APIの中立性を堅持–「One Salesforce」を推進するMuleSoft

今回は「APIの中立性を堅持–「One Salesforce」を推進するMuleSoft」についてご紹介します。

関連ワード (トップインタビュー、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Saleforce.comでAPIソリューションを手掛けるMuleSoftは米国時間6月29日、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)を中核とするSalesforceプラットフォームおよびSlackやStripe、TwilioなどSalesforceファミリーとの統合を推進する新たな戦略を発表した。

 これは、Salesforceが推進する「One Salesforce」に基づくものだが、他方でMuleSoftが長らく掲げる「APIの中立性」という姿勢に変化はあるのだろうか。来日した最高経営責任者(CEO)のBrent Hayward氏に、統合戦略や同社の考えを尋ねた。

 新たに発表した統合戦略では、MuleSoftが2018年に買収したRPAベンダーのServicetraceをベースとする「MuleSoft RPA」を8月から一般提供(日本は未定)と、Salesforceファミリーのソリューションと密に連携するためのローコードプラットフォーム「MuleSoft Composer」(海外では提供済み。日本は2023年)を中核に据える。いずれもSalesforceの自動化機能「Salesforce Flow」に完全統合されているとし、Salesforceファミリーの各種製品やサービスが連携するハブとして位置付けられる。

 Salesforceは、4月に開催した開発者会議「TrailblazerDX」で、One Salesforceの具体像を示すべく、Salesforceファミリーとの連携に関する多数の発表を行った。その狙いは、Salesforceユーザーにおける生産性や業務効率、顧客体験や従業員体験のさらなる向上にある。Salesforceプラットフォームに蓄積されるデータ、Salesforceファミリーのアプリケーションとサービス、それに自動化の技術を組み合わせることで、ユーザーは業務プロセスを高度化し、デジタルのワークフローを構築、実践していけるという。

 システムやデータをつなぐAPIを手がけるMuleSoftが、One Salesforceの中心的な役割を果たすことになる。Hayward氏は、「Salesforceファミリーのユーザーにおけるビジネスを全方位でより良いものに高めていくことが求められている。優れた体験を提供するには、さまざまなデータやシステムをつなぎ合わせ、自動化のテクノロジーによって、その価値を最大限に引き出せるようにしなければならない」と述べる。

 MuleSoftは、レガシーシステムやSaaSアプリケーションなどを連携させる「Anypoint Platform」を展開する。One Salesforceにおいては、Anypoint Platformがコネクターとなって、ユーザーのシステムやデータとSalesforceファミリーのアプリケーションが接続され、MuleSoft Composerで設計されたロジックやシナリオなどに基づいて、MuleSoft RPAがSalesforceファミリーのアプリケーションでタスクやプロセスを自動的に実行していく――そのようなシナリオが考えられている。

 今回の来日目的についてHayward氏は、同社のビジネスにとって日本が急成長している市場でありながら、コロナ禍で長らく顧客と直接のコミュニケーションができなかったためだと話す。ただ、それだけではなく、RPA市場では近年に日本企業の多彩なユースケースや導入実績が話題になっていることから、同社がRPAを展開していく上でのヒントを得る狙いもあったようだ。

 一方で、MuleSoftはSalesforceファミリーとはいえ、APIプラットフォーマーとしてベンダー中立な姿勢も求められてきた。One Salesforceによって、そうした立場の変化が懸念されるが、Hayward氏はきっぱりと否定した。

 「歴史を振り返ると、過去にも大手IT各社が連携・統合ソリューションの優れた専業ベンダーを幾つも買収してきたが、いずれも自分たちの中に囲い込み、結果的に顧客を失った。買収する側には自社のソリューションを統合できる点が価値になるのだろうが、顧客の側に立てば、今までのシステム間の接続性が失われる。それまでの投資の価値が全てゼロになってしまう。そして、全く新しいシステムへの入れ替えを強いられることになる」

 「MuleSoftは、『ユニバーサルAPIマネージメント』という考えに従って、ユーザーが必要とするAPIの優れた接続性を長らく提供しており、2018年にSalesforceファミリーとなってから今でもそれは変わっていない。Salesforceが決定的に異なるのは、Marc(CEOのMarc Benioff氏)が創業時から一貫してオープンで中立な姿勢を徹底している点にあることだ」

 Hayward氏は、今回の来日を通じて日本の顧客から聞いた、もはやレガシーシステムの刷新やモダンなシステムの導入などに5~10年を費やすことなど不可能だとする声が強く印象に残ったという。

 「MuleSoftの役割は、古いシステムの世界と新しいシステムの世界をつなぐ“部品”を提供すること。ユーザーには、そのような“部品”を繰り返し活用してもらうことで、ユーザーにとって効率的で素晴らしい生産性を手にしていただきたい」

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