DX推進を円滑化するための制度と権限の見直し–社内の古い仕組みを一掃する
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デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための環境整備の中で、最も手強いのが旧来の制度や権限の壁です。企業にはさまざまな制度や権限規定があります。これらは、企業を適正に統治し、従来の事業を円滑に推進するために作られてきたものですが、DXの推進においては必ずしも有効と言えず、見直しが必要です。
制度や権限は、DXの推進を妨げる最も強力な壁といえます。以前に記事で紹介したDXに向けた環境整備の成熟度の調査結果においても、5つの分野の中で制度と権限は最も低い「何らかの取り組みは開始されているが場当たり的」に該当するレベル1にとどまっています(図1)。
既存企業がDXのような新規の取り組みや変革を推進する際には、社内の慣行や制度を一部打破したり、権限の行使について特別な対応が求められたりする場合があります。従来の制度や権限規定に忠実に従っていると、事業化のスピードが阻害されたり、外部の柔軟な活用が進まなかったりするためです。特に、国内の伝統的な大企業は、高度経済成長の時代に大量生産、大量消費を前提として成長してきた歴史と成功体験があり、多くの制度や権限はその時代に形成され、脈々と受け継がれてきたものです。しかし、それらの多くはデジタルの時代には適合せず、足かせとなることも珍しくありません。
「DXを推進したいが、従来の制度に従っていると手続きが多く、なかなか進まない」「DXを推進せよと言われるが、それを促進したり支援したりする制度がない」といった声が聞かれます。このように、変革の重要性を認識した個人やDX推進組織が活動を推進しようとした時に、社内制度の壁に阻まれることがあります。一定以上の規模の組織を運営する上で制度は必要なものですが、企業が大きく変わろうとしているのに、制度が変えられない硬直化した状況は、本末転倒といわざるを得ません。
DX推進に向けた制度の変革には、大きく2つの方向性があります(図2)。
1つは、DXを推進しやすくする制度を新しく導入することです。人材やアイデアを社内から広く集める社内公募制度や提案制度などが有効な場合もあります。また、人工知能(AI)などの先進技術の専門家を採用しやすくしたり、社内の専門的人材が流出したりしないようにエキスパート職を処遇する制度や、挑戦する人材のモチベーションを向上させるための報奨制度など人事的な制度を新設する例も見られます。
もう1つはDX 推進を阻害する恐れのある社内規定や制度の一部を廃止したり、緩和したりする方向性です。特に大企業の場合、やみくもに新制度を導入するより、既存の制度を緩和する方向で見直すことを優先すべきです。
DXに向けた活動を活発化するためには、失敗を恐れずに挑戦できるよう人事評価制度や、個人の業績および目標管理の考え方を見直すことが有効な場合もあります。
外部の研究機関やベンチャー企業と連携しやすくするために、取引規定や購買規定を見直すことが必要な場合もあるでしょう。また、副業や兼業、在宅勤務を容認する働き方に関する規則など、緩和することが有効な制度が多数あります。