2024年のIT分野の注目トレンドは何か–ITRのレポートから探る
今回は「2024年のIT分野の注目トレンドは何か–ITRのレポートから探る」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
2023年も早や師走。来る2024年、IT分野ではどんな動きが注目されるか。アイ・ティ・アール(以下、ITR)がこのほど、2024年に企業が注目すべき12のIT戦略テーマ「ITR注目トレンド 2024」を発表した。本稿ではその中から4つを取り上げ、筆者なりに考察したい。
「ITR注目トレンド 2024」レポートでは、「AI経営革新」「高度情報活用」「IT基盤最適化」の3つの観点から、2024年に企業が注目すべき次のような12のIT戦略テーマを挙げている。
AI経営革新では「生成AIによるビジネスモデル革新」「AI活用による顧客エンゲージメントの強化」「AIセントリックな組織デザインの再構築」「AIドリブン経営基盤の構築」、高度情報活用では「マルチモーダル・ナレッジ環境の構築」「ハイブリッドIoTの普及」「AIとブロックチェーンによるパーソナルデータのセキュアな活用」「企業内研修のパーソナライズ化」、IT基盤最適化では「アダプタブルITアーキテクチャの構築と確立」「AIによるシステム開発と運用の自動化と加速」「ゼロトラストセキュリティと境界防御セキュリティの融合」「攻撃者視点でのセキュリティ対策の定着化」といったテーマである。
それぞれの内容については発表資料をご覧いただくとして、本稿ではその中から4つを取り上げ、考察したい。
1つ目は、生成AIによるビジネスモデル革新だ。ITRでは次のように解説している。
「生成AIは、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速させるために利用可能な非常に強力なツールである。AI基盤モデルの規模と精度が拡大するにつれて、生成されるコンテンツはますます多用途化する。企業は自社固有のビジネスデータを反映したデータセットを生成することで、ユースケースを見いだし、ビジネスモデルの革新につなげるべきである」
ビジネスモデルの革新において必要なケイパビリティーが、創造力、アイデアを生む力だ。さまざまなものを生み出す生成AIは、その意味で強力な支援ツールとなり得る。表1はPwC Japanグループが作成した「生成AIで実現できることの例」を記したものである。縦軸の「テキスト」「プログラム」「画像/動画」「音声/音楽」といった領域に対し、横軸の「知的業務」「創造業務」へ活用した際にどんなことができるかを示している。
ビジネスモデルの革新に向けては、特にテキストにおける創造業務への活用が効果的だろう。対話やブレストの内容を補助し、論点の洗い出しやアイデアの提案まで支援してくれる「頼もしい相棒」になり得る。
ただ、ビジネスモデルの革新プロセスの折々には、アイデアに基づく意思決定が求められる。その意思決定はあくまで人間が行うべきだが、いつしかそれさえも生成AIに委ねてしまうことにならないか。この懸念については、2023年6月22日掲載の本連載記事「生成AIの最大のリスクは『意思決定を委ねてしまうこと』ではないか」を参照されたい。表1はこの記事から引用したものである。
2つ目は、マルチモーダル・ナレッジ環境の構築だ。ITRでは次のように解説している。
「大規模データを事前学習したAI基盤モデルや、それを活用した生成AIサービスの活用が進む中で、企業はナレッジマネジメントの再考を迫られる。ナレッジベースの在り方も中央集権型から分散型へと移り、対象となるデータもテキストだけでなく、動画、画像、音声、数値などマルチモーダル化すると予想される。一方で、社員の経験をナレッジに変換するためのプロセスを整備することも求められる」
「企業はナレッジマネジメントの再考を迫られる」との指摘に、筆者も強く同意する。さらに、マルチモーダルのナレッジベースをどう生かしていくかも、企業にとって新たな競争力のカギになるのではないか。ナレッジベースを生かす観点で、効果を生み出しやすいと見られるのが、「業務ソフト×生成AI」の組み合わせだ。
ここにきて業務ソフトに生成AIを活用する取り組みが活発化しているが、企業においてそれを使い込んでいくのは、まさしくこれからだ。その使い込んだノウハウを社内にどんどん蓄積していけば、それこそが独自のナレッジベースとなり、企業競争力の源泉になっていく。業務ソフトと生成AIの掛け合わせについては、2023年9月14日掲載の本連載記事「『業務ソフト×生成AI』はマスト–その先にある競争優位とは何か」を参照されたい。