【コラム】シリコンバレーではきちんとしたマネジメントができていない

今回は「【コラム】シリコンバレーではきちんとしたマネジメントができていない」についてご紹介します。

関連ワード (もちろん、効果的、新製品開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


テック業界はこれまでに世界で最も偉大な革新者を世に送り出し、最も収益性の高く価値ある企業やスタートアップのサクセスストーリーを誕生させてきた。それにも関わらず、優れた経営管理に対する評価が驚くほど低いのも事実である。

3つの会社を設立し、15年間テック業界に従事してきた私は、Shift(シフト)を構築した経験を通して多くのことを身をもって学んできた。もし2014年の創業時に戻れるとしたら、企業文化の設定(与えられるかその逆かのどちらか)や経営管理手法の開発などにおいて、今ならまったく違う対応を行なっていただろうと思う点が複数ある。

私の知る限りでは、適切な経営管理が行われていない場合、いくらそのスタートアップやアイデアがすばらしくてもいずれ失敗に終わっている。さらにはそれがエンジニアリングの人材不足につながり、ひいては企業を設立する際の人的コストの上昇につながるのである。これはシリコンバレーにとって大きな損害だ。

シリコンバレーの一流テック企業は、一見すると非常に優れた経営をしているように見えるかもしれない。しかし実際は、1つの製品を開発し、その製品を中心に独占しているといってもいいほどの一点主義企業なのである。

これは、Google(グーグル)や旧Facebook(フェイスブック)のMeta(メタ)の両方に当てはまることである。どちらも主要な収益源は1つ(デジタル広告)で、買収以外の方法での新製品開発はほとんどにおいて失敗している。GoogleマップやAndroid(アンドロイド)は例外といえなくもないが、どちらも初期段階は買収で始まったものである。

こういった企業は、それぞれの広告ビジネスにおいて圧倒的な価格決定力を持っているため、新製品の開発や買収による競合他社の排除にほぼ無限のリソースを投入し続けながら、ありとあらゆるエンジニアを雇用することが可能なのである。

しかしこれは特に顕著なこの2社だけの問題ではなく、シリコンバレーの大手テック企業全体において広く浸透している。

テック系企業では目標や主要成果について語られることが多々あるが、こういった目標設定のフレームワークは、中身のない単なる言葉に過ぎない場合がほとんどだと言える。

金に糸目をつけない場合、結果として余裕が出過ぎ、アカウンタビリティが小さすぎることになる。その結果リソースが無駄になり、イノベーションが停滞する。企業にいる既存の人材を効果的に活用していれば、同等の、あるいはそれ以上の結果を出すことができる。失敗に終わるプロジェクトも減り、結果的に人材の力を引き出すことによりインパクトのある仕事が達成され、より大きなイノベーションを生み出すことができるようになるだろう。

あえていえば、多くのテック企業は収益にほとんど影響を与えることなく、現在の従業員の20%から40%を削減することができるだろう。しかしそのためには、より少ないリソースで仕事をこなさなければならず、そのためには優れた経営管理(優先順位付け、小規模で始めて実験し、テストと学びの後に製品を大胆に実行する能力、製品への取り組みとビジネスを損益を通じてより大きくコントロールする能力)が必要になる。

経営管理がうまくできれば、手に負えない人材関連のコストを大幅に削減できるようになる。エンジニアの給料が高く、しかも上がり続けていることはご存じだろう。利益率の高いビジネスを展開しているテック企業なら、エンジニアやその他の技術者をやたらと雇用する余裕もあるだろうが、実際は既存の人材をうまくマネージメントすることで、コストを大幅に削減することができ、またそうすることによりリソースをより収益性の高い結果に向けることができるのである。

無論、優れた技術を開発しているすべての企業がこの問題に悩まされているわけではない。中でもAmazon(アマゾン)は最大かつ最良の例で、消費者向けの大手テック企業の中でも同社は本業である小売ビジネスの他に、あるいはそれに加えて、Amazon Web Services(アマゾンウェブサービス)、プライム・ビデオ、マーケットプレイス、Adsなどの新しい収益源を生み出し、新製品を革新することに最も長けている企業である。

この問題は大手テック企業だけではなく、多くのスタートアップにも共通していることである。良い企業文化とは、社員にコンブ茶を用意したり、グルメな社食を提供したり、インスタ映えするオフィスを作ったり(これは新型コロナ前のことだが)することだという勘違いが広まっている。

これがアカウンタビリティの欠如へと発展していくのだが、経営者の立場からするとそれを隠すのは極めて簡単なことである。確かに、こういったものは多くの従業員にとってうれしい特典ではあるものの、実際に企業文化のコアとなるものは、報われるべき行動と嫌われるべき行動、奨励されるべき行動とやめるべき行動の総意であるべきなのだ。

多くの創業者は、イノベーションを起こすと同時に優れた経営管理とアカウンタビリティを実現することはできないと思い込んでいる。実際、人材争奪戦は非常に激しく、結果を出すことではなく従業員を満足させるということに多くのエネルギーが費やされている。P&L(損益計算書)のレンズを通してビジネスを管理し、その製品がどのようなものであるかをテストし、学習するのではなく、単に優れた製品を作ればユーザーはやってくると信じているのである。

これは「言うは易し行うは難し」である。私はShiftを経営する中で何度もこのミスを犯してきたし、このミスにより非常に多くの時間とお金を無駄にしてきた。

しかし、初期の創業者にとっては、自分よりもはるかに優れたマネージャー的人材を雇うことが必要不可欠なのである。経験からいうと、アーリーステージの創業者(製品と資本に焦点を当てる)とマネージャー(人材管理とアカウンタビリティに焦点を当てる)を同時に務めるのは難しいため、どこが成功していてどこが失敗しているかを把握し、ギャップを埋める必要がある。

また、早期にコーチングを受けるというのも重要だ。良いコーチングがあってこそ、自分の盲点を認識し、それを適切な人たちとどのように解決するかを決めることができるのである。

しかし、2020年と2021年に驚くべきIPOが行われたように、偉大な企業が今もなお創立されているのであれば、経営管理が優れているかどうかなど関係ないのではと思う読者もいるかもしれない。この理由は2つある。

まず第一に、才能あるエンジニアは信じられないほど不足している。少ないエンジニアでも同じ成果を上げられるにもかかわらず、余裕のある企業が優秀な人材を溜め込んでしまっていればイノベーションや米国経済の将来の繁栄に悪影響を及ぼすだろう。これでは十分に活用されていないエンジニアが平凡な職場に身を置くことになり、米国で最も差し迫った問題の1つである人材不足をさらに悪化させてしまう。その結果、世界のテクノロジー分野で一歩先を行く国としての能力が大きく制限されてしまう事になる。

コスト面の問題もある。この国のインフレがひどいと思っている人は、シリコンバレーの給与インフレを見てみるといいだろう。給与の額は歯止めが利かない状態になっており、生活費も同様だ。エンジニアたちはこの問題を認識しており、当然の権利としてそれを利用しているが、この問題が終わりのない悪循環を引き起こしてしまっている。当然これはビジネスにも影響を及ぼし、特にスタートアップはこの問題を解決するためにとんでもない額の資金を必要とすることになる。

シリコンバレーの企業には、経営に対する考え方を変える大きなチャンスがある。まず最初のステップは、経営管理を受け入れ、アカウンタビリティと損益計算書を通してビジネスを考えることのできる人を雇い、その人物を創業者が自分の周りに置くことから始まる。マネジメント経験のあるリーダーを採用するか、またはマネジメントコーチやコンサルティング会社のサポートを受けるといい。エンジニアがもう1人必要だと感じたとき、本当に必要なのは今いるエンジニアの能力をより引き出すためのマネージャーなのではないかと、一歩立ち止まって考えてみて欲しい。

そして第二に、リーダーは既存の人材の育成と管理に注力すべきである。例えば、従業員に適切な成長機会を与えること、チームを再編成すること、目標を設定し、リーダーと従業員が同様に目標達成の責任を負うことなどが挙げられる。

私が提案しているのはパラダイムシフトであり、それには時間がかかるだろう。もちろん、1社や2社がより良い管理方法を導入したところで、この問題が一夜にして改善されることはない。

しかし、現在のシリコンバレーのワークカルチャーも、ごく一部の企業から生まれ、そこから発展してきたのである。今後10年の間に管理の行き届いたAmazonのような企業が増えてくれば、シリコンバレーの文化は完全に改善され、その結果この業界、そして国全体の管理方法も変わってくるのではないだろうか。

編集部注:本稿の執筆者George Arison(ジョージ・アリソン)死は、オンライン中古車市場「Shift」の共同設立者兼CEO。

画像クレジット:Marti Barraud / Getty Images


【原文】

The tech industry is home to some of the world’s greatest innovators, most profitable and valuable companies, and incredible startup success stories. But, these achievements notwithstanding, it’s also a space where there’s a surprising lack of appreciation for skilled management.

I founded three companies and have worked in the tech industry for 15 years, and I learned a lot of this firsthand through my experiences building Shift. If I could go back to when we launched in 2014, there are a lot of things I’d do very differently in terms of how we set up our culture — understood as the type of behavior that is rewarded and encouraged versus discouraged and penalized — and developed management practices.

From my observations, lack of proper management leads to the failure of many great startups and ideas. More importantly, it’s contributing to the scarcity of engineering talent and, in turn, the rising people-related costs of building companies. That puts Silicon Valley at a disadvantage.

What works for tech monopolies doesn’t work for everyone else

At first glance, you might think that some of Silicon Valley’s best technology companies are incredibly well-managed. In practice, though, many of them are one-product wonders. They’ve figured out one product and have built, some would argue, a monopoly around that product.

This is certainly true of both Google and Meta (formerly Facebook), both of which have one primary revenue stream (digital ads), and both of which have largely failed at building new products outside of acquisitions (Google Maps and Android being possible exceptions, though both started as early-stage acquisitions).

Because these companies command incredible pricing leverage in their respective advertising businesses, they can continue to dump nearly unlimited resources into attempts to build new products and take out potential competition through acquisitions – all while hiring any and every engineer they can get their hands on.

But this issue goes beyond just these two prominent corporations. It is fairly widespread across large tech companies throughout Silicon Valley.

There may be talk about objectives and key results in tech companies, but often these goal-setting frameworks are just words without any teeth.

When you think you need another engineer, pause and consider whether what you really need is a manager to get more out of your existing engineers.

When the bottom line almost does not matter, the result is too much leeway and too little accountability. It is wasted resources and stalled innovation. If companies effectively utilized their existing talent, they would be able to produce the same, if not better, results. There would be fewer failed products, ultimately freeing up talent to work on more impactful tasks and produce greater innovation.

I would even venture that many technology companies could eliminate 20% to 40% of their workforce with very little change to the bottom line. However, this would require getting work done with far scarcer resources, which would, in turn, require management (aka prioritization; the ability to start small, experiment, and only after testing and learning going big on a product; and greater control of the product initiatives and business through profits and losses).

With better management, companies would also see a significant cut in their out-of-control people-related costs. We all know engineering salaries are high and keep rising, and while many tech companies with high-margin businesses can afford to hire an excess of engineers and other technologists, they would significantly reduce their costs if they simply managed their existing talent better – allowing them to put resources toward fewer initiatives and more profitable outcomes.

Of course, not all companies building great technology suffer from this problem, with Amazon being by far the biggest and best example. It is also Amazon, of all the large, consumer-focused tech companies, that has been the best at innovating new products and creating new revenue streams — Amazon Web Services, Prime Video, Marketplace, Ads, to name a few — outside or on top of its initial retail business.

How Silicon Valley came to disdain management

This problem isn’t just a problem of large tech companies; it’s prevalent in many startups. There is a widespread belief that good culture equals having kombucha on tap, feeding employees gourmet food, and, pre-COVID, having an Instagram-friendly office space.

This snowballs into a lack of accountability, which, from a management standpoint, is extremely easy to hide. And, sure, while those are all fun perks for many, culture should be, at its core, a consensus of the behaviors that are rewarded versus frowned upon, encouraged versus discouraged.

Many founders have become conditioned to believe that they will not be able to innovate and enforce good management and accountability at the same time. Indeed, talent wars are so intense that lots of energy is spent on making everyone feel good about their job, not actually delivering results. Founders have come to believe that the users will come if and when they build a great product, rather than managing the business through the lens of P&L, testing, and learning their way to what that product may be.

This is easier said than done. I’ve made this mistake more than once in my journey at Shift, and these mistakes cost us an insane amount of time and money.

Yet we can — we need — to hire people who are much better managers than many founders can be in their early days. Speaking from experience, it is hard to be an early-stage founder (focused on product and capital) and manager (focused on people management and accountability) simultaneously, so you need to figure out where you succeed and where you don’t, and then fill in the gaps.

You also need coaching — early! Only through good coaching can you recognize your blind spots and determine how to address them with the right people around you.

Better management lets companies do more with less

Yet, if great companies are still being built — 2020 and 2021 saw some pretty incredible IPOs — why should anyone care about whether they are well-managed or not? There are two reasons.

First, there is an unbelievable scarcity of engineering talent. We are doing a disservice to innovation, and to the future prosperity of the American economy, if companies who can afford it are hoarding great talent, even though they can accomplish the same results with fewer engineers. This also leads to underutilized engineers stuck in humdrum workplaces, and the scarcity of talent further exacerbates one of our country’s most pressing shortages. As a result, our ability as a nation to stay ahead on the global tech stage is massively constrained.

Then, there is the cost issue. If you think inflation in this country is bad overall, you should see salary inflation in Silicon Valley. Salaries are out of control, and so is our cost of living. Many engineers are cognizant of the issue and use it to their advantage, as they should. But these problems continue to feed into each other like a vicious cycle. This, of course, impacts businesses, especially startups, which end up needing a ridiculous amount of funding to pay for all of this.

There is an enormous opportunity for Silicon Valley companies to change their mindset on management. The first step is for founders to hire and surround themselves with people who embrace management and think about business through accountability and P&L. Recruit leaders who are experienced managers or seek the support of a management coach or consulting firm. When you think you need another engineer, pause and consider if what you really need is a manager to get more out of your existing engineers.

Second, leaders should focus on developing and managing their existing talent, such as matching employees with the right growth opportunities, reorganizing teams, setting goals, and holding leaders and employees alike accountable for meeting them.

What I’m proposing is a paradigm shift, one that is going to take time. Obviously, one or two companies implementing better management won’t change this issue overnight.

However, the work culture in Silicon Valley as we know it today originated and evolved from just a few companies. If, over the next decade, we see more well-managed, Amazon-style businesses being built, it would completely shift Silicon’s Valley culture and, as a result, how this industry — and country — is managed overall.

(文:George Arison、翻訳:Dragonfly)

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