生成AI/LLM市場に挑むAIスタートアップ、ELYZAの勝算
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「独力でLLM(大規模言語モデル)市場を勝ち抜くことは不可能」――。AIスタートアップのELYZAで代表取締役を務める曽根岡侑也氏はこのほど、KDDIの100%子会社になることを決断した理由をこう説明した。
KDDIに買収され、2024年3月に上場を果たしたIoTプラットフォーム事業を展開するソラコムをお手本に、KDDIの資金力や技術力、営業力などの力を取り込み、グローバルプレーヤーと戦える力をつける考えのようだ。
日本の生成AI/LLM市場は今、グローバルプレーヤーに独占されそうになりつつある。「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)に牛耳られたクラウド基盤と同じように、生成AI/LLMもOpenAI、Anthropic、Googleなどが先行する。よく見れば、OpenAIにはMicrosoftが、AnthropicにはAmazonがそれぞれ付いており、構造はクラウドと同じように見える。
そうした中、自然言語処理(NLP)技術を得意とし、2019年から日本語LLMの研究開発と社会実装に取り組み始めたELYZAは3月12日、同社の日本語LLMがOpenAIやGoogleなどのグローバルプレーヤーの汎用(はんよう)モデルに匹敵する性能を達成したと発表した。とはいっても、「グローバルプレーヤーに独力で勝てる確率はゼロ」と、曽根岡氏は資金力など体力の大きな差を理解し、KDDIの傘下に入った。
しかし、曽根岡氏は「決して、子会社になったのではない」という。ソラコムに適用した、大企業が自分たちのリソースをかけてスタートアップを育てて独立させる、スイングバイIPO(新規株式公開)を狙う。「大企業や投資家からはポジティブに映らないかもしれないが、KDDIにはそれを許す寛大さがある」と同氏。
海外ベンダーと組む選択肢もあっただろうが、親子のシビアな関係になってしまうかもしれない。それよりも、「日本のために」との思いもある日本企業と組むことを選んだともいえる。
加えて日本語に特化すれば、勝てる余地がある。曽根岡氏によると、グローバルモデルの日本語での出力は英語に比べて性能が劣り、解けないものもある。また、計算リソースなどへの投資はKDDIの1000億円に対して、Metaは5兆円の規模だという。曽根岡氏は「数倍であればやり方などの工夫で戦えるが、50分の1では同じ領域での戦いを避けた方がいい」と指摘する。それでも勝てる見込みは2%、3%、5%かもしれない。
性能を含めた開発競争は激しさを増しており、曽根岡氏に取材した数日後、OpenAIが日本語の性能を3倍に、Metaがオープンソースの「Llama 3」をそれぞれ発表した。