「IBM PC」を起点に考える「IT産業の変遷とこれから」

今回は「「IBM PC」を起点に考える「IT産業の変遷とこれから」」についてご紹介します。

関連ワード (松岡功の一言もの申す、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 初代「IBM PC」が1981年8月12日に発表されてから41年。同じ年にPC雑誌の編集に携わり始めた筆者にとっても非常に印象深い製品だ。そこで今回は、IBM PCを起点に「IT産業の変遷とこれから」について筆者なりの視点で考察してみたい。

 「これまでベンチャービジネスを中心に形成されてきたPC市場だが、コンピュータメーカー最大手のIBMの参入は、パーソナルコンピューティングの世界がOA(オフィスオートメーション)およびHA(ホームオートメーション)へと大きく広がっていくことを強く印象付ける」

 この一文は筆者が当時、新人編集者として携わり始めたPC雑誌(「月刊マイコン」1981年10月号)で、IBMが発表した初代IBM PC(正式名称は「IBM Personal Computer」)について紹介した記事の最後に自分の印象を記したものである。とりわけ、これからはPCも業務でどんどん使われるようになると確信し、筆者自身のその後のキャリアにも大きな影響を及ぼすことになった出来事だった(写真1)。

 自分事から始めて恐縮ながら、今回はこのIBM PCを起点に、その後のIT産業の変遷とこれからの行方について、筆者なりの視点で3つのキーワードを挙げて考察してみたい。

 1つ目は、「ダウンサイジング」だ。IBM PC以降、業務をこなせるPCが続々と登場してきたことで、従来は大型コンピューター(以下、大型機)を中心とした企業の情報システムがPCを中心とした形態に変わっていった。この変化は何を意味しているかというと、これまでは大半の処理を大型機が行い、これにつながる端末は大型機とやりとりしたデータを入出力する存在でしかなかった。そんな処理形態が、業務に対応したPCの登場によってPC側で多くの処理をこなせるように変わっていったのである。

 この変化に伴って、PCは「クライアント」、大型機は「サーバー」と呼ばれるようになり、従来の大型機を中心としたシステムとは処理形態が逆の考え方となる「クライアント/サーバー型システム」(以下、C/Sシステム)が普及するようになった。今では話題に上ることも少なくなったC/Sシステムだが、現在も多くの企業で利用されている仕組みである。

 キーワードとしては直接の現象であるダウンサイジングを挙げたが、IT産業に及ぼした影響という観点では、ダウンサイジングによって生まれたC/Sシステムが企業の情報システムの在りようを大きく変えたという印象が強い。

 2つ目は、「集中と分散」だ。これはコンピューティング形態の在りようを指す。1つ目の話に当てはめると、従来の大型機を中心としたシステムは「集中」形態なのに対し、C/SシステムはPCが中心となった「分散」形態である。つまり、IBM PCが起点となって、コンピューティング形態の在りようにおいても一大変化が起きたのである。

 集中と分散という視点は、今述べたように1つ目の話とオーバーラップするところがあるが、2つ目にこれを挙げたのは、この視点でこれからの行方を探ってみようと考えたからだ。コンピューティング形態は、かねて「集中と分散を繰り返す」と言われてきた。IT産業にとってC/Sシステムの後に起きた大きなパラダイムシフトとして挙げられるのは、インターネット、そしてクラウドコンピューティングである。インターネットはもちろん多大なインパクトをもたらしているが、ここではコンピューティングという観点からインターネットが生み出したクラウドに焦点を当てると、これ自体はクラウドで多くの処理を行う集中形態と見ることができる。

 だとすれば、クラウドの次には再び分散の時代がやってくるのか。その意味では最近「ウェブ3.0」と呼ぶ次世代技術が話題になっているが、まだまだ未知数のところが多い。ただ、次は分散の方向という意識を持っておくことは、IT産業の行方を探る上で大事な気がする。

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