ICT集積地アイルランドにおけるIoT事情–前編
今回は「ICT集積地アイルランドにおけるIoT事情–前編」についてご紹介します。
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経済協力開発機構(OECD)によると、アイルランドは世界最大の情報通信技術(ICT)サービスの輸出国とされ、多くのグルーバルIT大手が拠点を構えています。今回は、センサーやソフトウェアなどが組み込まれた建物、自動車、家電製品、電子機器といったさまざまな「モノ」が、インターネットを通じて他の機器やシステムと連動し、データを交換するIoT(Internet of Things)について、特に製品やサービスを手掛ける企業がデータを収集、接続、変換するために必要な環境、人材などのアイルランドにおけるエコシステムを中心にお話します。
われわれアイルランド政府産業開発庁(IDA)は、IoTを「Collect」「Connect」「Transform」の3つのカテゴリーに分類しています。
これは、データを収集するIoT製品やサービスを指し、半導体、アクチュエーター、マイクロエレクトロニクスなど幅広い分野にわたります。アイルランドは、特に半導体とマイクロエレクトロニクスの分野で長く海外からの直接投資の獲得に成功しており、開発された製品は、その品質と革新性で高い評価を得ています。
例えば、Intelの小型で消費電力が低いIoTチップ「Intel Quark」は、アイルランドで設計・開発されました。Analog Devicesは、毎年80種類の新製品を設計し、世界中に出荷しています。独自のセンサー技術でフードロス問題の解決を目指すスタートアップ企業のSenoptica Technologiesもアイルランドに拠点を置き、最新の食品業界向けパッケージであるマップ包装専用の酸素センサーを開発、生産ラインを流れる出荷前の食品をセンサーで監視し、食品の安全な流通をテクノロジーでサポートしています。
また、アイルランドには、統合ICTハードウェアおよびシステムの欧州主要研究センターであるチンダル国立研究所があり、スマートセンサーを含む多くの主要研究分野で世界をリードしています。
データを収集したら、データセンターやデータベースに接続して、保管(保存)しなければなりません。アイルランドは世界有数のブロードバンド速度を誇る国ですが、他国と比較して安価で通信インフラのサービスを提供しています。現在Meta(旧Facebook)、Amazon、Google、MicrosoftなどのグローバルIT大手のデータセンターが集まる世界有数の拠点となっています。アイルランドでは、電波スペクトルのテストやトライアルアクセスを行う環境が整っており、例えば、VodafoneはM2M(Machine to Machine)テクノロジーを用い、飛行機の運航からエネルギーの送電まで、さまざまな分野で最新のコネクテッドソリューションを開発し、運用しています。また、2022年5月には、Ericssonがアスローン(アイルランド中部の街)の研究開発センターで新たに250人を雇用すると発表しました。これらの人材は、グローバルな5Gポートフォリオの統合、自動化、強化を行う革新的なクラウドネイティブプロダクトの開発に携わる予定です。
データを収集し、保管(保存)した後は、それを分析しなければなりません。データを分析し、そこに価値を見出すことができれば、さまざまな産業の企業にとって競争上の優位性をもたらすことになります。アイルランドには、AON、SAS Institute、SAP、Accentureなどが設立したデータ分析センターがあります。2011年には、Accenture Analytics Center(AAIC)が予測分析の実証、研究開発、提供などの業務を開始しました。また、欧州最大規模の公的資金によって開設されたデータ分析研究センターである「Insight」もあります。