ドコモや慶大ら、触覚を共有する技術「FEEL TECH」開発–医療や伝統工芸への活用期待
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NTTドコモ(ドコモ)、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の「Embodied Media Project」(慶大)、名古屋工業大学大学院工学研究科の「Haptics Lab」(名工大)は1月25日、ドコモが2022年1月に開発した、人間の感覚をネットワークで拡張可能にする基盤「人間拡張基盤」において、物に触れた時の触覚を相手の感じ方に合わせて共有する技術「FEEL TECH」を新たに開発したと発表した。相手の触覚に対する「感度特性」を踏まえて触覚を共有する基盤技術の開発は世界初だという。
同技術は、触覚を把握する機器「センシングデバイス」、再現する駆動機器「アクチュエーションデバイス」、触覚の感度に対する個人差を加味して共有する人間拡張基盤で構成されている。
触覚は、圧力を加えることで電圧を発生させる圧電素子などのセンシングデバイスで物を触った時の振動を計測し、振動子(磁気や電気などを加えると振動するデバイス)などのアクチュエーションデバイスを用いて振動を再現する。アクチュエーションデバイスの振動で再現する触覚は、視覚となる映像と合わせた形で共有される。この振動と映像は同期させる必要があるため、第6世代移動通信システム(6G)の技術の一つ「超低遅延化」が必要となる。
人間拡張基盤は、共有相手の触覚に対する感度特性を事前に取得し、取得した感度特性を踏まえた振動を提示することで触覚共有を行う。個人の触覚を記録しておき、時間を超えて相手に共有することも可能だ。同基盤により、任意の相手やデバイス、数人対数人での触覚共有、時間を超えた触覚共有が可能となり、例えば職人にしか認識できないような触覚の違いを素人でも認識することや、昔触った感覚をリアルな形で思い出すことが期待される。
同技術による触覚共有の実現により、映像や音、文字や言葉による表現だけでは伝えきれなかった感覚を相手に共有することが可能となるため、医療や伝統工芸などの感覚を重視する技術への活用が見込まれる。また、ECサイトで洋服などの商品の手触りまで伝えられるようになるなど、三次元(3D)や拡張現実(AR)だけでは味わえない、より充実した購買体験が可能になるという。
人間拡張基盤では、2022年1月に開発した相手との動作共有と、今回開発した触覚共有の連携が可能であり、パートナー企業のさまざまなデバイスとの相互接続もできるため、今後はセンシングデバイスやアクチュエーションデバイスに関する技術を持つ企業との連携を進め、付加価値の向上に取り組むとしている。
なお、同技術では慶大が触覚アクチュエーションデバイスの開発と触覚共有コンテンツの制作、名工大は触覚センシングデバイスと感覚特性の個人差に対応するアルゴリズムの開発、ドコモがこれらを統合し、人間拡張基盤による触覚共有技術の開発を担当している。
ドコモは人間拡張として目指している「身体のユビキタス化」「スキルの共有」「感情の伝達」「五感の共有」「テレパシー・テレキネシス」のうち、既に人間拡張基盤で身体のユビキタス化とスキルの共有を実現しており、今回「五感の共有」に向けて、人間の五感の一つである触覚の共有を可能にした。今後は、感情の伝達やその他の五感の共有に拡張することで、多様性の享受やハラスメントなどの社会的課題の解決にも貢献し、一人一人が輝き、寄り添いながら、あらゆる可能性が広がる社会「Wellbeing Society」を目指すとしている。
同技術は、2月2日からオンラインで開催される「docomo Open House’23」、2月27日からスペインで開催される「MWC Barcelona 2023」で紹介される。