量子コンピューティング活用へ、ゴールドマンが新たなアルゴリズムで挑むブレークスルー
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ほとんどの科学者は、業務上の大規模な問題を解決できる量子コンピューターというものが依然として遠い未来の話となっており、少なくともあと10年は実現されないと考えていた。
そのような中、米国の金融機関大手であるGoldman Sachsと、量子コンピューティング企業QC Wareのリサーチャーらは、新たな量子アルゴリズムを設計した。彼らによると、これによって今後5年ほどで利用可能になるかもしれないハードウェア上で、ある種の重要な金融計算の効率を著しく向上できる可能性があるという。
金融機関の関係者らは完全な量子コンピューターの完成を待たずとも、この新たなアルゴリズムを近い将来に達成されるレベルの量子ハードウェア上で実行することで、量子デバイスが未熟な段階であっても量子テクノロジーの利益を享受できるようになる。
Goldman Sachsは何年にもわたって、量子テクノロジーが金融分野に及ぼし得る破壊的影響について調査してきている。
同社のリサーチャーらは特に、モンテカルロ法として知られるシミュレーション手法を量子コンピューティングによって最適化する方法を模索してきている。モンテカルロ法を活用することで、金融資産の価値が他の関連資産の価格の時間的変動によってどのように変わっていくのかを決定し、さまざまなオプションや株式、通貨、コモディティーに内在するリスクを分析できるようになる。
この種の問題は、金融業界で最も計算資源を要するものの1つとなっている。というのも、結果を導き出すには幅広いさまざまな可能性を考える必要がある、つまり市場における数多くの変動要素に関する大量の予測が必要となるためだ。
量子コンピューティングは、その関連テクノロジーによってもたらされる、古典的なアプローチとは比較にならない並外れた計算能力のおかげで、こういったリスク評価を高速化できる可能性があると長い間考えられてきた。
そして、既に存在している多くの量子アルゴリズムは、モンテカルロ法の計算を最大1000倍にまで高速化し、金融市場の運用方法を変革する可能性があると分かっている。しかしこれらのアルゴリズムは、そのようなプログラムを実行できる量子デバイス上に配備され、正確な結果を出せるようになって初めて使い物になる。
例えば、Goldman SachsとIBMが実施した過去の取り組みの結果、量子テクノロジーの利点を享受するには7500論理キュービットをサポートするデバイスが必要になるという見積もりがなされている。その一方で、IBMは現在、2021年末までに127量子ビットのプロセッサーを公開しようと取り組んでいる状況だ。