ツイッターによるロシア国営メディアRT(旧ロシア・トゥデイ)のEU限定ジオブロックは不安定なスタート

今回は「ツイッターによるロシア国営メディアRT(旧ロシア・トゥデイ)のEU限定ジオブロックは不安定なスタート」についてご紹介します。

関連ワード (政策、気持、決定等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


Twitter(ツイッター)は、ウクライナ侵攻後に欧州連合(EU)がロシアに科した制裁措置の一環として現地時間3月2日に発効したRT(旧ロシア・トゥデイ)とSputnikのEU全域での禁止を、不本意ではあるが遵守していると主張した。

Twitterの広報担当者は、今週報道陣の要請に応じて出した声明の中で、次のように述べている。

欧州連合(EU)の制裁は、EU加盟国において特定のコンテンツを控えることを法的に要求するものであり、当社はこれに従います。EU圏外における当社のグローバルな取り組みとしては、サービス全体にわたってこの種の国営メディアコンテンツを排除し、ラベルを通じて重要な文脈を提供することに引き続き重点を置いていきます。当社は、特に危機の時代において、自由でオープンなインターネットを引き続き提唱していきます。

しかし、TwitterがEUにおけるRTのコンテンツ配信を禁止する法的命令を実際にどの程度遵守しているかははっきりしない。

RT禁止令が発効して以来、欧州の一部のユーザーがロシア政府につながっているメディアの認証済みTwitterアカウントにアクセスしようとすると「アカウント保留中」という通知を目にしたと報告している一方で(以下の最初のスクリーンショット参照)、TechCrunchは、ジオブロック(特定の地域からの視聴の制限)を回避するためにVPNを使用しなくても、EU域内からRTのアカウントを閲覧できることを発見した(2つ目のスクリーンショット参照)。

EUにおけるTwitterの禁止措置対応をテストするために、フランスのユーザーがRTの認証済みTwitterアカウントを閲覧しようとしたときの状況は以下の通りだ。

フランスのTwitterユーザーがRTの認証済みTwitterアカウントにアクセスしようとしたときに目にした画面(スクリーンショット:TechCrunch)

しかし、3月3日にスペインからまったく同じことを試してみたところ、RTのアカウントへのアクセスはブロックされず、個々のツイート(国営メディアが同日朝にツイートした以下のものなど)も見ることができた。Twitterの「アカウント保留」通知は、EUの他の国でも表示され、スペインはその禁止措置の実施対象国に入っているにもかかわらずだ…。

スペインのTwitterユーザーは、まだRTのアカウントにアクセスできる(スクリーンショット:TechCrunch)

本稿執筆時点では、TechCrunchに協力したスペインのテスターは、TwitterのモバイルアプリやモバイルウェブからRTにアクセスすることがまだできた。

つまり、Twitterは今回、EUの制裁に違反しているように見える。

この問題が、スペインにおけるTwitterの禁止実行に、あるいはEU全体(加盟国は27カ国)に、どれほど広く(あるいは限定的に)存在するかは明らかではない。

さらなる「漏れ」も否定できない。特に、制裁が発効した直後はそうだろう。Twitterのコンプライアンスに問題があるのではないか、というのがここでの1つの解釈だ(更新:この読者からの指摘のように、ブロックは位置情報ではなく、ユーザーが申告した国に基づいていて、ユーザーがTwitterの設定で国を変更するだけで回避することができる、という解釈もある)。

英国ではRTのTwitterアカウントにアクセスすることができる。しかし、TwitterはEUの禁止令を遵守するために可能な限り狭い範囲での実施を選択し、これは意図的なものだ。それに、英国はもはやEU加盟国ではない。

英国は、RTのコンテンツをオンラインプラットフォームで配信することを禁止する同等の命令を国内で出していない。少なくとも現時点においてはそうだ。メディア規制当局のOfcomが現在、RTが同国の放送コードに違反していないかどうかを調査している(Ofcomはまた、オンライン安全法案の成立に先立ち、次期インターネットコンテンツ規則を監督する役割を大幅に拡大する準備を進めていて、将来的にオンラインコンテンツのモデレーションの決定に確実に関与することになる)。

EUの禁止命令を受けてTwitterがRTをジオブロックしている国のリストには、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイスも含まれていない。これらの国はヨーロッパに位置し、欧州自由貿易圏に属しているが、EUには加盟していない。

つまり、ここでもTwitterは、汎EU的な制裁を可能な限り狭く実施することを選択している。

この対応はApple(アップル)、Google(グーグル)とは対照的だ。2社は今週初め、それぞれのモバイルストアでRTのアプリへのアクセスをブロックしていると発表し、Appleはすべての国際マーケットでそうしている(ロシアを除く)。

Googleはそこまではしなかったが、Twitterよりも若干広範なジオブロックを実施した。また、前述のEUに加盟していない欧州諸国(英国、アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン、スイス)とEU諸国、ウクライナでのアプリへのアクセスもブロックしている。

マイクロソフトは2月28日「ロシアの国家的プロパガンダの露出を減らす」ため、WindowsアプリストアからRTニュースアプリを削除し、Microsoft Startプラットフォーム(MSN.comを含む)からRTとSputnikのコンテンツを一掃すると発表した。

そのため、ロシア国営メディアに対するTwitterの狭い範囲でのEUに限定したブロックは、流れから大きく外れているように見え始めている。

とはいえ、同社の主力製品はリアルタイムの情報サービスであり、そのため同社は検閲よりもむしろラベル付けやコンテキスト化を好む(そして今週初め、同社はロシアメディアにリンクするツイートにもラベルを付けると発表した)。

さらに、Twitterの声明が示唆するように、同社のネットワークは危機的状況下で特に大きな役割を果たすことができる。したがって、戦争中であっても、その中核となる実用性を低下させたくないという気持ちは理解できる。

同時に、ロシアのウクライナ侵攻によって、RTが発信する文脈は容赦無く変化している。そして、それを踏まえてTwitterが方針を見直したかどうかははっきりしない。

私たちは今、ロシアによる欧州の主権国家に対する侵略戦争を目撃しており、そこでは外国を標的としたプロパガンダが重要な戦略的役割を担っている。

だからこそ、EUの指導者たちはウクライナ侵攻によって、外国の情報操作に従事し、明らかにプーチン政権と結びついている2つの主要な国営チャンネルであるRTとSputnikを通じてプーチンのプロパガンダを自由に流し続けることを認めるのは危険だと非常に迅速に判断した。

それにもかかわらず、Twitterは(法的に)できる限り中立的でありたいと考えているようだ。

スペイン(EU加盟国)でテスターが遭遇した問題について尋ねられたTwitterは、RTのコンテンツをブロックできていない理由についての説明を避け、EUの制裁に「従うつもりだ」と述べた以前の声明に言及するにとどめた。

さらに質問をすると、Twitterの広報担当者は次のように答えた。「我々は禁止措置を実行しました」。

そうした説明から察するに、今回確認された問題は、禁止措置の不完全な実施例であり、Twitterが意図的に破ったわけではないようだ。そしておそらく、禁止令が法的効力を持つようになってからあまり時間が経っていないことも関係しているのだろう(EUの委員長は週末に警告を発していたが)。

できるだけ多くのツイートが流れることを好むと長い間表明してきた同社の姿勢を考慮すると、法的な禁止措置のいい加減な実行は、Twitterのずさんな実行に対する「バグではなく機能」の程度を意味しているのかもしれない。

TechCrunchは、このバグについて明確にするためにTwitterに圧力をかけた。しかし、指摘した問題に関して何度問い合わせても、明確な回答は得られなかった。

代わりにTwitterの広報担当者は、「country withheld content」(CWC)ページへのリンクと「どの国がどのような問題についてコンテンツの差し止めを求めているかについての最新の透明性レポートからのデータ / 説明」なるものへのポインタをTechCrunchに送ってきて「これが取り組み状況を理解する一助になれば」と付け加えた。

広報担当者が強調したテキストの塊(下部参照)は、Twitterがコンテンツへのアクセスを制限している国が現在20カ国であることを示している。つまり、行間を読むなら、それは遵守すべき非常に多くの異なる国別の命令があり、同社が完璧に実行するのに苦労していることを示唆しようとしている可能性がある。

そして3月2日、クレムリンにつながりのあるメディアに対するEUの禁止令が施行される前にEU当局は、コンテンツをデジタルで配信する可能性のある最後のメディアまで遮断することの難しさを考慮し、オンライン制裁の実施にある程度の進歩性を期待していることを示唆した(とはいえ、特定の地域の認証済みアカウントをブロックすることは、実際にはそれほど難しいことではないはずだ)。

TechCrunchが気づいたEUの禁止措置の実行に関するTwitterの問題の具体的な説明がどんなものであれ、1つだけはっきりしていることがある。それは、政策の実施に関する新たな失敗を見逃すことがあまりにも簡単だということだ。

私たちは現在、法的要求に応じて20カ国でCWCを使用しています。アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、インド、アイルランド、イスラエル、日本、オランダ、ニュージーランド、ロシア、シンガポール、韓国、スペイン、トルコ、英国です。この報告対象の期間中、Twitterはインドネシアで初めてコンテンツを保留にしました。

画像クレジット:TechCrunch


【原文】

Twitter has claimed it’s complying with an EU-wide ban on Russia Today (RT) and Sputnik which came into force yesterday as part of the package of sanctions imposed by the bloc on Russia following the invasion of Ukraine, albeit reluctantly.

In a statement the social network has been circulating in response to press requests this week a Twitter spokesperson said:

The European Union (EU) sanctions will legally require us to withhold certain content in EU member states, and we intend to comply. Our global approach outside of the EU will continue to focus on de-amplifying this type of state-affiliated media content across our service and providing important context through our labels. We continue to advocate for a free and open internet, particularly in times of crisis.

However it’s not clear how well Twitter is actually complying with the legal order banning the distribution of RT’s content in the EU.

While some users around Europe have reported encountering an “account withheld” notification if they try to access the Kremlin-linked media outlet’s verified Twitter account since the RT ban came into force (see first screenshot below), TechCrunch found it is still possible to view RT’s account from within the EU — without needing to use a VPN to circumvent the geoblocks (see second screengrab).

Testing Twitter’s implementation in the EU, here’s what a user in France encountered when attempting to browse to RT’s Verified Twitter account:

What a Twitter user in France saw when trying to access RT’s verified Twitter account (Screengrab: TechCrunch)

But testing the exact same thing today from Spain we found no block on accessing RT’s account and could also view individual tweets — including the below example which the state-affiliated media entity tweeted out this morning — despite Twitter’s own “account withheld” notice, visible elsewhere in the EU, listing Spain as one of the countries covered by its implementation…

A Twitter user in Spain still able to access RT’s account (Screengrab: TechCrunch)

At the time of writing our tester in Spain was still able to access RT from the Twitter mobile app and via the mobile web.

So Twitter appears to be breaching the EU sanction in this instance.

It’s not clear how wide (or singular) a problem this might be with Twitter’s implementation in Spain — or, indeed, across the EU (which has 27 Member States).

Further “leakage” can’t be ruled out. Perhaps especially this soon after the sanction came into force. One interpretation of what’s going on here is that it may be a case of Twitter still ironing out issues with its compliance. (Update: Another, as this reader pointed out, is that the blocks don’t rely on location but user-stated country so can be circumvented simply by the user changing their country in the Twitter settings.)

It is still possible to access RT’s account on Twitter in the U.K., too — but that’s by design as the company has elected for the narrowest possible application in order to comply with the EU ban, and the U.K. is no longer a member of the bloc.

Nor has the U.K. ordered an equivalent domestic order prohibiting RT’s content from being distributed by online platforms — at least not yet; its media regulator, Ofcom, is currently investigating whether RT has been breaching the country’s broadcast code. (Ofcom is also gearing up for a vastly expanded role overseeing incoming internet content rules ahead of the Online Safety Bill becoming law, so will certainly be getting involved in online content moderation decisions in the future.)

The list of countries where Twitter says it’s geoblocking RT in the wake of the EU prohibition also does not include Iceland, Norway, Liechtenstein and Switzerland — which are in Europe, and in the European Free Trade Area, but are not in the EU.

So, again, Twitter is electing for the narrowest possible implementation of a pan-EU sanction.

That contrasts with Apple and Google — which earlier this week both announced they were blocking access to RT’s apps on their respective mobile stores, with Apple doing so in all international markets (except Russia itself).

Google didn’t go that far but it did implement a slightly broader geoblocking than Twitter — also blocking access to the apps in the aforementioned non-EU European countries (U.K., Iceland, Norway, Liechtenstein and Switzerland), as well as EU countries and Ukraine.

On Monday, Microsoft also announced that it was removing RT news apps from its Windows app store, and purging RT and Sputnik content from its Microsoft Start platform (including MSN.com) — in order to “reduce the exposure of Russian state propaganda”, as it put it.

So Twitter’s narrow, EU-only block on the Kremlin-affiliated media outlet is starting to look like an outlier.

That said, the company’s core product is a real-time information service — which explains its general preference for labelling and contextualizing, rather than censoring (and earlier this week it announced extra labels for tweets linking to the Russian media outlets).

Moreover, as Twitter’s statement implies, its network can play an especially heightened role during times of crisis — so having a reluctance to degrade its core utility, even during a war, is understandable.

At the same time, the context in which RT is operating has inexorably shifted with Russia’s invasion of Ukraine. And it’s not clear whether Twitter has reassessed its policies in light of that.

We’re now witnessing a war of aggression by Russia against a sovereign country in Europe — in which foreign-targeted propaganda is playing a key strategic role.

This is why EU leaders very quickly decided that the invasion of Ukraine marked a red line for allowing the continued free flow of Putin’s propaganda through RT and Sputnik, the two main state-affiliated channels which are engaged in foreign information manipulation and clearly attached to his regime.

Nonetheless, Twitter prefers to stay as neutral as it (legally) can, it seems.

Asked about the issue our tester encountered in Spain (an EU country) Twitter declined to provide an explanation of why it is failing to block RT’s content — merely pointing back to its earlier statement when it said it “intend[s] to comply” with the EU sanction.

Pressed further, Twitter’s spokeswoman confirmed: “We have implemented the ban.”

Given that, it looks like the issue we’ve identified is an example of an imperfect implementation of the ban — presumably not an intentional fail by Twitter. And perhaps related to how little time has passed since the ban came into legal force (although the bloc’s president warned it was coming at the weekend).

Considering the company’s long-stated preference for as many tweets as possible to flow, it may also be the case that a flakey implementation of a legal prohibition implies a degree of “feature not bug” to Twitter’s sloppy execution.

We did press Twitter for clarity on the bug. But despite repeated attempts to get straight answers regarding the issue we had flagged, none were forthcoming.

Instead Twitter’s spokeswoman sent us a link to its “country withheld content” (CWC) page — and a pointer to what she described as “the data/explanation from our latest transparency report about which countries are asking us to withhold content and re: what issues”, adding that she “hopes this helps give you a sense of scale”.

The chunk of text she highlighted (see base of post) indicates that there are now 20 countries where Twitter is restricting access to content. So — attempting to read between the lines — it may be trying to suggest that with so many different, country-specific mandates to comply with it’s struggling to execute perfectly.

And ahead of the bloc’s ban on the Kremlin-linked media coming into force yesterday, EU officials did signal that they were expecting a degree of progressivity to implementation of the sanction online, given the challenges of cutting off every last outlet where content might get distributed digitally. (Albeit, blocking verified accounts in specific regions really shouldn’t be that hard.)

Whatever the specific explanation for the issue we found with Twitter’s implementation of the EU’s ban, one thing is clear: It remains all too easy for it to shrug off another policy enforcement failure.

We have now used CWC in 20 countries in response to legal demands: Argentina, Australia, Brazil, Canada, France, Germany, India, Ireland, Israel, Japan, Netherlands, New Zealand, Russia, Singapore, South Korea, Spain, Turkey and the United Kingdom. During this reporting period, Twitter withheld content in Indonesia for the first time.

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi)

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