DXジャーニーマップとは何か–変革の船出に当たって携えるべき海図
今回は「DXジャーニーマップとは何か–変革の船出に当たって携えるべき海図」についてご紹介します。
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多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を含む企業変革に取り組んでいますが、その道のりは平たんではありません。トリップでもトラベルでもなく、まさにジャーニーと呼ぶにふさわしいと言えます。今回は、DXの典型的な推進プロセスと、立ちはだかる障壁への対応策を図示した「DXジャーニーマップ」を紹介します。
多くの企業がDXの重要性を認識し、何らかの取り組みを開始していますが、その道のりは決して平たんではなく、さまざまな困難が立ちはだかります。まずは、国内企業におけるDXへの取り組み状況を確認しておきましょう。
ITRが実施した「国内IT投資動向調査2022」によると、DXを重要だと考える企業は全体の85%に上り、前年の調査結果を上回り、過去最高の水準となりました。とりわけ「全社レベルで取り組むべき」とする積極派の割合が前年から大きく伸長し、DXが経営と直結する課題であるとの認識が定着していることが見て取れます(図1左)。コロナ禍に伴うビジネス環境の変化に加えて、デジタル変革関連法の成立やデジタル庁の新設といった政府によるDX推進の動きが本格化したことが、企業の関心を喚起しているとみられます。
一方で、同調査の16項目にわたるDXテーマの取り組み状況に関する設問では、「進行中・完了しており成果もでている」との回答は、9~19%の範囲にとどまっています(図1右)。DXの重要性は多くの企業で認識され、取り組みは活発化しているものの、具体的な施策においてはまだ成果が出ていない状況が浮き彫りとなったと言えます。
調査結果からも明らかとなったように、多くの企業がDXに取り組んでいますが、その推進が順風満帆と言える企業は必ずしも多くありません。DXが遅々として進まない、活動が社内に広がっていかない、定着せずに一過性の取組みにとどまってしまうという事態が散見されます。DXを主体的に推進するための専門組織を設置する企業が増えていますが、実際のDX施策の実行対象となる事業部門などの参加や協力が得られず、DX推進組織が孤軍奮闘する姿も垣間見られます。また、一度DX施策によって業務やビジネスを変革したとしても、長続きせず、元の状態に戻ってしまうという声も聞かれます。
DXの推進には、「変化に対する人の抵抗」「経営層・中間層の不理解」「既存の制度・権限」「人材とスキルの不足」「従来の組織管理と意思決定プロセス」「旧来型の組織カルチャー」「硬直化した情報システム」など、乗り越えなければならない数多くの壁が、その行く手に立ちはだかっていると言えます(図2)。
企業はこうした障壁を乗り越えながらDXを前進させていかなければなりませんが、その道のりは険しく、定石と言えるアプローチや方法論があるわけではありません。行き先も経路もそれぞれの企業が定め、道なき道を進んでいかなければならない。トリップでもトラベルでもなく、まさにジャーニーと呼ぶにふさわしいと言えます。