DX専門組織を実際に立ち上げるステップ–後編
今回は「DX専門組織を実際に立ち上げるステップ–後編」についてご紹介します。
関連ワード (DXマネジメントオフィス入門、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本稿では前回に引き続き、実際にDX専門組織を組閣し、立ち上げていく際に、どのような手順とアプローチで効率的・効果的に進めていくべきかについて具体的に解説します。立上げのアプローチとしては、「1.あるべき姿の明確化」「2.企画・設計」「3.運用準備」「4.DX専門組織 試行運用」「5.DX専門組織 本格運用」の5段階の手続きを推進することを推奨します(図1参照)。前回の記事で「1.あるべき姿の明確化」と「2.企画・設計」を取り上げました。今回は、「3.運用準備」「4.DX専門組織 試行運用」「5.DX専門組織 本格運用」を取り上げます。
DX専門組織のTo-Be(将来)の業務の骨格(概要設計)が固まった後、いよいよDX専門組織の運用開始に向けた準備活動を推進します。
ここでは、前回の「2.企画・設計」フェーズにおける「(5)To-Be:DX専門組織支援業務の概要設計」で実施したアウトプットに基づき、To-Be業務を詳細に設計します。オペレーションやルール、ポリシー面の深堀し、運用準備に備えます。
「2.企画・設計」で整理・定義した「As-Is ←→ To-BeのGAP分析」を行います。従来のさまざまな既存業務やルールと新たにDX専門組織が行うそれらとを比較し、強化すべきケイパビリティーや、それに伴い改善が必要となるAs-Is業務、ルールを明らかにします。DX専門組織の初期メンバーは、社内から擁立する場合がほとんどであり、As-Is業務は比較的問題なく継続して実施できますが、新たな業務は未踏の領域であるため、その手順やプロセス、ルールを規定しておかないと、推進は困難になるでしょう。そういう意味では、まず「オペレーションの詳細設計」が必要になります。
「(5)To-Be:DX専門組織支援業務の概要設計」では、概要レベルで策定したTo-Beの業務フローを基に、DX専門組織の日々のオペレーションを詳細に設計していきます。プロセスフローまたはリスト形式で、可能であれば「SOP(Standard Operating Procedure:標準作業手順書)」レベルにまで落とし込み、明文化することで、DX専門組織運営として、だれが(Who)、いつ(When)、何を(What)、どのように行うか(How)がマニュアル化され、これまでに経験のない業務においても手戻り・抜け漏れなく効率的に遂行できます。
続いて、「業務支援ツール(Excelなどの台帳)の準備」を行います。本連載の第10回でも触れたように、DX専門組織は社内で推進されているデジタル施策やデジタルコストに関わる情報などを一元管理し、ガバナンスを維持していく責務があります。Excelをベースとした「デジタル施策一覧」や「デジタルコスト管理台帳」など、To-Beの業務フローに記載されたツール群の作成・準備が重要です。
次に、「組織職位別業務分担」を整理します。作業分解構造図(WBS)に規定した、タスクと担当(職位)のアサイン情報を基に、RACIチャート※にまとめていくと、責任分界点がよりはっきりと示されます。このRACIチャートに基づき、各職位が各タスクにどのような関わり方をするのか、明確に定義することが重要です。
※RACIチャート:職位別/タスクのマトリックスに、「Responsible:実行責任者」「Accountable:説明責任者」「Consulted:情報提供者」「Informed:報告先」の頭文字を割り当てたもの。R/A/C/Iを兼務しても良いが、1つのタスクにAは必ず1つだけ設定することがルールになる(0または2つ以上は不可)。
次に、「マネジメント領域別詳細設計(チェンジマネジメント/コミュニケーションプラン(人事含め)」として、「1.あるべき姿の明確化」フェーズの「(2)DX専門組織の推進シナリオ作成」においてアウトラインを作成したマネジメントポリシーを詳細なものに更新します。To-Be設計を進めていく中で新たに定義できた役割や業務について、アップデートをしていく作業です。
また、「DX専門組織ガバナンスルール/プロセス設計」も併せて実施していきます。前回解説したDX専門組織の管理ガバナンスの5要素「情報」「プロセス」「モノ(施策)」「カネ(予算・原資)」「ヒト(組織)」の軸と、ここまでに定義してきたTo-Be業務のプロセス・役割・ポリシーを突き合せ、改めてガバナンスルール/プロセスをアップデートしていきます。やるべきことが詳細に定義されてきていますから、DX専門組織として「やってはいけないこと」「やる必要のないこと」、つまり、他の部門・組織が実施すべきことに着目し、ルールやプロセスを見直すことで、組織間の業務分界点が可視化され、より効率的かつスピーディーな業務遂行が実現されます。組織間の責任の押し付け合いや業務領域の取り合いを未然に防ぐ効果もあります。