IT産業がマーテック導入に失敗し続けた原因と対策

今回は「IT産業がマーテック導入に失敗し続けた原因と対策」についてご紹介します。

関連ワード (マーケティング、戦略なきIT投資の行く末等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 「MarTech(マーテック)」とはマーケティングテクノロジーの略語で、マーケティングやセールスで活用するシステムの総称です。業務アプリケーションの発達は経理・財務、物流、人事・給与などのバックオフィスから始まりました。それが徐々にフロントと呼ばれる営業やマーケティングの分野に進出しCRM/SFA(顧客関係や営業案件の管理)、CMS(コンテンツ管理)、DMP(データ管理)、MA(リード管理)、BI(データ解析)などが生まれ、これらがマーテックを形成しました。米国の物好きな人が毎年その数をカウントしてマッピングしていましたが、最後に見た2019年の時点で10000ブランドを超えるマーテックが存在しています。

 日本でそうしたマーテックを最初に導入するのは多くの場合IT企業で、

などさまざまな理由から導入にチャレンジしますが、成功した例をほとんど見たことがありません。それどころか、多くは活用が始まらないまま塩漬けになってやがて溶けてしまいます。

 私はその原因を「アンゾフの3S」と「データの軽視」だと考えています。それぞれ説明しましょう。

 Igor Ansoff(イゴール・アンゾフ)博士をご存じでしょうか? 1918年にロシア極東のウラジオストックで生まれ、後に米国に移住し、ブラウン大学で応用数学の博士号を取得した後、ランド研究所で研究者として実績を重ね、その後Lockheedの技術担当副社長に転身してビジネスパーソンとしても成功し、カーネギーメロン大学で再びアカデミックの世界に戻り、以後は世界の経営戦略論をリードする多くの論文や著作を発表しました。マーケティングの世界で今でも使われるアンゾフマトリクスなどを残した人でもあります。

 そのAnsoff博士が「3S」を提唱しています。これは「戦略(Strategy)」「組織(Structure)」「システム(Systems)」の頭文字をとったモデルです。

 戦略とは、目的を達成するために行う基本的な経営資源の再配分です。ですから戦略を立案するにはまず目的が定義されていなければなりません。マーケティングが経営と表裏一体な理由はこれです。企業の目的が正しく定義され、それが共有されない限り戦略は構築できず、戦略の存在しない戦術は「ただの動き」であってお金やリソースは消費しますが何の成果も上げることができません。また戦術を持たない戦略は「絵に描いた餅」で、決して実現することはありません。実はマーテックを導入したIT企業で「それで実現しようとした戦略はどんなものですか?」と質問した時に納得できる答えが返ってきたことがありません。多くの場合は目的も戦略も無いのです。

 戦略を構築したら、それを実現するために質、量ともに十分なスキルを備えたチームを作らなければなりません。そういう意味では「戦略を実現するための最も重要な戦術が組織」と言えるでしょう。特にマーケティングはプロフェッショナルの世界です。3年でローテーションするようなゼネラリストが担当するには専門性が高過ぎると私は考えています。マーテックを導入して活用できずにいるIT企業で「これはプロが使うマーケティングツールですが、これを使いこなすスキルを持ったチームはどこにいますか?」と質問した時の多くの答えは「いません」なのです。

 戦略と組織が定義され用意されていれば、それがそのまま「要件定義」になります。何をするためのシステムか、誰がどう使うシステムなのかが明確に定義できていれば機能からインターフェースまでどうでなければならないかは判断できるはずなのです。 逆にどんな素晴らしいシステムを導入したとしても、それを使う目的も、戦略も、十分なスキルを備えた組織も存在しなければ生かせるはずもないのです。

 もう一つの原因はデータの軽視です。IT産業の人達はシステムの機能やデータベースには興味がありますが、中に格納されるデータについてはほとんど無関心です。しかしマーケティングを実施する場合、入れ物よりも中身がはるかに重要なのです。

 BtoBマーケティングの世界でBI(ビジネスインテリジェンス)と呼ばれるデータ解析の最先端は「プレディクティブアナリティクス」という未来予測エンジンです。社内に蓄積したさまざまなデータと外部のセカンドパーティー、サードパーティーデータをひも付けたり混ぜ合わせたりして分析することで、「どの企業」が「どの分野」に「いつ」「どの規模」で投資するかを予測するシステムですが、その検証のために日本企業が用意した社内データが呆れるほど汚いのです。企業の名寄せ、個人の名寄せ、企業と個人のひも付け、属性情報の付与などの基本的なデータマネジメントができていないので、社名の表記揺れが多く、個人も漢字表記の揺れで明らかに同じ人間が複数存在したり、乱暴にメールアドレスだけをキーにして寄せたために違う人間を一人に寄せたりして、おかしな行動履歴になってしまっています。極論すれば解析する価値の無いデータなのです。

 IT産業でもMA(マーケティングオートメーション)を導入する企業が増えましたが、そこに格納されているデータを眺めてみると、その企業のマーケティングへの取り組みが透けて見えてしまいます。どんなにマーケティングが大事だ、マーケティングを強化してきた、投資を重ねてきたと言っても、データは誤魔化せません。その企業の保有するリードデータの状態が真実を物語ってしまうのです。

 そういう意味ではIT産業の企業で、企業サイズや社歴に相応しいレベルの健全なデータを保有している企業はほとんどありません。数年前までBtoBマーケティングの世界では良い状態で管理されているデータを「洗練された」という意味で「Sophisticated Data」と呼んでいました。しかし現代ではこの呼び方が「健全な」という意味を含んだ「Hygiene Data」になっています。

 では、この対策はどうするべきでしょうか?

 私はSIer(システムインテグレーター)を含むIT産業がマーテックの導入に成功し成果を上げるためには、アンゾフの3Sとデータの重要性を再認識し、企業戦略に取り組むべきだと考えています。目的を定義し、その目的を達成するための戦略を立案し、戦略を実行できるスキルを備えたチームを編成し、戦略と組織を要件定義にしてシステムを選定すること、これに尽きるのです。そしてその戦略の中心にデータを置くべきです。本気でマーケティングに取り組み企業が最も気を配るべきなのは、システムの機能でも、検索エンジンのアルゴリズムでも、新たなマーケティングサービスでもなく、自社で眠っている顧客・見込み客データの状態と可能性なのです。

一般社団法人 日本マーケティング・リサーチ協会

2021.03.04 お知らせ 日経MJ紙にマーケティング・リサーチの広告特集が掲載されました 2021.03.03 お知らせ 【新着】JMRAマーケティングデータ・ストレージに「会員社 自主調査」情報を掲載しました! 2021.02.25 お知らせ 会員社「緊急業況 ...

The_Response ザ・レスポンス

ザ・レスポンスは、小さな会社が実践で使える、ダイレクト・レスポンス・マーケティングの情報をお届けするサイトです。広告、マーケティングのメッカ、米国のノウハウを日本に合うようにローカライズしてお届けしています。

アドバンスマーケティング株式会社 - スノーボード ...

スノーボード・サーフィン・スケートボードブランドの日本正規代理店 ALLIAN,LIBTECH,GNU,ROXY,ANAKIE,BLUEBIRD,CAPIX,BANSHEE BUNGEE,WORLD IND,VANS,ALMOST,ANTI HERO,BLACK LABEL,BLOOD WIZARD,BRIXTON,CLICHE,CONSOLIDATED,DAF,HARDTIMES,LOW CARD,SLAP,THRASHER,VOXなど

ホテル・旅館専門デジタルマーケティング会社 | コレリィアン ...

コレリィアンドアトラクトはホテル・旅館の宿泊予約(直販)をデジタルマーケティングで増やすコンサルティング会社です。2009年創業、累計顧客数350社超え、直販最大455%UPの実績。

Twitter

詳細の表示を試みましたが、サイトのオーナーによって制限されているため表示できません。

バズマーケティングとは - コトバンク

デジタル大辞泉 - バズマーケティングの用語解説 - ウェブ上で一挙に話題が広まる(バズる)ことを利用したマーケティング手法。ソーシャルメディア上の口コミを利用することを指し、バイラルマーケティングとほぼ同義。

リレーションシップマーケティングとは - IT用語辞典 e-Words

リレーションシップマーケティング【relationship marketing】とは、顧客と良好な関係を構築・維持し、長期間繰り返し取引を行うことにより、一人あるいは一社あたりの売上や収益を最大化するマーケティング手法。新しい顧客の獲得や一回の売上や利益の極大化よりも、同じ顧客と長期的な関係を築くことで、関係が継続している間に得られる利益の合計(LTV:Life Time Value/顧客生涯価値)の最大化を目指す。

インターナル・マーケティングとは - コトバンク

知恵蔵 - インターナル・マーケティングの用語解説 - 特にサービス業において、顧客満足(CS:Customer Satisfaction)を与えるような教育と動機付けを、企業が接客要員とそれを支える従業員に対して与えることをいう。製品のマーケティングとは異なり、サービス・マーケティングでは、その生産と消...

J-marketing.net|produced by JMR生活研究所

詳細の表示を試みましたが、サイトのオーナーによって制限されているため表示できません。

MPS JAPAN−花き産業総合認証プログラム

花き業界総合認証プログラムを実施するMPSジャパン株式会社のホームページです。日本においてMPSの実務を担当するコーディネーターとして設立されました。

大塚商会、20年通期は減収減益--コロナ禍も「大戦略II」で打開 ...

大塚商会が発表した2020年度連結業績が、売上高が前年比5.7%減の8363億円、営業利益が9.5%減の563億円だった。

ドローン自作を手軽に--DIY組み立てキット20選 - ZDNet Japan

 · 庭山一郎「戦略なきIT投資の行く末」 課題解決のためのUI/UX エンタープライズトレンドの読み方 10の事情 座談会@ZDNet 吉田行男「より賢く活用 ...

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
ネクストミーツ、デジタルおよびサステナブル基盤としてクラウド型ERPを導入
IT関連
2022-09-16 05:15
「iOS 18」のクールな新機能5選–パブリックベータ版を試してみた
IT関連
2024-07-21 11:14
4月は日銀のETF買いなし–上がるも下がるも外国人次第の日本株に逆戻り
IT関連
2021-04-14 09:57
MongoDB、暗号化したままのデータベースを検索「Queryable Encryption」発表。データ格納時、メモリ上、データ転送、ログ、バックアップのすべてが暗号化データのまま
MongoDB
2022-06-15 08:59
"国家の利益のため"活動する中国の脅威アクター、東南アジアの大手通信事業者狙う–Cybereason報告
IT関連
2021-08-06 10:09
グーグル、「Workspace」の無償版「Essentials Starter」提供開始
IT関連
2022-02-05 17:26
NEC、学習者用端末の新モデルを発売–落下などへの耐久性や安全性を強化
IT関連
2024-10-05 05:35
全てをセキュアにつなぐ、テクノロジーイノベーションで日本の未来価値を創造–シスコシステムズ・濱田氏
IT関連
2024-01-07 06:11
「iOS 16」リリースに備える–「iPhone」のアップデートを円滑にする準備事項
IT関連
2022-09-04 15:11
マイクロソフト、自然言語モデル「GPT-3」をPower Appsに–「自然な英語」でコード開発へ
IT関連
2021-05-26 18:16
富士通、災害対応や業務継続を支援するサービス発売–気象やSNSの情報を活用
IT関連
2021-03-10 00:25
NFTを利用してクリエイターが自分の知的財産を守るブロックチェーンのプラットフォーム「S!NG」
ブロックチェーン
2021-04-28 20:59
AIモデル「Gemini」に「GNOME」デスクトップからアクセスするには
IT関連
2024-05-31 02:08
Cloudflare WorkersがWebAssemblyでWASIをサポート。WebAssemblyはクロスプラットフォーム対応が当前の世界に
Cloudflare
2022-07-11 05:38