AI PCの普及でコンピューティング形態は「分散型」に変わっていくのか

今回は「AI PCの普及でコンピューティング形態は「分散型」に変わっていくのか」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、インテル 代表取締役社長の大野誠氏と、日本ヒューレット・パッカード サステナビリティ推進部 部長 兼 ガバメントリレーション担当の安本豐勝氏の「明言」を紹介する。

 米Intelの日本法人インテルは先頃、プライベートイベント「Intel Connection Japan 2024」を都内で開催した。大野氏の冒頭の発言は、「インテルが牽引するAI PC」と題した基調講演で来場者に向けて訴えたものである。

 「当社では『AI Everywhere』というビジョンを提唱している。現状ではAIの多くがデータセンターで処理されているが、AI Everywhereとはこれをエッジ、さらにはパーソナルデバイスまで広げていくことを意味している。そのパーソナルデバイスの代表的な存在になり得るのが、AI PCだ」

 大野氏は図1を示しながら、こう切り出した。そして、次のように続けた。

 「2023年末、当社はAI PC向けに『インテルCore Ultraプロセッサー』を発表し、提供を開始した。それ以来、AI PC市場が広がっている。同製品を出して以来、約9カ月で2000万個以上を出荷することができた。また、幅広いパートナーエコシステムとの密接な協力によって、これまでに300以上のAI機能が開発された。当社では今後もAI PCの発展のために、さらなる製品開発を進めていく」

 そう話した大野氏はこのイベントを機に、最新の「インテルCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)」を発表した。この最新のプロセッサーについては発表資料をご覧いただくとして、同氏はその特徴として「画期的な優れた電力効率」「卓越したコア性能」「グラフィックス性能の大幅な向上」「比類のないAI演算処理能力」の4つを挙げた(図2)。

 また、この最新プロセッサーを搭載したAI PCをPCメーカー各社が商品化することも明らかにした(図3)。

 今後、注目されるのは、最新プロセッサーを搭載したAI PCの性能や機能を活用した日本向けのソフトウェアがどれだけスピーディーに出そろってくるかだ。そのため、インテルでもソフトウェア開発者を対象としたコミュニティー作りやAIソリューション企業とのコラボレーションなどの活動に注力していく構えだ。

 その話の流れで大野氏が述べたのが、冒頭の発言だ。この中の「皆さん」というのはパートナー企業だけでなく、ユーザーにも広く呼び掛けているように感じられた。

 さらに、筆者がAI PCについて注目しているのは、システムとして考えると、AI PCが普及していけばコンピューティング形態のありようが変わっていくのではないかという点だ。これについての詳細は、本サイトでの筆者のもう1つの連載「松岡功の一言もの申す」の2024年4月4日掲載記事「AI PCの普及で『再び来るか、分散型コンピューティングの時代』」をご覧いただくとして、現在クラウドによって「集中型」になってきているコンピューティング形態がAI PCの普及によって「分散型」に転換するのではないかということだ。これは、ITの利用形態が変わり、ソフトウェアの作り方やデータの持ち方などが変わることを意味する。

 この疑問について、インテル 技術本部 部長で工学博士の安生健一朗氏が次のように答えてくれた。

 「AI PCは例えば、PCでAIを使えるようにすることで、クラウドに置きたくない機密データを手元のPCでAI処理できるようにするといったデータ保護の観点での用途がある。これまでクラウド主導で動いていたものが、PCでもできるところが増えると。そうなれば、ユーザーにとってはコスト面でもメリットが出てくるだろう。ただ、分散型のコンピューティング形態になっていくかは今後の使われ方次第ではないか」

 最近では「エッジコンピューティング」という言葉もよく使われるようになったが、AI PCがシステムとして今後どのように使われるようになるのか。引き続き、注目していきたい。

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