DX推進に向けたデータ活用で企業が解決するべき課題

今回は「DX推進に向けたデータ活用で企業が解決するべき課題」についてご紹介します。

関連ワード (ビッグデータ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 これからのビジネスで競合に打ち勝っていく上で、重要になっているのがデータ活用である。ただ現状を見る限り、データを活用するための環境が十分に整備されている日本の大企業は少ない。そこでデータ活用の観点から、現状の問題点やその解決策を解説していきたい。

 企業経営を取り巻く環境は新型コロナウイルスによって一変したが、そもそも現在のビジネス環境自体が「不確実な時代」といわれており、経営者は不測の事態に備えた俊敏性の高い経営「アジャイルな経営」が求められる。しかし、IMDによる最新のデジタル競争力ランキングの“企業のアジリティー(俊敏性)”と“ビッグデータやアナリティクスの活用”において、なんと日本は63カ国中最下位であり、これは先進国のみらならず、ベネズエラやウクライナより低い事を意味する。コロナ禍後の「新常態」において、データをスピード感を持って活用できるか否かが日本企業の死活問題になる。

 新興企業が効果的にデータを用いることで市場のルールを根底から覆し、それによって倒産まで追い込まれることになった企業も枚挙にいとまがない。十分にデータを活用できなければ、ビジネスの変化に取り残され、市場からの退場を余儀なくされることも十分にあり得る。

 しかし、このようにビジネスにおいてデータ活用の重要性が高まる一方、特に個人情報の利用に対し、世の中の抵抗感が高まっていることにも目を向けなければならない。ごく少数の企業が消費者のインターネット上での活動履歴、あるいはリアルな世界での行動履歴を取得・利用することに対して、不安感や嫌悪感を抱く人は決して少なくないからだ。特に欧州ではこの傾向が強く、それがGDPR(一般データ保護規則)という法規制に結び付いている。

 さらに、膨大なデータを効率的に処理することができる技術基盤が整ったことから、独裁色、統制色が強い国家においては、極端な監視社会の実現が絵空事ではなくなりつつある。こうした行き過ぎたデータ活用も、不安感や嫌悪感を一段と高める要因だろう。今後は利便性とプライバシーのバランスをどう取っていくのか、産学官民による議論の醸成が待たれる。

 このように課題は残っているが、いずれにしても多くの日本企業にとってデータ活用が死活問題であることは間違いない。このデータ活用における要諦は、リアルタイムに精度の高いデータを用意すること、そしてデータ流出のリスクを最小化することが必要条件となる。十分条件としては、試行錯誤を繰り返しつつ、データの中から意思決定および行動につながる示唆を抽出することである。

 ただ、データ活用のためのこれらの条件をクリアできている大企業は決して多くはないのが実情だ。IT環境が複雑化していることに加え、システム間でデータ構造に不整合が生じていることが大きな理由だ。

 データを活用することができない、具体的な原因を詳しく見ていこう。まず挙げられるのは、全体最適ではなく、部分最適でシステムが構築されていることの弊害である。そのため、データがあったとしても、部署ごとにデータ形式やコード体系がバラバラとなり、全体的な視点でデータを捉えることができない。また各システムに散在するデータをバッチで統合しているため、リアルタイム性や整合性の欠如といった問題も発生している。

 入力内容のばらつきやゆらぎも無視できない課題だろう。部門、あるいは個人によって、入力されるデータの形式などが異なるというものだ。分かりやすい例としては生年月日がある。ある部署では顧客の生年月日を西暦で入力しているが、別の部署では和暦で入力しており、西暦と和暦が混在しているといった状況である。

 顧客などを一意に識別するためのプライマリーキーが場当たり的に決められることが多いことも問題だ。ある通信事業者では、顧客の電話番号をプライマリーキーとしていたが、1人で複数の電話番号を所有しているケースがあるほか、その通信事業者の電話番号は所持していないが、それ以外のサービスは利用しているといった顧客もいた。このため、電話番号だけでは顧客を特定できないことになり、後に大きな問題に発展している。

 データ活用のための基盤として、データウェアハウスやデータレイクを構築するケースもある。ただ、そのためのシステムを新たに構築しなければならない上、システム間のデータ連携も複雑化するため、リアルタイム性やシステム間の整合性欠如といった問題は解決されないまま残ることになる。

 データを積極的に活用するのであれば、データ流出のリスクを最小化することも重要だが、この点においても複雑なIT環境が足かせとなっている。

 入力されたデータは、それぞれのシステムで利用するため複数箇所にコピーして保存することになる。場合によっては、関係会社のシステムにコピーされるといったこともあるだろう。そこで意識しなければならないのは、攻撃者はセキュリティの最も脆弱な部分を狙って攻撃を行うという事実である。たとえ本社のセキュリティが強固であっても、コピーしたデータを保存している関連会社の対策が不十分であれば、そこからデータが漏えいするリスクが残るというわけだ。

 データから意思決定および行動につながる示唆を抽出するためには、試行錯誤を繰り返すことが重要となる。ただ、その作業を外部のデータサイエンティストに依存すると、膨大なコスト支出が発生するほか、分析にも多大な時間がかかってしまい、多くの企業において、データを溜めてもデータの活用が進まない最後の足かせになってしまう。


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