異色スマートウォッチから“着るクーラー”まで ソニーが7年で17件の新規事業に成功したワケ

今回は「異色スマートウォッチから“着るクーラー”まで ソニーが7年で17件の新規事業に成功したワケ」についてご紹介します。

関連ワード (不採算、新規事業創出、算定等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、It Media News様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 バンド部分にデバイス本体を組み込んだ異色のスマートウォッチ「wena」(ウェナ)という製品をご存知だろうか。本体を好みの時計に取り付けることで、愛用品を簡単にスマートウォッチ化できるというものだ。

 ソニーの新規事業創出プログラムから生まれ、2016年に発売されたこの製品。登場するやいなや「その発想はなかった」などとSNSを中心に話題になり、クラウドファンディングとしては当時の国内最高額の1億円をたたき出した。20年11月には3世代目の「wena 3」が発売されるなど、いまや同社の新規事業を代表する製品の一つになっている。

 このwenaは、実は当時ソニーに入社したばかりの新人社員が生み出したもの。それを実現したのが、「Sony Startup Acceleration Program」(SSAP)と呼ばれる同社内のスタートアップ支援プログラムだ。

 SSAPが生み出したのはwenaだけにとどまらない。スマートロック「Qrio Smart Lock」(キュリオスマートロック)、ロボット玩具「toio」(トイオ)、“着るクーラー”とも呼ばれる「REON POCKET」(レオンポケット)なども、SSAP発の新規事業だ。

 このうちtoioは、好調ぶりが「PlayStation」以外の稼ぎ頭を探していたソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の目に留まり、同社に事業移管することに。現在は同社の定款の2行目にされ、ソニーグループ内でも話題になったという。

 また、製品ではないものの、不動産事業を手掛けるSREホールディングスはSSAPの最初の新規事業で、20年12月には東証一部へを果たしている。

 14年に始まった前身の社内起業プログラム「Seed Acceleration Program」(SAP)時代を含め、これまでの約7年間で17件の新規事業を世に送り出しているSSAP。ハンズオンで事業化検証を実施した数は67件(2021年2月末時点)に上っているという。

 業界で「新規事業は1000に3つしか成功しない」といわれる中、なぜ次々と新規事業を生み出すことができるのか。SSAPの事業責任者で創始者でもあるソニーの小田島伸至さんに、SSAP誕生の経緯や新規事業成功の秘けつを聞いた。

新規事業の少なさが判明、現場で原因をヒアリング

 SSAPの前身であるSAPは2014年にスタート。社長直下で事業戦略を練る立場にあった小田島さんが、事業部から上がってくる新規事業計画の少なさに目を付けたのがきっかけだ。

 ソニーのデンマーク支社で携帯電話向け液晶パネル事業を売上も人脈もゼロの状態で立ち上げ、3年で約300億円規模のビジネスに成長させた経験を持つ小田島さん。その実績を引っ提げて本社に戻ると驚愕した。「なぜこんなに新規事業が少ないのか」。自身の中に生まれた疑問への答えを求め、開発現場に足を運んでヒアリングを行った。

 すると社員から上がったのは「新規事業のアイデアをどこに持っていけばいいか分からない」「『儲けろ』と言われても自分はソフトウェアの専門家。次の1歩をどう踏み出せばいいか分からない」「自分が欲しいものを提案しても、上司が欲しいものではないので検討レベルで止まる」などの声。

 ヒアリングして分かったのが、社員の中に事業づくりに長けた人材が不足していることだった。

 「大学までの教育で新規事業の作り方なんて習わないし、入社後も日本のサラリーマンは会社の歯車として働き、全体像をつかむ余裕がない。事業の作り方を知る機会がそもそもなく、それは作り方を体系的に教える人がいないからだと思った」

 これまでは人に教えるという発想がなかったものの、「困った人の話を聞き、アドバイスするとみんな晴れた顔になった」と小田島さん。「事業の作り方というのは半分は勉強。勉強すればできるようになる。対症療法ではなく、全体的に手を打たないと抜本的には解決しない」と、新規事業支援への注力を決意した。

 そんな経緯で始まったSAP(現SSAP)の大きなプログラム構成はこうだ。

 オーディション形式で新規事業アイデアを公募し、勝ち進んだアイデアが事業化に向けた検証の権利を得る。最終目標と期間を設定し、3カ月単位で成果を検証。成果が出ているものに投資とサポートを続けるという流れだ。

 wenaの場合は新入社員ばかりのメンバー構成だったため「若くてガッツがあったし、製品のビジョンも優れていたが、デバイスを小型化するための経験とスキルがなかった」と小田島さんは振り返る。事業の進捗の中で明らかになった製品の小型・軽量という事業コンセプトと現実のギャップを埋めるため、ソニーのヒット商品を手掛けた立役者など社内で適したスキルを持つ社員をアクセラレーター(支援者)として選び、事業化への道筋づくりをサポートしたという。

 wenaをはじめ、今ではSSAP発のいくつもの事業が成長している。「いかにやる気がある人をスムーズにピックアップし、その人とアイデアを磨くかが重要だ」と小田島さんは話す。

勝ちパターンを他社にも 「10倍のスピードで新規事業が進んだ」と反響

 ソニー社内での「危機感」から生まれたSSAP。勝ちパターンを体得した今、ソニーは社内のみにとどまらず、他社向けにも同プログラムを提供している。

 例えば、リクシルが20年9月に発売した、自宅ドアの開閉を自動化するシステム「DOAC」もSSAP生まれの事業の一つだ。アイデアの創出からマーケティング、デザインなどをソニーが支援し、事業化にこぎつけた。

 京セラの、圧電セラミック素子を活用した、音が出る子どもの仕上げ磨き用歯ブラシ「Possi」(ポッシ)もSSAPによるものだ。ソニーはアイデアの創出だけでなく、開発資金を調達するためのクラウドファンディングや音楽コンテンツの制作なども支援している。

 小田島さんによると社外へのサービス提供実績は85件(2021年2月末時点)で、支援先の産業は、医療機器、ヘルスケア、医薬品、素材・繊維、飲料、農業、銀行、電気機器、機械、建材、化学、食品など13業界に上るという。

 この他、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)や日本政策投資銀行(DBJ)などの公的機関、東京大学・東京芸術大学、立命館大学などの教育機関、スタートアップなどにも支援を提供している。

 社外向けのSSAPには大きく2つのコースがある。「オールインクルーシブ型」と呼ばれる、いわゆる事業構想から事業化までをフルでサポートするコースと、短期集中で研修や不足するスキルだけ補うコースだ。

 企業にとって、新規事業を立ち上げて成功させるまでの道のりは厳しい。小田島さんによると、新規事業は成功するかどうかが不透明なことから、多くの企業で投資が進まず慢性的な人手不足に陥っているという。

 そこでSSAPのオールインクルーシブ型コースでは、事業の進め方を熟知したアクセラレーターを派遣し、人手不足をカバー。少人数でも始められる体制を用意している。

 また、新規事業は経営者にとっても「必要コストが見えない」など不安要素が大きい。SSAPではアクセラレーターが事業化成立までのコストと時間を算定し、最短1カ月で事業化検証を実施。その結果、不採算と判断した際は素直に撤退を提案する。「企業にとって『やめる』という決断は非常に重要ですから」と、小田島さんは言う。

 企業がSSAPを利用することで「新規事業を軌道に乗せる時間とコストを大幅に削減できる」と小田島さんは話す。実際、利用企業からは「半年くらい何も進まなかった事業が、SSAPを利用すると一気に進んだ。使わなければ10倍の時間がかかっていた」などの声が上がっているという。

 事業のアイデアが何もない状態でもプログラムの利用は可能だ。社内アイデアソンの企画・開催をサポートし、一からサポートする体制も整えている。自社の技術でどんな貢献ができるか分からない……といった疑問に応えるサービスも用意している。

 小田島さんは「社内で前例がないからこそ新規事業。科学的なアプローチがされておらず、『気合でなんとかなる』など精神論的なことが言われている例が多い」と指摘する。

 「多くの企業がその難しさを正しく理解していない。泳げない人をいきなり海に飛び込ませたり、400mメドレーを課すようなことをしている。そういう意味でもSSAPの“伴走”という仕組みは効果的だ」(小田島さん)

新規事業に必要なのは「スピード」と「変化対応力」

 今後、新規事業に取り組む担当者にはどんなことが必要なのか。小田島さんは「スピード」と「変化対応力」をキーワードに挙げる。

 周囲の社員を巻き込むためには「まず動くことが重要」だが、「話だけで済むのは1回目の打ち合わせまで」。2回目以降の打ち合わせではアイデアが可視化された製品・サービスのプロトタイプやデザインを用意することで、社内で協力者を得やすくなるという。

 立ち上げた事業がうまくいかないときに上手に変化させる、いわゆるピボットも重要だ。「1発目のアイデアは99%成功しない。いかにその失敗に気づき、軸をぶらさずに変化させられるかがポイントだ」と小田島さんは話す。

 ソニー社内の新規事業の少なさをきっかけに発足し、次々と新規事業と事業開発人材を生み出しているSSAP。今ではその舞台は社外にも広がっている。

 なぜ、ソニーが他社の事業をサポートするのか。その理由を小田島さんは「SSAPを通じて企業連携を進めたい」と説明。「具体的な商品を一緒に世の中に送り出す中でリレーションを作り、将来的により大きな事業をともに作りたい」「世の中に事業開発ができる人材を増やし、社会の課題解決に貢献したい」と話す。

 ソニーが蓄えたナレッジを活用し、あらゆる企業で新規事業を成功に導く可能性を秘めたSSAP。に参加すれば、SSAPの具体的なメニューや料金が分かる。次の大ヒット事業を生み出すのは、今この記事を見ている読者が勤める企業かもしれない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

環境省_マニュアル・様式 |「温室効果ガス排出量 算定・報告 ...

H18.4.1から、特定排出者に自らの温室効果ガスの排出量を算定し国に報告することが義務付けられます。ここでは、制度概要の説明や必要な様式のダウンロードや関連資料が参照できます

環境省_制度概要 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 ...

H18.4.1から、特定排出者に自らの温室効果ガスの排出量を算定し国に報告することが義務付けられます。ここでは、制度概要の説明や必要な様式のダウンロードや関連資料が参照できます

障害福祉サービス費等の報酬算定構造

注3 二、ホについて、令和2年度から継続して算定する場合のみ令和4年3月サービス提供分まで算定が可能 注1 所定単位は、基本報酬及び各加算(福祉・介護職員処遇改善加算、福祉・介護職員処遇改善特別加算、福祉・介護職員等特定処遇改善加算を除く)を算定した単位数

養育費算定表に基づいた計算機/弁護士実務 - AsahiNet

離婚後に、義務者(通常、父親)が、権利者(通常、母親)に支払う、子供の生活費(養育費)の計算機です。養育費の月額が表示されます。養育費算定表に基づいています

「請負による建設の事業」における 労務費率を用いた労災保 …

賃金総額を算定し、労災保険料を計算して納付しなければなりません。 しかし、元請負人がその事業全体の賃金総額を正確に把握することが困難 な場合があるため、請負金額に、労務費率を乗じて得た額を賃金総額とする ことが認め ...

令和元年度の算定基礎届の提出について|日本年金機構

 · <算定基礎届に関する主な変更内容> 8月または9月に随時改定が予定されている被保険者にかかる算定基礎届について、事業主から申出をいただいた場合は、7月提出時において、算定基礎届の届出を省略することが可能です。

環境省_日本の温室効果ガス排出量の算定結果 - env

日本の温室効果ガス排出量の算定結果 地球環境・国際環境協力 温室効果ガスインベントリ(報告書、データベース)(リンク) PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご ...

失業等給付の受給資格を得るために必要な 「被保険者期間」 …

厚 労働省・都道府県労働局・ハローワーク 事業主や被保険者・離職者の皆さまへ 失業等給付の受給資格を得るために必要な 「被保険者期間」の算定方法が変わります 〜対象者 離職 が令和2年8 1 以降の方〜 失業等給付の 給を受けるためには、離職をした 以前の2年間に、

【事業主の皆様へ】令和2年度の算定基礎届の記入方法〔説明 ...

 · 例年、算定基礎届事務講習会時に、キャリアアップ助成金についても併せてご案内をしております。「キャリアアップ助成金」とは非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、厚生年金保険・健康保険の適用拡大等、非正規雇用労働者の処遇改善を行った事業主に対して ...

総務省|2021年度以降に適用されるデータ接続料の算定に関す …

 · 総務省は、本日、株式会社NTTドコモ(代表取締役社長 井伊 基之)、KDDI株式会社(代表取締役社長 髙橋 誠)及びソフトバンク株式会社(代表取締役社長執行役員兼CEO 宮内 謙)に対し、2021年度以降に適用される予測接続料の算定に当たり、市場環境の見通しを適切に反映し、より一層精 …

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
出社率低下も、76.3%の企業でインターネットトラフィックが増加–IDC
IT関連
2022-05-11 02:15
マイクロソフト、「Copilot」の企業導入を促す3つの方法論
IT関連
2024-02-22 00:13
ヤマダウェブ、Apple製品をApple Pay購入でポイント10%付与実施中
IT関連
2021-08-14 11:39
「情報量が濃すぎて胸焼けしそう」──個人が作った温泉マップに大反響 趣味で始めて7年間、開発に「5500時間以上」
アプリ・Web
2021-08-21 18:04
富士通、治験のデジタル化進めるエコシステム構築–ドラッグロス解消に向けて
IT関連
2024-08-29 13:40
LegalOn Technologies、「ChatGPT利用に関する社内ルールと注意点」公開–弁護士が監修
IT関連
2023-05-03 13:12
契約審査プラットフォーム「LegalForce」、自動レビュー機能がシステム保守契約に対応
IT関連
2023-03-02 05:15
AIが新商品の配合提案–サッポロビールと日本IBMに聞く、開発の舞台裏
IT関連
2023-02-02 01:00
ついにテスラの太陽電池・エネルギー貯蔵事業が売上原価を超える、売上げ約882.6億円
ハードウェア
2021-07-28 23:37
CDNエッジでJS/TS/WASMを実行できる「Vercel Edge Functions」正式リリース。Node.jsサブセットを目指す
JavaScript
2022-12-26 10:42
ウイイレは「eFootball」に 秋に基本プレイ無料で登場
くらテク
2021-07-22 02:48
Webブラウザ上でGPUプログラミングを可能にする「WebGPU」、Chrome 113で正式版に。3Dレンダリングや機械学習など高速処理
Chrome
2023-04-10 02:04
「Raspberry Pi」をセットアップするには–「Raspberry Pi Imager」でより簡単に
IT関連
2023-03-08 02:56
デルCEOが「マルチクラウド時代の到来」を強調する理由
IT関連
2022-05-14 11:57