2023年にテクノロジー支出が増える分野、減る分野
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IT分野が専門の調査会社であるGartnerは、世界経済が減速しており、2022年には世界のIT支出がほとんど増加しなかったものの、2023年には年間で5.1%増加すると予想している。
2022年のPCとスマートフォンの出荷台数は個人消費の低迷によって大幅に減少した一方で、世界的な企業のIT支出は、多くの企業がコロナ禍に対応するためのデジタルトランスフォーメーション(DX)プロジェクトを開始した2021年と比べて横ばいだったが、Gartnerは企業のIT支出は「不況に強い」と考えている。
同社は、2022年の企業の世界的なIT支出は2021年よりも微増の0.8%増で、4兆4331億ドル(約660兆円)になると予想している(2021年は前年比10.2%増だった)。一方、2023年の企業のIT支出は、前年比5.1%増の4兆6584億ドル(約690兆円)になるという。
Gartnerのリサーチバイスプレジデント兼ディスティングイッシュトアナリストを務めるJohn-David Lovelock氏は、「企業のIT支出が不況に強いのは、最高経営責任者(CEO)や最高財務責任者(CFO)が、IT予算を削減するのではなく、むしろデジタルビジネスの取り組みへの支出を増やしているためだ」と述べた。
「経済の混乱によってテクノロジー投資の背景が変化するため、支出が増える分野と減少が加速する分野が出るとみられるが、全体としては企業のテクノロジー支出の水準に大きな影響はないと予想される」(同氏)
IT業界のすべての分野が好調なわけではない。調査会社のIDCは、2022年第3四半期のPC出荷台数が前年同期比で15%減少したと発表している。これは、消費者や企業が支出を引き締めているためで、出荷台数が増加した主要PCメーカーはAppleだけだった。またCanalysは、2022年第3四半期のデスクトップPCおよびノートPCの出荷台数が18%減少したと発表しており、その原因は、IT予算の優先順位が見直されたり、削減されたりしたことで、2022年の大半の期間持ちこたえていた商業需要が減少したためだと述べている。
Gartnerが明るい見通しを示している根拠は、7月に企業の最高財務責任者(CFO)200人以上を対象として実施した調査だ。この調査によれば、回答者の69%がデジタル技術に対する支出を増やすことを計画していた。
また同社は、企業がテクノロジーの購入から、ビジネスのニーズに合わせて「テクノロジーを構築し、構成し、組み立てる」ことへと移行していると考えており、そのことがオンプレミスITに対する投資よりもクラウド支出の方が増加している背景になっていると考えている。
Gartnerは2023年のソフトウェア支出(クラウド支出を含む)が、前年比11.3%増の8796億ドル(約130兆円)に達すると予想している。データセンターシステムに対する支出は3.4%増の2162億ドル(約32兆円)にとどまり、デバイスへの支出は0.6%減って7354億ドル(約109兆円)になるとみられるている。また、ITサービス支出は7.9%増加して1兆3579億ドル(約201兆円)に達する一方、通信サービスに対する支出は2.5%増の1兆4692億ドル(約218兆円)になる見込みだ。
「企業は、デジタル技術を、主に収益源の再構築や新たな製品やサービスの追加、既存の製品やサービスのキャッシュフローの改革、既存の製品やサービスのバリュープロポジションの変更などに使用している」とLovelock氏は述べる。
「ただし企業は、経済の見通しが不安定な現状を受けて、運用効率の改善やコストの削減や回避についても検討しているため、IT部門以外の部門の従来型のバックオフィスや運用に関するニーズが、DXプロジェクトのリストに追加されつつある」(同氏)