「Raspberry Pi」登場から10年–生みの親が振り返る開発目的や教育への貢献
今回は「「Raspberry Pi」登場から10年–生みの親が振り返る開発目的や教育への貢献」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
今から10年前、米ZDNetはかなり珍しい新型ハードウェアを記事で紹介した。それは、高価な「Windows」PCやAppleの「iPad」ではなく、キーボードもディスプレイも搭載しない低価格のARMベースの「Linux」コンピューターだった。そして、そのコンピューターは発売後すぐに売り切れた。
「Raspberry Pi」の生みの親たちの予想は控えめで、販売台数はわずか1000台、あるいは、多くても1万台くらいだろうと考えていた。蓋を開けてみると、販売台数は1年以内に70万台を突破した。
そして今、Raspberry Piは最初のデバイスの発売から10年を迎えた。Raspberry Pi Foundationの創設者のEben Upton氏によると、これまでの販売台数は4500万台に達しており、学生やホビイストだけでなく、インターネットに接続するデバイスを作る企業による購入も増えているという。
Raspberry Piの現在のラインアップには、「Raspberry Pi 4」、70ドルのキーボード一体型「Raspberry Pi 400」、“Raspberry Piにハードウェアを搭載した”さまざまな拡張、2GB~8GBのRAMを搭載するさまざまなモデルが含まれる。Raspberry Pi 400は、1980年代にケンブリッジ大学のエンジニアたちによって設計された「BBC Micro」からヒントを得た製品だ。
世界で最も有名なシングルボードコンピューター(SBC)になったRaspberry Piの目的は教育である、とUpton氏は強調する。すべての利益はRaspberry Pi Foundationに還元される。
「われわれは2008年にRaspberry Pi Foundationを設立した。プログラミングの学習に使用できる楽しくて強力な低価格コンピューターを若者に提供することで、ケンブリッジ大学で減少していたコンピューターサイエンス履修者数を再び増やすことが目的だった」(Upton氏)
Raspberry Pi Foundationはこれまでに、6世代のRaspberry Piとコンピューティングモジュールを発売している。Raspberry Piデバイスは地球上のあらゆる場所だけでなく、宇宙空間でも使用されている。
「われわれの製品は、気球に搭載されたほか、国際宇宙ステーションや南極のペンギンコロニー、火山の内部、海底でも使用されている。また、スーパーコンピューターやキュウリ選別機、病院の換気装置にも組み込まれた。パンデミック下で、何万人もの子供たちがRaspberry Piを使って、自宅で学習した」(Upton氏)
さらに、Upton氏は非営利のRaspberry Pi Foundationが教育分野で果たした役割を強調し、「何百万人もの若者たち」が同財団の無料のオンラインコース、Code ClubやCoderDojoといったほかの組織とのパートナーシップを通して、「プログラミングを学んでいる」ことを指摘した。
Raspberry Piデバイスは、ボランティアや開発者、サプライヤー、再販業者、教師、保護者の大規模なサポートネットワークを獲得している。
ケンブリッジ大学もPiの10周年を祝っている。同大学のブログ投稿によると、Piは10億ドル規模の市場を作り出して、ウェールズのペンコイドにあるSony Europe B.V.の工場やケンブリッジで300人の雇用を創出し、エンジニアがIoTの制御システムを設計する方法に変革をもたらしたという。
ただし、すべてが順風満帆なわけではない。2012年には、チップ価格は横ばいか、または下落していたが、パンデミックに起因する2021年のチップ不足を受けて、Raspberry Piは初の値上げを余儀なくされた。エントリーレベルの2GB RAM搭載Raspberry Pi 4は、世界的な半導体不足を受けて、それまでより10ドル高い45ドルに値上げされた。