DX推進体制に見る進捗状況–DX組織形態が進捗と成果に及ぼす影響
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多くの企業がDXに取り組んでいますが、その進捗(しんちょく)や成果には差が出てきています。DXを推進するための組織体制には幾つかのパターンがありますが、組織形態がDXの進捗と成果を左右することがあるのでしょうか。2023年8月に実施した『企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進実態調査』から、DX推進体制に見るDXの進捗状況および対象範囲の広がりの度合いを紹介します。
既に多くの企業がDXの取り組みを開始しており、何らかの組織体制を構築しています。昨今では、専任のDX推進部門を設置する企業が増えていますが、その形態はさまざまです。まずは、企業はどのような体制でDXを推進しているのかについて、ITRが2023年8月に実施した『企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進実態調査』を基に現状を確認しておきましょう。
この調査は、従業員数100人以上の企業のIT戦略決定者、IT企画立案者、IT実務者に該当する課長職以上を対象とし、562件の回答を得ています。推進体制の形態について見ると、現時点では「IT部門を包摂したDX推進部門がある」が32%を占め最多でした。次いで、「IT部門と独立したDX推進部門がある」(21%)、「IT部門のなかにDX推進チームがある」(19%)の順となりました(図1)。
次に、推進体制ごとにDXの進捗度合いを見てみましょう。DXの進捗度合いは、別の設問において、「国内でトップクラス」「同業界では上位」「同業界他社と同等」「同業界で下位」「わからない」の中から自己申告で回答を得ています。
DXの進捗度合いを推進体制ごとに見ると、「国内でトップクラス」と回答した企業は、IT部門を包摂したDX推進部門がある企業では29%と最も高い割合となりました(図2)。一方、IT部門がDXを推進している企業や各業務部門・部署でそれぞれDXを推進している企業では、「国内でトップクラス」や「同業界では上位」と回答した企業が非常に少なく、従来のIT部門や業務部門だけではDXはうまく進まず、何らかの専門組織またはチームが必要であることを物語っているといえます。
続いて、DX担当者の専任状況と、DXの進捗および実施範囲との関係を見てみましょう。DXを専任で担当している人数が多い企業の方が、そうでない企業に比べ、DXが進んでいる企業の割合が高い傾向が見られます(図3上)。専任の担当者がいない企業では、国内でトップクラスや同業界で上位の進捗を達成している企業は極端に少なく、兼務のメンバーだけではDXの推進は難しいことを示唆しているといえます。
また、DXの実施範囲についても、専任担当者が多い企業ほど実施範囲が広い傾向が見られました(図3下)。10人以上の専任担当者を擁している企業の3分の2が、DXを全社レベルで展開しているとしています。全社レベルで本格的にDXを展開する場合は、相応の専任担当者を配備することが望ましいことを示唆しています。
最後に、DXの推進に対するIT部門の関与度合いと、実施状況の関係についても確認しておきましょう。DXの実施状況については、別の設問において、「本格的に実施している」「一部で実施している」「ごく一部で実施している」の中から自己申告で回答を得ています。「IT部門が中心となってDXを推進している」または「DX推進部門とIT部門が一体となってDXを推進している」と回答した企業において、本格的にDXを実施している企業の割合が高い傾向が見られました(図4)。一方、IT部門が推進にほとんど関わっていないとした企業では、本格的にDXを実施している企業は非常に少ない結果となりました。
DXの推進においてはIT部門の関与は不可欠といえます。しかし、IT部門の力だけではうまく進まず、専任のDX推進部門や業務部門との連携・協力が必要となることが浮き彫りとなりました。組織は生き物であると言われるように、ビジネス環境の変化や企業のDXの取り組みの成熟度などに応じて、役割や形態を変容させていくことが求められるということです。