AWSのスタートアップ支援会見に経産省が登壇した意味とは
今回は「AWSのスタートアップ支援会見に経産省が登壇した意味とは」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)がスタートアップ企業の支援強化について発表した会見に、経済産業省(以下、経産省)が登壇した。この会見、政府調達の在りようの変化を示したターニングポイントといえるのではないか。
「AWSは2013年以来、数千に及ぶ国内スタートアップ企業に数十億円相当の支援を行ってきた」
AWSジャパン 代表執行役員社長の長崎忠雄氏は、同社が10月27日にスタートアップ企業の支援強化について発表した会見で、こう言って胸を張った(写真1)。
本連載においても、2021年11月4日掲載記事「スタートアップ支援の新たなエコシステムづくりに注力するAWSの戦略は奏功するか」、および2022年3月3日掲載記事「メガクラウドベンダーがスタートアップ企業の支援に注力する理由」と取り上げてきたように、AWSはこの分野で活発な活動を行っている。
今回の会見の内容については速報記事をご覧いただくとして、筆者が注目したのは、この会見に経産省が登壇したことだ。
なぜ、注目したのか。それは、政府調達の観点から見ると、これまでIT分野で対象となってきたのはコンピューターシステムやクラウドサービスといった「モノ」だったが、今回の話はスタートアップ支援という「コト」が前面に出ているように感じたからだ。しかも、以前は政府調達に関わるのが非常に難しかった外資系ベンダーが、最近の「ガバメントクラウド」における基盤サービスの調達案件では国産勢をはねのけた形になっている。そうした調達内容におけるコトおよび外資系への広がりを象徴したような今回のAWSジャパンの会見は、政府調達の在りようの変化を示したターニングポイントといえるのではないか。
スタートアップ企業の支援を巡る背景には、日本政府の最近の動きも大きく関与している。岸田文雄首相は自身の経済対策「新しい資本主義」において、「今年をスタートアップ創出元年と世界に宣言し、スタートアップ企業の創出や育成に向けて、やれることは何でもやる覚悟で政策資源を総動員していきたい」として、スタートアップ振興を柱の一つに据えている。これは、「スタートアップこそが社会の課題を成長のエンジンに転換し、持続可能な経済社会を実現する、新しい資本主義の考え方を体現するものだ」との発想に基づく動きである。
今回のAWSジャパンの会見で登壇した経産省 新規事業創造推進室 室長補佐の岡本英樹氏は、「AWSが公共事業およびスタートアップ企業の支援に注力されていることを非常に頼もしく思っている」と謝意を示した後、次のように述べた(写真2)。
「岸田政権はスタートアップ政策に力を入れている。その中で、大きな柱として掲げられているのが、政府調達の促進だ。政府調達というのは、世界各国を見ても産業のイノベーションに向けた重要な政策として位置付けられている。政府がスタートアップ企業のサービスを積極的に購入することによって支援政策を押し進めると。さらに支援するだけでなく、スタートアップ企業の優れた技術やノウハウを政府としても積極的に取り込むことによって、行政サービスの向上につなげていきたいと考えている」
さらに、こう続けた。
「とはいえ、スタートアップ企業からすると、行政とのつながりがないとか、手続きが分からなかったり、やりづらかったりと、大手企業とは違った課題も出てくるだろう。そうした際にAWSのような存在が行政とスタートアップ企業の仲介役をさまざまな形で担っていただけると、政府としても調達がスムーズに進むのではないかと期待している」
岡本氏のこの発言は、まさしくモノだけでなくコトも政府調達の一環であり、しかも以前にあった外資系の壁など全く感じさせないものだ。