NEC、イノベーション共創の新拠点着工–R&Dから事業化まで一気通貫で実現

今回は「NEC、イノベーション共創の新拠点着工–R&Dから事業化まで一気通貫で実現」についてご紹介します。

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 NECは6月2日、2022年11月に発表した同社玉川事業所(神奈川県川崎市)での「NECイノベーション新棟」(仮称、以下新棟)の建設に着工した。研究開発から事業創出まで関係者がリアルに集まり一気通貫で実現していく成長のための戦略拠点と位置づける。

 新棟は、同社がグローバルテクノロジー企業として、企業、スタートアップ、大学、研究機関、投資家などあらゆるステークホルダー(利害関係者)と共同でオープンイノベーションに取り組み、最先端技術を駆使した新規事業の創出や社会実装までを具現化する場所になるという。

 この日、建設予定地で行われた起工式には、取締役 コーポレートEVP 兼 CTO(最高技術責任者) グローバルイノベーションビジネスユニット長の西原基夫氏のほか、NECグループや新棟建設を担う工事関係者らが多数出席した。あいにくの荒天だったが、「雨降って地固まる」の格言にあやかり、出席者は一様に工事の安全な遂行と新棟の成功を祈念した。

 起工式後の新棟説明会で西原氏は、「NECが進めるスマートワークの場であり、さまざまなDXに対応し、イノベーションを促進する場所になる。世界中の優秀な人材が集まり、NECに閉じないオープンイノベーションを促進することで、テクノロジーの実証を通じた未来の可能性を提示し、新たなビジネスの創出と社会実装までにつなげていく」とコンセプトを紹介した。

 新棟では、NECの研究や技術、事業開発、営業などの担当チーム、外部から大学などの教育機関や研究機関、スタートアップ、ベンチャーキャピタルなどが一堂に会してイノベーションに共同で取り組む。また、NECが米国シリコンバレーなど世界7カ所に展開しているイノベーション拠点とも接続。リアルとバーチャルのシームレスな共創を可能にするという。

 説明会で西原氏は、特に新棟でのオープンイノベーションが生み出す成果を新規事業と社会実装にまで確実につなげていくという点を強調した。同社は、2018年にシリコンバレーで事業創出に特化した「NEC X」を設立し、NEC Xで事業化されたスタートアップが成長を開始している。「NEC Xの取り組みと実績は、『両利きの経営』で知られるCharles O’Reilly先生にも注目いただいている」(西原氏)

 また、教育・研究機関との取り組みでは、慶応義塾大学との「知の創出」や大阪大学との戦略的大型提携をはじめ幅広い共創活動を展開している。事業創出では、AIでドローンの分散運行管理システムを手がけるInter Exchangeと、AIを活用した生産物流領域のシミュレーションを提供するBitQuarkの2社をカーブアウトさせ、「この実績により他社から数多くのコンサルティング要請をいただいている」(西原氏)とのこと。これまでに34件の支援を行い、年間平均成長率は29.2%にもなるという。

 新棟の建物は12階建てで、のべ床面積は4万9950平方メートル。2階がメインの入口、3~4階が耐荷重を強化した実証実験フロアとなる。5階より上の中央部は吹き抜けの構造で、新棟利用者がお互いの活力を感じられる環境づくりを図っている。自然換気や自然採光を積極的に取り入れるなど環境負荷を大きく低減する。

 玉川事業所は2019年11月の台風19号による大雨で一部が浸水するなどの被害に見舞われたことから、新棟は浸水や地震などの自然災害に強い設計にしている。落成は2025年6月を予定する。収容人員は約4700人で、外部関係者を含めたのべ利用人数は1万人以上を想定している。

 西原氏が触れたように、同社は新棟をスマートワーク実践の場にも位置づける。人事総務統括本部 ワークプレイスグループ シニアマネージャーの坂本俊一氏は、「オフィスの集約という側面もあるが、これまで分散していた各部門がこの玉川事業所に集まり、リアルにオープンイノベーションを共創できることに意義がある」と話す。玉川事業所は、JR・東急の武蔵小杉駅やJR向河原駅に近く、同駅と羽田空港を直結するバス便もあり、交通の利便性が高い立地だ。

 西原氏は、「コロナ禍を通じてバーチャル中心のコミュニケーションを経験したことで、リアルなコミュニケーションの大切さを改めて認識した。オープンイノベーションには、バーチャルとお互いの顔を見えるリアルのどちらもが不可欠で、一体的であることが重要だ」と述べる。坂本氏も、「イノベーションには能動的な情報の収集と受動的な情報の収集の2つが必要だと考えている。コロナ禍では(バーチャルなコミュニケーションによる)能動的な情報収集が中心だったが、(新棟で設ける吹き抜け構造などにより)ふと目にとまった利用者の様子からアイデアが浮かぶといった受動的な情報収集も可能にする」と話す。

 NECは、現在推進中の2025年度を目標とする中期経営計画で「デジタルガバメント/デジタルファイナンス(DG/DF)」「グローバル5G」「コアDX」の3つを成長領域に位置づけている。西原氏は、「新棟建設は中期経営計画で当社が目指す成長実現のためのまさに中心」とした。同社は、2019年に本社にイノベーション共創施設「NEC Future Creation Hub」、2022年には高速通信技術を生かした共創型施設「NEC CONNECT 5G Lab」を玉川事業所も開設しており、今回建設する新棟によりイノベーション共創環境が大きく広がることになる。

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