IIJ鈴木会長は次世代インターネット「Web3」をどう見ているか
今回は「IIJ鈴木会長は次世代インターネット「Web3」をどう見ているか」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、IIJ 代表取締役会長の鈴木幸一氏と、日本IBM 専務執行役員 パートナー・アライアンス&デジタル・セールス事業本部長の三浦美穂氏の発言を紹介する。
インターネットイニシアティブ(IIJ)は先頃、2022年度(2023年3月期)第3四半期累計(2022年4〜12月)の決算を発表した。鈴木氏の冒頭の発言はその発表会見の質疑応答で、「Web3」と呼ばれる次世代インターネットの概念についてどう見ているかを聞いた筆者の質問に答えたものである。
2022年度第3四半期累計の連結業績の前年同期と比べた伸びは、売上高が11.9%増、営業利益が15.3%増、当期利益が11.6%増と好調に推移した。その要因について同社 代表取締役社長の勝栄二郎氏は、「ネットワークやシステムインテグレーション(SI)の事業において、新規の大型案件を獲得できた」ことを挙げた(写真1)。
同社の財務基盤は盤石だ。それを如実に示しているのが、売上高に占めるストックビジネスの割合の高さである。同社 専務取締役 最高財務責任者(CFO)の渡井昭久氏によると、「当社の事業は月額収入の積み上げがベースで、第3四半期累計ではそれが82.7%になっている」。つまり、8割超がストックビジネスというわけだ。図1がその内容である。
そうした業績もさることながら、ここでは鈴木氏の冒頭の発言に注目したい。会見の質疑応答でWeb3について同氏に聞いたのは、まさしくインターネットを1991年に日本へ持ち込んできた当人が、次世代インターネットについてどう見ているのかを確かめてみたかったからだ。同氏は次のように答えた。
「インターネットはもちろん進化していくだろう。ただ、踏まえておかなければいけないのは、インターネットはネットワークだけでなくコンピューターの進化とも一体化していることだ。コンピューターの進化でこれから最もインパクトがあるのは、量子コンピューターだろう。量子コンピューターが本格的に使えるようになると、全ての処理スピードが一足飛びに速くなる。それがネットワークにも反映されるようになる。そうなってくると、データセンターやエッジコンピューティングなどの在り方も根本的に変わっていくだろう」
「インターネットはコンピューターとネットワークが一体化したもの」というのは、鈴木氏がかねて強調してきた考え方だ。同じ意味で「これからはインターネット上で全てのものが動くようになる」とも主張してきた。そうした考え方から、同氏はこう続けた。
「量子コンピューターの開発はだいぶ進んできたが、本格的に使えるようになるにはもう少しかかるだろう。その間もインターネットの進化に向けて関連する要素技術はグレードアップしていくだろうが、それらを総合して見ると、この先4、5年は、今のインターネットにまだ根本的な変化は起きないのではないか。インターネットの進化に向けた技術のトレンドについては、大局的な観点から今後コアになっていく技術をしっかりと見極めていくことが非常に大事になってくる」
鈴木氏は質問に対して、5分余りにわたって同氏ならではの見解を示した。その全体を通して筆者が最も印象深かったのは、一度も「Web3」という言葉を使わなかったことだ。まだ、受け入れていないように感じた。それは上記の発言内容からも推察できる。そうしたエピソードも合わせて、たいへん興味深いやりとりだった。