声優の不祥事にAIが代役で活躍–中国で進むAI音声の活用
今回は「声優の不祥事にAIが代役で活躍–中国で進むAI音声の活用」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
中国の著名声優の姜広涛氏が2022年に刑事事件の容疑者となり、国内のアニメ/ゲーム業界に大きな影響を及ぼした。映画「タイタニック」の中国語版で主人公のJack Dawson(演:Leonardo DiCaprio)の吹き替えを担当するなどの実力者だ。
報道によると、姜氏は日本円で億単位の金銭問題を抱えているという。同氏が携わるコンテンツはアニメ、ゲーム、ドラマ、ラジオ、オーディオブック、声劇、テレビ番組、イベント登壇など幅広く、それらの全てが何らかの対策を講じることになり、多くは代役や除名によって対処することになった。ただ、過去の出演作品についてはどう扱われるか分からないが、「もう新作に出ることはないのか」とファンからは悲しみの声が挙がっている。
同氏は、オープンワールドRPG「原神」で知られるmiHoYoのゲーム「未定事件簿」や、バトルロイヤルゲーム「荒野行動」や対戦ゲーム「第五人格」で知られるNetEaseのゲーム「時空中的絵旅人」にも携わっている。
今回の件を受け、両社は自社傘下のAI技術を生かして同氏の音声を再現することを相次いで発表した。両社のAI研究が不測の事態で活用され、技術の披露となったわけだ。また本人の声出しはNGだが、本人の声のようなAIによる吹き替えならOKという前例を作った。
その後、miHoYo傘下のAI開発企業である逆shang AIと、NetEase傘下の網易互娯AI Labが、姜氏の代役AIをそれぞれ実装した。
時空中的絵旅人では、2023年2月に実施のユーザーアンケートで好評を得て、正式に置き換えられていくことになった。未定事件簿でも後日正式な導入が決まった。両社のAI音声を聴き比べるユーザーもいるが、両作品とも高く評価されている。
miHoYoは逆shang AIを2020年に設立している。2019年には深層学習技術を用いて声優の声色を再現する取り組みを始めていたと当時報道されている。声優の音声を知的財産(IP)化し、売買する未来を想像していた。さまざまなコンテンツの規制が入る中国では、不正の心配もなく制御のしやすいAI音声のニーズが高まるだろうと思われていたわけだ。
NetEaseによるAI音声の取り組みも早く、コンピュータービジョン、自然言語処理、音声信号処理、ゲームAIなどの技術を研究開発する網易互娯AI Labが2017年に設立された。2020年には、音声言語処理技術における世界最大規模の国際会議「INTERSPEECH」のテキスト関連の声紋認識部門で2つの賞を受賞し、実力を認められたことになる。ただ、当時の技術は音声吹き替えではなく、主に身元確認に活用されていた。
今回の一件を受けて、網易互娯AI Labは初めてAI声優の演技を披露した。完璧とまではいかないが、AI音声にありがちな不自然さはなく、多くの人に「素晴らしい」と感じさせる出来だった。
miHoYoとNetEaseは、AI時代の到来を見越して研究部署を設置し、自社コンテンツをめぐる不測の事態への備えとなった。中国のネット大手各社はAIの研究に力を入れている。今後も何らかの事件や緊急事態に際して、各社のAIが活躍することになるだろう。