百度、AI/IoTを活用した野良猫の越冬対策を公益事業に

今回は「百度、AI/IoTを活用した野良猫の越冬対策を公益事業に」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 中国IT大手の百度(バイドゥ)は、検索サービスを提供する企業から人工知能(AI)を開発する企業へと変化した。同社のAIクラウド「百度大脳」を武器に自動運転分野では国内トップレベルで、スマートスピーカーで活用される音声系AIやスマートシティーでも成果を出している。

 冬がやってきて寒くなると生き物は寒さ対策を迫られる。中国の住宅地でよく見る野良猫は近隣住民の餌やりによって増えていくことがあるが、こうした猫も多くが冬に命を落とすという。百度 AI事業部 エンジニアの晩兮(ワン・シー)氏は、寒さで車の下でうずくまる猫たちを見かけたことをきっかけに、野良猫対策のAIソリューションを個人で作り上げた。猫の巣箱を作り、そこでIoT機器と百度大脳のAIを活用するというものだ。

 巣箱の目的は野良猫の保護。より具体的には水と餌と暖かい空間を提供しつつ、「猫だけを認識して避難させること」「病気の猫を発見すること」「去勢の有無を確認すること」となる。

 用意した巣箱には暖房で空気を入れ換えるためのファンが付けられていて、センサーとカメラも設置されている。最適な気温を保てるようにセンサーが猫を感知すると室内温度や巣箱の各設備の稼働状況を各種IoT機器を通じて専用アプリなどに通知する。

 カメラは夜間でも利用できるものを使っている。AIがその映像を解析して、巣箱に入ろうとする動物が猫かどうかを判別する。さらに、何の種類の猫かを特定することもできる。AIが猫だと判定すれば、巣箱の入口のドアが開いて入れるようになる。猫が巣箱に入る際のカメラ映像から、猫の口や鼻、皮膚に病気がないか、去勢されているかどうかを300ミリ秒以内に判断し、ボランティアに関連する通知が送信されるという仕組みだ。

 最初は野良猫の警戒心が強く、思い通りにいかなかったという。認証用の自動ドアが開いたらすんなり入ってくれればいいのだが、急にドアが開くと野良猫は警戒して逃げてしまう。そこで、自動ドアの前にさらに通路を作り、認証エリアと自動ドアの距離を広げることで問題を解決した。

 一方、「病気の識別」と「去勢の識別」という2つの機能を実装するため、AIに学習させるための猫の画像データを大量に集めなければならなかった。かといって、このプロジェクトはワン氏の趣味のようなもので、本業の時間を割くわけにもいかなかった。そこで百度大脳に詳しいAIエンジニアの同氏は、同社の高精度なAIモデルをカスタマイズできるプラットフォーム「EasyDL」を活用することにした。

 これは、事前トレーニングされた大規模なAIモデルに基づいて最適化されたアルゴリズムを使用し、データサンプルをアップロードするだけで高精度な深層学習モデルを構築できるというもの。EasyDLを用いて写真データを収集してから、野良猫の病気と去勢の有無を識別するアルゴリズムを構築するまでに、約半日しかかからなかったという。また、野良猫用の巣箱が稼働した後も、そこから収集された写真を用いて2回目の反復学習を実行し、精度を向上させたという。

 この私的なプロジェクトがメディアに報じられると、SNSの「微博」(ウェイボー)を通じて10万食分のキャットフードが届いたという。

 さらに、2021年冬には百度が公益事業の一つとして、このスマート猫の巣をプロジェクト化した。名前は「百度AI暖寵聯盟」。意訳すると「百度AIの暖かなペットグループ」といったところだ。このプロジェクトでは、ワン氏が完成させたプロトタイプの巣箱をベースに改良し、さらに百度のサービスからライブストリームで誰でも見守れるようにした。

 ネット大手の美団(メイトゥアン)や不動産開発大手の万科(バンカ)、動物保護団体などとも手を組み、中国各地にパッケージ提供し、巣箱の設置から餌やり、水やりなどの運用を提携業者が請け負うという展開も見せている。個人的に始めたプロジェクトが企業の慈善事業となり、自社のプラットフォームでライブストリーム配信することで、ユーザーがサービスを利用するという流れを作ったわけだ。

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