NECとアサヒ飲料、AIによる新商品の需要予測を実証–商品の欠品や余剰在庫を防止
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NECは、予測精度マネジメントによる収益拡大戦略の高度化に関する実証実験をアサヒ飲料と共に実施したと発表した。実証実験は6月から10月までの5カ月間で、予測精度マネジメントはNECの独自AI技術を活用したという。
この実証を通じ、NECはアサヒ飲料における需要変動の可能性の想定やそれを早期に察知する体制構築を目指すという。また、需要変動のアラートを受けてサプライチェーン管理(SCM)やファイナンス部門における事前のリスクヘッジ策の検討を促していくとしている。さらに営業やマーケティング部門に対し、納得感のある因果関係情報を基にした需要拡大アクションの検討材料の提供を目指す。
実証の結果、新商品の需要予測に対する類似性判断で、需要予測専門家であるデマンドプランナーの知見や暗黙知で導き出した予測と比較し、AIによる予測精度マネジメントでは7割程度を再現できたという。また判断材料やノウハウなど、属人的でデータ化できていない要素の可視化が実現した。さらに同マネジメントを活用することにより売上機会損失、棚卸資産、在庫保管費、物流費削減など机上評価で年間3億円を削減できることが分かった。
この結果を受け、NECは12月からアサヒ飲料と連携を強化し、これまで人手が担っていた業務をAIにより効率化を図り、収益拡大に向けた高付加価値業務に注力する。その上で商品の欠品や余剰在庫を防ぎ、消費者に安心して商品を届けられるプロセスを確立していく。
実証では、需要予測のカギとなる「類似性判断(ベンチマーク商品の選定)」「類似品との差異分析による需要予測」、さらに「需要予測オペレーション管理のためのしくみ構想」を実施した。
「類似性判断」では、過去に発売された新商品とベンチマーク商品の組み合わせについて、商品マスタや過去実績、マーケティング施策情報などを用いて分析。その結果、類似度ランキングトップ10では過去、人によって選択された商品の7割程度を再現できた。またデマンドプランナーが考慮しているもののデータ化できていない要素を明確化できた。これによりデータ収集や整理の負荷がなく、業務知見の少ないデマンドプランナーでも一定レベルの類似ベンチマーク商品の選択が可能となる。
「類似品との差異分析による需要予測」では、過去発売品の実績、マーケティング施策、天候情報などを用いて、新商品ごとに需要の因果関係を推定し、AIが販売開始から一定期間の需要を予測した。その結果を現行オペレーションでの予測精度と比較したところ、条件を見極めることで同等の精度を実現できたという。商品別では、発売5週間前時点で3〜4割、発売翌日時点では4割の商品で、AI予測が現行オペレーションの予測精度を上回った。需要の因果関係を可視化することで、さらなる需要創出に向けた戦略立案の高度化や各種ステークホルダーとのコミュニケーションの円滑化が可能となる。
「需要予測オペレーション管理のためのしくみ構想」では、高度な需要予測の標準化に向けた管理指標の定義や業務プロセスの設計を行い、未来の業務プロセスを整理し、ダッシュボードイメージを構築した。さらに出荷量、購買データなどを基に作成する需要変動アラートのシミュレーションを行った。このシミュレーションにより早期に市場の変化を捉えて需要予測を修正できる。また必要に応じて需要予測ロジックを見直すことで、売上管理や在庫・生産管理、調達・物流計画などへ反映することが可能になるとしている。
現在、食品や飲料メーカーにおける商品の需要予測の多くは、デマンドプランナーの属人的な知見やノウハウに基づいて行われている。しかし、既存品に比べると新商品の需要予測は誤差率が高く、欠品や過剰在庫の発生可能性が高くなるという。また、需要予測結果に対する根拠の透明性、再現性の低さ、さらには発売前にトレンドの変化や季節性を考慮した中長期的な需要予測を行いづらいことも課題となっていた。