国内製造大手の現場で採用広がるクラウドやAI–マイクロソフト顧客の事例

今回は「国内製造大手の現場で採用広がるクラウドやAI–マイクロソフト顧客の事例」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 日本マイクロソフトは3月15日、製造業界に対する取り組みに関する記者説明会を開催した。同社は2021年10月に従来のエンタープライズ事業本部を改組し、製造業界専任の「エンタープライズ製造事業本部」を設立。素材・化学、設備・装置、部品、自動車、電子機器、電機の各企業に対する支援体制を用意する。

 この日説明に立った業務執行役員 エンタープライズ製造事業本部 製造営業統括本部長の 横井伸好氏は、「国内製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は遅れていたがコロナ禍で加速し、このムーブメントを支援したい」と現状を分析。リモートによる設計業務などの継続や工場運営の支援に努めるとした。

 日本の製造業は主要産業の一つだったが、ここ数年はデジタル化が立ち後れ、国際的競争力は低下していた。だが、コロナ禍におけるリモートワークを背景に、製造業の現場もデジタル化もしくは先を見据えたDX化に取り組んでいる。各種業種にDX支援を行う日本マイクロソフトは、製造業での事例を披露。まずはソニーが、耳をふさがないワイヤレスヘッドセット「LinkBuds」と、Microsoftが開発した「Microsoft Soundscape」の活用例を紹介した。

 Microsoft Soundscapeは、目的地までの移動方法を音声で通知し、目印になる周辺の店舗名を読み上げるなど、スマートフォンの画面を見る必要がないアプリケーションになる。この仕組みを利用して、医療現場のスタッフなど現場業務に携わる人々の「目と手をふさがないコミュニケーション」(ソニー ホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ事業本部 モバイルプロダクト事業部 モバイル商品企画部長の伊藤博史氏)を実現する。

 LinkBudsで外部環境の音を取り込むなど、「Azure Communication Services」およびチャットボットをベースに開発したアプリケーションを搭載する。日本とインド、台湾、中国各国のソニーおよびMicrosoftエンジニアが共同開発し、個別に役割を担うスクラム開発で取り組んだ。ソニーの伊藤氏は、「両社の強みを生かしたコミュニケーションサービスの実現、エンジニアリングの知見共有、スピーディーな開発を実現できた。スクラム開発の経験は今後社内でも生かせる大きな価値につながった」と語った。

 このプロジェクトでは、各種業務現場で複数もしくは1対1のコミュニケーションを目指し、4月から病院などで実証実験の開始する予定という。その後は建設・製造現場や対面サービス現場といったより広い領域で検証を続けていくとしている。

 また、Microsoft 365を社内コラボレーション基盤として活用しているリコーは、開発拠点や生産拠点から収集したデータを「Azure Synapse Analytics」で分析し、製品やサービス品質の向上に活用している。このデータ分析基盤について同社ワークフロー革新センター EDW開発室 データマネジメントグループの佐藤雅彦氏は、「当初は日本マイクロソフトなど多数の支援をいただいたが、ノウハウの蓄積に応じて社内で取り組めるようになった。膨大で活用できなかったデータを、必要に応じて使えるようにしたAzure Synapse Analytics(の存在)は大きい」と評した。

 同社では、収集データを事前に分析可能な状態へと加工するクレンジングに要する時間を、Apache Sparkと組み合わせて短縮させている。さらに、データカタログを整備するため、統合データ管理サービスのAzure Purviewを用いた概念実証に取り組む。「データドリブンな経営実現に向けて、さらなるデータ利用や活用を進めていく」と佐藤氏は述べる。

 コマツ産機は、生産設備の予兆保全に「Azure Machine Learning」を活用してきた。その理由は、「製造業の生産現場は部品の故障によるライン停止が大きな損失につながる。そのため壊れたら交換する『事後保全』ではなく、定期的な点検と部品交換を行う『定期保全』が一般的。だが、定期保全はコストの最適化が難しい。この課題をDXで解決するのが当社の挑戦」(ICTビジネス推進室長の道場栄自氏)だという。

 同社では、機器から収集したデータをクラウドに蓄積し、必要に応じてデータを活用する基盤「産機Komtrax」を開発した。トヨタ自動車に納入した大型プレス機などに用いられており、モーターベアリングやタイミングベルトが摩耗した際の劣化情報を機械学習させることで、劣化部位の寿命予測や保全計画の立案に生かしている。機械学習基盤にAzure Machine Learningを使用しているが、道場氏は、「各社のAI(人工知能)ツールと遜色がなく、ノーコードで実装できる点にメリットを感じた」と語る。

 旭化成は、2021年4月にグループ全体のDXを目指した「デジタル共創本部」を設立している。「研究や製造の現場では2015~2016年頃からDXを推進してきた」(デジタルトランスフォーメーション統括 エグゼクティブフェロー デジタル共創本部長 常務執行役員の久世和資氏)という。

 同社では、データレイクに「Azure Data Lake Storage Gen2」、データベースに「Azure SQL Database」、分析環境にAzure Synapse Analyticsを採用し、サイロ化したデータを集約させる管理基盤の「DEEP(Data Exploration & Exchange Pipeline)」を構築。データ統合基盤である「Azure Data FactoryとAzure Data Lake Storage Gen2が特に強力。現場の構造化・非構造化データを効率的に扱い、カタログ化できる」(久世氏)とした。

 2018年からデジタル人材育成にも取り組んでおり、現在は「デジタル人材4万人プログラム」と称して推進している。

 日本マイクロソフト執行役員 常務 エンタープライズ製造事業本部長の渡辺宣彦氏は、「デジタルフィードバックループ構築支援」「新製品・サービスのアジャイル開発支援」「従業員のデジタル武装、DXスキル獲得支援」の三方から日本の製造業のDXを推進させると語る。例えば、デジタルフィードバックループについては、「各システムが扱うデータを相互にフィードバックされる形で活用し、全体としての提供価値を高めていく」と渡辺氏。

 従業員の“デジタル武装”についても、「単に個人がスキルを獲得するのではなく、相互に作用して大きなアウトプットを生み出せる体制作り」と渡辺氏は説明した。

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