも見られたもので、同社としては手慣れた戦術ともいえそうだ。

 この戦略に沿った具体的な新製品として発表されたのが、サーバー向けの「第5世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー(開発コード名:Emerald Rapids)」とPC向けの「インテルCore Ultraプロセッサー(開発コード名:Meteor Lake)」となる。いずれも搭載されるコアにAIアクセラレーション機能を実装しており、AI Everywhere戦略を具体化する製品と位置付けられる。

 深層学習(DL)処理を高速化する「インテルGaudi AIアクセラレータ」の次世代製品となる「インテルGaudi 3アクセラレータ」に関しても、2024年にリリース予定としてアナウンスされた。こちらは5nmプロセスで製造される予定で、現行のGaudi2(7nm)と比較してBF16演算で4倍の性能が実現するという。

 公表されたロードマップが順調に実現すれば、2024年にはまたさまざまな新製品がリリースされると同時に半導体製造プロセスも新世代に突入していくことになりそうだ。AI技術の具体的な活用も増えてくると予想される2024年の動向が注目される。

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