NTTイノベーティブデバイス、事業戦略を発表–光電融合デバイスの普及を目指す

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 光電融合デバイスの開発、製造、販売を手がけるNTTイノベーティブデバイスは9月6日、事業戦略を発表した。通信を皮切りにデータセンターコンピューティングからモバイルへの展開を目指す。

 NTTイノベーティブデバイスは、NTTが推進する次世代通信・情報処理基盤「IOWN」の中核となる光回路と電気回路が融合(光電融合)した小型、高速、低消費電力を特徴とするデバイスの開発、製造、販売を手がける。6月12日にNTTグループで中長距離伝送装置を手がけたNTTエレクトロニクスとNTT研究所の光電融合部門を統合する形でNTT100%出資の新会社として設立。8月1日に商号をNTTイノベーティブデバイスに変更して、本格的に事業を開始した。

 同日に記者会見した代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の塚野英博氏は、世界的なコンピューティング需要の高まりとカーボンニュートラルへの対応において、将来的に光電融合デバイスが非常に大きな役割を果たすとした。

 現在は、生成AIを含むAIの利用拡大や産業界を中心としたデジタルツイン技術などの需要が高まり、これらには極めて高い性能のコンピューティング能力が必須になる。一方で、高性能コンピューティングに膨大な電力エネルギーの消費を伴う。需要と利用が高まるほどに電力消費が増大し、カーボンニュートラルを含む地球環境保全への取り組みが困難になる。

 塚野氏によれば、半導体の集積化や性能向上、低消費電力化の技術開発に限界が見えつつある状況では、高性能コンピューティングとカーボンニュートラルを現実的に両立させることが難しい。この課題の解決には、世界の半導体メーカーが進める半導体製造プロセスの超微細化やパッケージの超高密度実装化と並んで、光電融合技術を導入していくことが鍵になるとする。光電融合デバイスは、既にIOWNの通信システムの中で適用されており、同社はこれを通信領域からデータセンターのコンピューティング環境、さらにはコネクテッドカーからスマートフォンなどのモバイルコンピューティング領域にまで広げることを目指している。

 光電融合デバイスでこれを実現していくには、(1)光導波路の設計、(2)光調芯・検査などの量産、(3)ロジックICとアナログIC、シリコンフォトニクス変調素子および薄膜レーザー素子――の大きく3つの技術的な課題があるとし、これらをクリアしながら光電融合デバイスの小型化、薄型化を進めなければならないという。

 2023年時点では、光回路とデジタル信号処理(DPS)を1つのパッケージ化(Co-PKG)する段階にあり、2025年に実現を目指す第3世代では、Co-PKGにファイバーアレイユニット(FAU)を加えた「光エンジン」、2028年にはレーザー光源を加えた第4世代、2032年には第4世代を超小型化、高性能化、低消費電力化させた「第5世代」の実現というロードマップを計画している。

 事業展開について塚野氏は、現行世代において通信領域での光電融合デバイスの適用を確かなものにしつつ、第3世代からデータセンターのネットワークインフラやサーバーなどのコンピューティング領域への展開、第4世代以降にPCやスマートフォンといった数十億、数百億台の規模が見込まれるコンシューマー領域への拡大を構想しているとし、業績では早期に数千億円規模の売り上げを達成したいと説明した。

 光電融合技術の実用化に向けては、同社以外にも世界各国の技術スタートアップやITメーカーなどが取り組みを進めている。代表取締役副社長 最高技術責任者(CTO)の富澤将人氏は、「光と電気の処理を個別に最適化して統合し、あらゆる人々に利用されコストも最適なものにしなければいけない。競合の多くは、光信号の基礎的な処理技術の段階にある一方、われわれは通信で既に実用しているなど統合の面でも一日の長があると考えている」とした。

 塚野氏は、光電融合デバイスの適用拡大に向けたパートナー戦略について、従来のセットメーカーにとどまらず半導体メーカーや、さらには光電融合デバイスの用途に応じたアプリケーション、ソリューションのベンダーとも協業が必要になるだろうとした。特に米IBMと共同で2ナノメートル(nm)ノードの半導体技術の国内量産を目指すRapidusとは、「大きな期待を寄せている。例えば、現在のDPSの最先端ロジックは5nmだが、今後さらに微細化が進み、2nmのようなDSPが必要になる」などとコメントした。

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