「人材」ではなく「人財」をうたう企業への“底知れぬ違和感”

今回は「「人材」ではなく「人財」をうたう企業への“底知れぬ違和感”」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 特集連載「ITアナリストが知る日本企業の『ITの盲点』」では、ガートナージャパンのエグゼクティブ プログラム シニアアドバイザー エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏とアナリスト陣との対談を通じて、さまざまな観点から日本企業のITの現状と将来への展望を解き明かしてきた。特別編として、長谷島氏とディスティングイッシュトバイスプレジデント アナリストの亦賀忠明氏による新しい内容をお届けする。今回のテーマは、「IT人材・デジタル人材」について。議論はまず、2人が共通して抱えた現在の風潮に対する違和感に始まった。

長谷島:昨今、昔ながらの「人材」ではなく「人財」と表現する企業・組織が増えてきました。企業・組織にとっては大事な「財(宝)」ですが、私と亦賀さんは、どうしても「人財」という表現に違和感を覚えてしまいます。そこで今回は、「人材」について議論していきたいと思います。

 人材の確保や育成が課題として指摘される中、具体的な対策が打てていないにもかかわらず、「人財」という言い方に変えることによって何かしているように見せかける姿勢に不遜さを感じたのが、今回のテーマとして取り上げたきっかけです。

亦賀:これは人によるかと思いますが、私も「人財」という表現に違和感を覚えます。まず、そうした表現が用いられるようになった背景を考えてみたいと思います。

 まず「人材」という表現の場合は、本来は、「才知のある人」といった意味で使われるようです。しかし、「人材」には多くの場合、「材料」といったように、人を組織のリソースとして捉えている前提があるように思います。ということで、そうした誤解を解く、また、本当に「人は宝である」と言いたい企業が「人財」という言葉を使っているだろうと思います。それは一見良いように思いますが、本当の意味でどれだけ人を大事にしているのかが問われるでしょう。

 入社時は一生懸命に優秀な人材に来てほしいと言っている企業が、入った途端に、それぞれの企業や組織特有の「しがらみ、しきたり、掟、作法」といったような状態の中で、人の潜在性を潰しているようなケースはよくあります。逆に、自由にやらせ過ぎて、本来身に付けるべきプロフェッショナリズムを獲得する機会を失わせているといったケースもあります。すなわち、人を本当に「大事」にしているかは、言うだけでなく具体的なアクションがなければそうであるとは言えません。単なるスローガンとして「人財」と言っている企業となっていないか。外部へのアピールだけではなく、当の従業員がどう思っているかが最も大事です。

 また「人を大事」ということについても、いろいろ解釈があります。雇用を守ることはとても大事なことです。しかし、さらに重要なことは、人を元気にし、また本人の持てる潜在力を大いに発揮してもらい活躍してもらうことです。このことは総論賛成のような話ではありますが、実際、企業の中で、本当に皆、思い切り活躍できている状況では必ずしもないと見ています。

 実際、こうした環境を作るためには、相当な工夫、それも継続的な取り組みが必要です。これは社長や人事だけがスローガンを提示するだけで解決する問題ではありません。本部長、部長、課長、メンバー、またフロントラインの営業、製造現場、バックオフィスと、全ての人が、「本当に人を大事にするとはどういうことか」について共通の想いを持たなければ成り立たないテーマです。すなわち、社長や人事がいくら「人財だ」と言っても、役員や上司がすぐに「本当にもうかるのか」「できるのか」「いいから安いところを探してこい」と他人事のようにメンバーに問うような企業では、とても「人」を「人財」として捉えている企業とは言えないでしょう。

 さらに“そもそも論”として「従業員は誰のもの?」という点を改めて考える必要があると思います。

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