SAPをイメージチェンジしたい–最高マーケティング ソリューション責任者に聞く方向性
今回は「SAPをイメージチェンジしたい–最高マーケティング ソリューション責任者に聞く方向性」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、トップインタビュー等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
数十年来の顧客を多数抱えるSAP。オンプレミスでSAPを利用する顧客を、クラウドを前提とした「S/4HANA」にマイグレーションしてもらうことが同社の重要な課題になっているが、既存顧客との良好な関係を保ちながら、どうやって変化を享受してもらうのか――。SAPがスペインのバルセロナで開催した年次イベントの世界ツアー「SAP Sapphire Barcelona 2024」で、エグゼクティブボードメンバー 最高マーケティング ソリューション責任者(CMSO)のJulia White氏に聞いた。
–WalkMeの買収計画(取引完了は2024年中の見込み)など、SAPは顧客のマイグレーションにかなり投資をしています。顧客にクラウドへ移行してもらうための投資と、AI活用などの先進技術への投資のバランスをどのように見ていますか。
2021年にプロセスマイニングのSignavio、2023年にエンタープライズアーキテクチャー管理のLeanIXを買収しました。今回WalkMeの買収意向を発表しました。これにより人の面での変革をサポートします。
一方で、われわれは単に顧客をクラウドへ動かそうとしているのではありません。オンプレミスからAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftの「Azure」へ動かすのではなく、やり方を変えてもらうことを支援しています。
Signavioは、ビジネスプロセスの“レントゲン”を撮ることができます。これにより、「同業他社に比べて自社の財務プロセスが15%遅い」「調達プロセスが25%複雑である」といったことが分かります。この情報を元に簡素化、合理化、効率化を進めることができます。そして、機能がたくさんあっても使いこなせない、ということにフィットするのがWalkMeです。
このように、顧客のクラウドへの移行に投資しているだけでなく、それを通じたイノベーションへの投資でもあります。
–SAPがそのようなメッセージを発信している一方、移行に苦労している顧客もいます。クラウド、そしてAIの受け入れと、顧客のレベルにばらつきがある状態をどう見ていますか。
SAPは、世界中にインストールベースがありますが、メッセージが伝わっているところもあれば、足りないところもあります。SAPは、コアをクリーンにする「クリーンコア」を推奨していますが、先週20年以上の顧客から「初めて知った」と伝えられました。
先に「RISE with SAP」の方法論をプログラム化しました。これにより理解しやすくなったのではないかと期待しています。今後も一貫してメッセージを伝え続けます。Sapphireのようなイベントは、基調講演やセッション、顧客とのミーティングができるので格好の場となります。
ばらつきについては、インターネット、モバイルとあらゆるテクノロジーの波でアーリーアダプター(先進的な利用者)がいれば、受け入れが遅い企業もあります。現在はクラウド、そしてAIですが、少しずつ進めていくしかありません。SAPは、そのAIをクラウドの移行や変革に活用すべく、「Joule with SAP Consulting」と「Joule with ABAP Developer」を発表しました。今から移行するという顧客は、一足飛びに移行を進めることができるチャンスといえます。
ご指摘の通り、SAPの顧客はさまざまです。SAP自身がアーリーアダプターとなってガイドしていきます。私たちのチームでは、AIでセールストレーニングの動画や新しいマーケティングコンテンツを作成しています。
顧客はそれぞれペースが異なりますが、生成AIの急速な進展により、新しい技術の適用という点でプレッシャーは強くなっていると思います。クラウドに移行することで、新しいイノベーションを簡単に利用でき、ビジネス上の成果を得ることができます。移行が遅れると、その分差が開いてしまいます。生成AIのブームは企業にプレッシャーを与えており、SAPは信頼できる技術パートナーとして、顧客がクラウドやAIを容易に活用できるようにすることに投資していきます。
–SAPは「クリーンコア」戦略を進めており、85%を標準化するとしています。生成AIの役割も大きくなっています。コンサルタントパートナーの役割は今後どう変わるのでしょうか。
パートナーが手掛けるカスタマイズは今後もある程度の割合で存在するでしょう。ただし、やり方は異なります。
製薬やディスクリート製造など特有のソリューション、固有のニーズが存在する業界があります。オンプレミスの世界では各社が作り込む必要がありましたが、そのやり方は、持続的ではありません。「SAP Business Technology Platform」を使って、ERPのコアではなくクラウドネイティブなやり方で拡張することを推奨しています。
パートナーが変わる必要があるという点に異論はありません。われわれは、RISE with SAPで認定パートナー制度を設けましたが、アップグレードができなくなったり運用コストがかさんだりしてしまうな複雑なカスタマイズから脱却して、クラウドネイティブに移行してもらうという意図があります。これによりSAPの顧客は、新しい技術を受け入れ、アップグレードが容易になり、無駄なコストを削減できるでしょう。