業務ソフトの標準的利用が本格化する日本に期待–IFSグループのオウシCOO

今回は「業務ソフトの標準的利用が本格化する日本に期待–IFSグループのオウシCOO」についてご紹介します。

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 スウェーデンのエンタープライズソフトウェア企業のIFSは、日本市場での事業拡大を目的として、投資を増強する方針を表明した。グループ最高執行責任者(COO)のMichael Ouissi氏は、「ビジネスアプリケーションの標準機能をなるべく活用したいと考える日本企業が増えている」と述べる。同社の特色や日本での展開などを聞いた。

 1983年創業の同社は、2023年で設立から50年、日本進出から25年を数える。航空宇宙・防衛、建設、製造、エネルギー、通信、サービスの6業種に特化し、ERPと設備資産管理、フィールドサービス管理、ITサービス管理の4領域の製品をオンプレミス向けソフトウェアおよびSaaSで50カ国の市場に展開する。顧客数は1万社を超え、日本市場では長らくNECとパートナー関係にある。

 Ouissi氏は、「IFSの顧客は、非常に複雑なビジネスプロセスを有しており、その上で彼らの顧客に対して高い価値を提供している。このことをIFSは、『Moment of Service』(サービスの瞬間)と表現している。ISFの4つの領域のソリューションは単一のプラットフォームとして提供し、顧客の複雑なビジネスプロセスに対応して業務の効率化と改善を図る。IFSは顧客と彼らの顧客のための『Moment of Service』を実現することに取り組んでいる」と話す。

 中核となるのが、4領域の製品の機能をSaaSで提供する「IFS Cloud」になる。製品領域は4つだが、Ouissi氏が言うように、単一のプラットフォームとすることで、顧客は必要な機能をベストオブブリードで組み合わせつつ、業務横断でもビジネスプロセスの一貫性を担保できる点がユニークだという。製品機能としてはSaaSもオンプレミス向けソフトウェアも同一で、顧客は稼働環境を柔軟に選べる。Ouissi氏は、特に6業種に特化した長年の取り組みによって、業界あるいは地域の固有要件なども、製品としては標準で対応済みとしている点が強みだとアピールする。

 「例えば、飛行機に乗り、途中の空港で別の便へ問題なく乗り継げたとしよう。当然に感じるが、その裏側には機体が安全に管理・運行され、搭乗者ごとに異なる目的地への荷物がスムーズに手配され、搭乗者が快適に移動できるよう各スタッフがサービスに従事している。複雑で多様な業務オペレーションをIFS Cloudが支えている」(Ouissi氏)

 IFSが日本市場への投資を強化する背景は、抜本的な業務改革に乗り出す日本企業が増えているからになる。

 ここ数年は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を合い言葉に、新たな収益機会の創出や収益構造の改革を目的とする取り組みが先行した。最近はこれらに加え、業務執行を今まで以上に効率化する取り組みが増えている。コロナ禍でリモートワークを強いられ旧来の業務プロセスが機能しなくなったり、深刻な少子化で組織の求める人材を確保できず業務が既に回らなくなったりし始めているからだ。

 このため業務改革においてITを活用する際には、ERPなどに備わる標準機能を使う向きが徐々に強まり出した。自己流よりも効率性や生産性で実績のある業務手法に合わせる方が効果的であるとの気づきや、製品面の進化で幾多のアドオンツールを開発しカスタマイズする必要性が下がったことなどの面もある。

 Ouissi氏は、業務革新を目的にした日本での代表的な導入事例だとして、2022年11月にIFS Cloudの導入を公表したコベルコ建機を挙げる(報道発表)。IFSジャパン 代表取締役社長の大熊裕幸氏によれば、顧客の中にはERPシステムをIFS Cloudへ乗り換えたことで、アドオン開発が9割削減されたケースもあるという。

 ただ、こうした状況を商機に捉えるのは、他のエンタープライズソフトウェア企業も同じで、ISFの競合各社も製品のクラウドサービス化や標準機能の利用促進を盛んに図っている。

 競合への対抗としてOuissi氏は、「新興SaaSベンダーの多くは、われわれの領域の一部にしたリーチできていない」とし、領域を網羅しながら単一のプラットフォームとして活用できる点が競合優位になると強調する。また、伝統的なエンタープライズソフトウェア企業との競争では、「われわれには、顧客の業界に対する深い知識と経験がある」と主張する。標準機能のカバレッジが広がっても、まだまだ追加開発を必要とする部分はあり、「(NECのような)各地のパートナーがわれわれの製品を市場に合わせて最適化していただいている」(Ouissi氏)とし、それらがIFSの製品では標準機能として実装済みであることが優位になるという。

 IFSの2022年の収益は10億ドルとなり、従業員数は5500人を超えたという。日本でのビジネス実績の詳細は明かせないとしたが、大熊氏によれば、数年前より直接販売も開始し、パートナー経由の間接販売の増加と相まって3倍ペースで拡大しているという。Ouissi氏は、今後数年間はIFSジャパンの人員規模を倍増させていくとし、営業のみならずサポート、技術の人員採用を増やしていく。

 またOuissi氏は、「直接販売の広がりもパートナーの存在があってこそで、パートナーがいて全体のビジネスが広がっている。特にシステムインテグレーター(SIer)の皆さんと競争をするつもりは一切なく、決してわれわれがパートナーのビジネスを奪うといった誤解はしていただきたくない」とも述べている。

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