新サービスの発表会見で見えたセールスフォースとタブローのユニークな関係
今回は「新サービスの発表会見で見えたセールスフォースとタブローのユニークな関係」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、セールスフォース・ジャパン 常務執行役員 Tableau事業統括 カントリーマネージャーの佐藤豊氏と、米Intel コーポレートバイスプレジデント アジア太平洋・日本担当ゼネラルマネージャーのSteve Long氏の発言を紹介する。
セールスフォース・ジャパンは先頃、データ分析基盤のSaaS「Tableau Online」の後継サービスとして「Tableau Cloud」を発表した。佐藤氏の冒頭の発言はその発表会見で、Tableau Cloudの「本質」について述べたものである。
会見で説明があったTableau Cloudの内容については速報記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。まずは発言の背景を少々説明しておこう。
セールスフォース・ジャパンの親会社である米Salesforce.com(以下、Salesforce)は2019年秋に米Tableau Software(以下、Tableau)を買収した後、データ分析サービス「Salesforce Einstein Analytics」と「Tableau」を統合した「Tableau CRM」を投入。2022年4月にはそれを「CRM Analytics」に改名して、同社の主力サービス「Salesforce CRM」を軸とした「Customer 360」のデータ分析基盤としてラインアップした。
一方、これまでセルフサービス型ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアとして多くのユーザーに利用されてきたTableau製品は、SaaSとしての第一弾であるTableau Onlineを経て、今回Salesforceの最新技術も取り込んだ形でTableau Cloudに刷新された。
ちなみに、佐藤氏の所属と肩書は現在、上記の通りだが、SalesforceがTableauを買収するまではTableau日本法人のカントリーマネージャーを務めていた。同氏はセールスフォース・ジャパンに所属してからも肩書の通りTableau事業を統括している。
佐藤氏は会見の冒頭で両社の統合について、「2年ほど前にSalesforceに参画して以来、『どこでも、誰もがデータ』を利用できるようになりつつあるとの手ごたえを感じている。両社は目指す価値観が一致している。それが統合の効果を生み出しつつある最大の要因だと考えている」との見方を示した(図1)。
今回の発表で筆者が注目したのは、TableauがSalesforceに買収されながらも、Salesforceベースのサービスと共に、従来のセルフサービス型BIも引き続き事業として注力していく姿勢を明らかにしたことだ。その戦略商品がまさしくTableau Cloudである。しかもこの新サービスは先述したようにSalesforceの最新技術も取り込んで一段と磨きがかかっているという。
これまでのソフトウェアベンダーの買収をめぐる動きでは、買収された側の製品は買収した側の製品ポートフォリオに埋め込まれ、数年経てば存在すら分からなくなってしまうケースが少なくなかった。しかし、今回のTableau Cloudは、むしろSalesforceのパワーを吸収して一気呵成に打って出る勢いだ。
そうした認識で間違いないかと、会見の質疑応答で聞いたところ、佐藤氏は「間違いない」と答えた上で述べたのが、冒頭の発言である。本質と述べた意味はここにある。
こうした動きに改めて感じるのは、Tableauの「商品力」だ。SalesforceもCustomer 360での展開と共に、Tableau Cloudも進化させていったほうがいいと判断したのだろう。非常にユニークな関係の今後の進展に注目したい。