マイクロソフトはなぜ、自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」と手を組んだのか?

今回は「マイクロソフトはなぜ、自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」と手を組んだのか?」についてご紹介します。

関連ワード (一強、速報、開発元等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、Publickey様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


マイクロソフトと、自律型AIソフトウェアエンジニアの「Devin」を開発している「Cognition AI」は先月(2024年5月)、提携を発表しました。

参考:[速報]マイクロソフト、自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」のCognition AIと提携を発表。Azure上でDevinを提供へ

この提携では、両社が共同でDevinを顧客に提供し、コードの移行やモダナイゼーションなどの複雑な作業を支援するとしています。

しかしマイクロソフトは、すでにAIによってほとんどのコーディング作業を自動的に行う「GitHub Workspace」を開発しており、今年(2024年)4月にはテクニカルプレビューを開始しています。

マイクロソフトはなぜ、GitHub Workspaceの競合とも言えるDevinの開発元であるCognition AIと提携したのでしょうか。

この記事ではその理由を推測してみます。

両社の提携内容を確認

まず提携の内容を確認してみましょう。発表はとても短い内容で、下記のポストでほぼその全てが記されています。

We are partnering with Microsoft to help bring Devin to every developer.

Under the partnership, Microsoft will use Devin to help its developers achieve more, starting with code migrations and modernization, and bring Devin to its customer base. Devin will be powered by Azure. pic.twitter.com/7xSwc2flAr

— Cognition (@cognition_labs) May 21, 2024

発表のポイントは2つ。1つはマイクロソフトがDevinを利用して同社顧客のデベロッパーの支援を行う予定であり、まずコードのマイグレーションやモダナイゼーションから開始すること。2つ目はDevinがMicrosoft Azure上で開発、提供されること、です。

Cognition AIにとってマイクロソフトは最善の提携相手

まずCognition AI側からマイクロソフトと提携する理由を考えてみます。

スタートアップであるCognition AIにとって、マイクロソフトとの提携によるメリットは絶大でしょう。

マイクロソフトから提携相手に選ばれたことによる社会的、技術的な信用の獲得、マイクロソフトが持つ膨大な顧客にアプローチできること、そしておそらくMicrosoft Azureのインフラを有利な条件で利用できること、これらを考えると、Cognition AIにとってマイクロソフト以上に望ましい提携相手はほとんど存在しないのではないかと思われます。

Cognition AIが今年(2024年)3月にDevinを初めて世の中に公開した目的は、資金提供や初期の顧客の獲得であったはずです。それはマイクロソフトとの提携という、最も望ましい形で結実したと言ってよいでしょう。

マイクロソフト側がCognition AIと提携するメリットとは?

ではマイクロソフト側がCognition AIと提携するメリットは何でしょうか。

いくつかの理由が考えられますが、筆者が考える最大の理由は、DevinをAWSやGoogle Cloudの手に渡さないようにしたのではないか、ということです。

マイクロソフトにとってDevinが取り得る最悪のシナリオは、Cognition AIがGoogleやAWSなどの競合他社と提携して資金や技術、強力なクラウドインフラの支援などを得て成功し、DevinがGitHub Workspaceの本格的な競合に育ってしまうことです。

マイクロソフトはCognition AIと提携する前に、Devinの技術的な評価をしたはずです。その上でそれが競合他社によって育つくらいなら、自社で提携したほうがよいと判断したのではないでしょうか。

そして、もしもDevinがCopilot Workspaceよりも優れたものになるのであれば、取り込んでしまえば良いと考えているのかもしれません。

マイクロソフトはOpenAIと提携し、同社のAIを基盤にCopilotブランドとして自社サービスとして提供しています。Devinでも同様に、必要とあらば「Copilot Workspace by Devin」とでも名付けて提供することは、マイクロソフトにとって十分に取り得る選択肢でしょう。

マイクロソフトはAIによる開発者支援の支配的存在を維持

AIによる開発者の支援サービスは、GitHub CopilotとGitHub Copilot Workspaceなどを提供するマイクロソフトがほぼ一強という状態です。

マイクロソフトにとってCognition AIとの提携は、これらの将来の競合が登場する前に囲い込み、同社が引き続きこの分野の支配的存在であることを維持するための方策ではないかと思われます。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
メルカリ山田CEO、“リケジョ”限定の奨学金プログラム開始 理系職の男女バランス是正へ
社会とIT
2021-08-05 19:21
ネットスイートの強みが日本で発揮されるのは「まさにこれから」–日本統括の渋谷氏がアピール
IT関連
2023-10-20 08:06
ケニア中央銀行がデジタル通貨の導入について国民から意見を募集
IT関連
2022-02-16 20:43
Amazon Prime VideoがWebAssemblyを採用/WebAssembly製のx86仮想マシンが登場/Flutter for Windowsが正式版にほか。2022年2月の人気記事
編集後記
2022-03-04 11:02
マイクロソフト2Q決算、売上高と利益ともに市場予想を上回る–AIへの巨額投資が奏功
IT関連
2024-02-02 17:10
自動追従型の荷物運搬ロボットが公道走行 交差点渡りコメ配達
IT関連
2021-05-18 01:37
SBIホールディングス、保険商品比較サイトに可観測性プラットフォームを導入
IT関連
2022-11-11 10:47
第1回:PLG(プロダクトレッドグロース)とは?–アプリ時代の必須ビジネス成長モデル
IT関連
2024-09-13 05:57
富士通Japan、金沢工業大学とウェブ3技術を活用したNFT発行の取り組みを実施
IT関連
2023-10-05 12:39
Apple、Google、マイクロソフトが対応表明した、パスワードレスがさらに便利になる2つの新機能とは。 PCがスマホとBluetooth通信でパスワード不要に、2台目のスマホにもクレデンシャルを簡単リストア
Apple
2022-05-09 03:54
みんなの銀行、トンガ王国支援の取り組みとして「みんなのCheer Box」と「みんなのCheerコード」を開始
IT関連
2022-01-27 08:40
オラクル、「Oracle Fusion Data Intelligence」の新たなAI機能を発表
IT関連
2024-05-14 20:49
新たな「Conti」ランサムウェアのソースコード流出か–ロシア支持表明に反発
IT関連
2022-03-24 08:58
さくらインターネットかたる詐欺メールに注意 個人情報の窃取やサーバ不正利用の恐れ
セキュリティ
2021-01-23 12:02