超高速開発やクラウドなど事業構造変革が加速–JBCC HDの2022年度決算

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 JBCCホールディングスは5月12日、2021年度(2022年3月期)の連結業績を発表した。売上高は前年比6.8%減の559億3400万円、営業利益は18.4%増の30億8300万円、経常利益は18.4%増の32億2700万円、当期純利益は16.2%増の22億4500万円となった。売上総利益率は30.4%、営業利益率は5.5%、自己資本利益率(ROE)は12.6%だった。

 同日会見した代表取締役社長の東上征司氏は、中期経営計画「HARMONIZ 2023」の初年度として「期待以上の成果。目指す方向の正しさが実証された1年」とする。「営業利益は当初予想を大幅に上回り、着実な2桁成長を遂げられた。『HARMONIZE』の注力事業が伸長し、事業構造変革が加速し、超高速開発、クラウド、セキュリティが大きな伸びを見せ、新規受注は過去最高だった」と述べた。

 売上高は前年割れで、「オンプレミスからクラウドへの移行によるビジネスのやり方が変わったため」(東上氏)とし、「日々売り上げが発生するクラウドとワンタイムで販売するオンプレミスとの対比が影響。クラウドビジネスは目標以上の成果。オンプレミスで失うビジネスが一定量あり、結果としては(2022年1月発表の)予想を上回り、事業構造転換の成果が表れた」と総括した。

 HARMONIZE 2023では、2023年度までに、システムインテグレーション(SI)全体に占める超高速開発比率を70%、クラウドの年平均成長率46%、セキュリティでの年平均成長率42%、クラウド連携本数の契約本数で1万本を目指している。

 2021年度実績は、超高速開発の構成比が42%にまで拡大。売上高は53.7%増の61億7300万円、新規開発の受注高は79.8%増の66億1100万円と高い伸びを見せている。「超高速開発の比率は1年で倍増した。2022年度には6割に高める」(東上氏)とした。

 ローコード/ノーコード開発を促進する超高速開発では、既に400件以上のプロジェクトで実績を持ち、現在10億円以上の大型案件が5件進行しているという。2021年10月に「超高速開発センター」を設立。開発実績を基に部品化およびアセット化したツールが1000個に達しており、これも開発の効率化に貢献しているという。「超高速開発は他社に比べ2倍の生産性で、開発工期と開発投資も半分になる。内製化も支援し、お客さまの開発への参画度合いを高めていける」とした。

 また、クラウドの売上高は前年比51.9%増の31億7000万円、月平均の新規受注高は67.2%増の1億3200万円と、目標を上回った。「クラウドサービスを2000社以上に提供し、コスト最適化を提案できる『インフラクリニック』も600社超に提供し、高評価を得ている。」という。また、Microsoft Teamsを工夫、活用方法などを提案するDX(デジタル変革)ワークショップや定着化支援の成果が上がっているとした。サッポロビールが管理部門に対する社内からの問い合わせに「Cloud AIチャット」を導入し、JBCCと継続的な連携、DXワークショップなどを通じて、さまざまなクラウドソリューションの導入を検討していくという。

 セキュリティの売上高は、前年比38.5%増の27億200万円、月平均の新規受注高は79.3%増の9000万円で、目標を上回った。「AWSやAzureが毎月追加するセキュリティ新機能を正しく活用する提案をし、国際基準のマルチクラウドセキュリティを提供している」という。横河レンタ・リースは、パブリッククラウドのセキュリティ強化を目的に、設定監査サービスを導入。ツールだけでは分からなかた対応すべき優先事項などのアドバイスを得たり、セキュリティに関する国際基準の動向変化などを知ったりでき、効果的なセキュリティ対策を行っているという。

 また、「クラウドとセキュリティで月に合計2億円以上を新規受注している。これがそのままその後の売り上げに計上され、年間20億円以上の上乗せになる。オンプレミスを失うビジネスがクラウドとセキュリティの合計値を下回れば全体ではプラスに転じ、2022年度はそのタイミング」とした。

 クラウド連携の契約本数は、2020年度の108本から706本に約6.5倍の成長だった。SaaS連携の「Qanat Universe」が100ソリューション以上になり、奉行シリーズや楽楽精算、KING OF TIME、ClimberCloudなどと連携するほか、新領域でお掃除ロボットなどIoT分野の連携も広げる。「適用領域の拡大で、圧倒的なデファクトにしていきたい。1万本達成時にオリジナルのソフトウェア収益が大きく高まる」とした。

 セグメント別での業績は、情報ソリューション分野の売上高が前年比6.8%減の539億1800万円、売上総利益は2.0%減の157億9900万円だった。そのうちSIの売上高が7.2%減の146億3800万円、売上総利益が4.6%増の50億4100万円。サービスでは売上高が1.8%増の259億9900万円、売上総利益が4.0%増の80億3900万円。システムでは売上高が19.6%減の132億8000万円、売上総利益が23.8%減の27億1800万円となった。

 「SIは超高速開発の構成比が高まり売上総利益率が4ポイント改善し、生産性や利益率向上への貢献でSI売上高が減少しても売上総利益で向上した。超高速開発が着実に浸透すればSIが利益率の高いビジネスになる」と東上氏は自信を見せた。また、サービス事業は「i-Learning」売却やメーカーの保守代行など収益性の低いビジネスの縮小で利益体質が改善。付加価値の高いクラウドやセキュリティビジネスの貢献などがプラスに影響しているという。またシステムでは、「緩やかにオンプレミスシステムのビジネスを失っていく状況。これは想定通り」とした。

 製品開発製造分野の売上高は前年比8.9%減の20億1500万円、売上総利益は1.5%減の12億500万円だった。「プリンター事業が減少し、自社ソフトウェア事業が上昇して着実に粗利率が改善。ソフトウェアはサブスクリプションビジネスに移行中で、この積み上げが将来の利益につながる」と語った。

 JBCCは、2021年4月にDXを支援するトータルITサービス「HARMONIZE」を発表。「不透明な経済環境でDX推進の必要性を考える経営トップが増加している。課題に対しHARMONIZEでどんな具体的な効果を生むのか、どう具体的に伴走するのかを提案してきた。企業に、使用していると徐々に膨れ上がるクラウドのコストを適正化するための診断サービスも提供し、自らの売り上げを減少させても、お客さまの立場で物事を提案する姿勢が高く評価された」とした。

 なお、ウクライナ情勢については、「直積的な影響はないが、製造、物流、サービスなどのお客さまで物流費や原材料費の高騰などの影響がある。長期化に伴うグローバル経済動向に注視していく」とした。

 2022年度の連結業績見通しは、売上高を前年比1.0%増の565億円、営業利益を7.0%増の33億円、経常利益を5.3%増の34億円、当期純利益を4.7%増の23億5000万円とした。SIは前年度を上回る売上高を計画。サービスも継続成長だがオンプレミスを中心としたシステムは15~30%の大幅減を見込む。「2022年度もこれまでの取り組みを推進し、得られる成果がより鮮明になる1年」と語った。

 また、HARMONIZE 2023で掲げる2023年度の業績目標を修正した。売上高を25億円減の575億円、営業利益を30億円増の360億円とした。クラウドの増加とオンプレミスの減少の転換点を迎えるためといい、「利益率の改善で継続的な営業利益の成長になる。営業利益は控えめだが、構造転換で経営指標が改善していく」と述べた。

 2023年1月には、本社を東京ミッドタウン八重洲に移転する。2022年9月の竣工予定で、グループの首都圏オフィスを統合する。さらに、新たな働き方を実現するために、定年制廃止や成果主義の導入、全員年俸制の採用、社内起業や複業の推進も行っていると説明した。

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