深層学習、コロナ変異株の中和抗体開発に活用
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深層学習ニューラルネットワークの第2弾「AlphaFold v2.0」が2020年11月に登場したとき、構造生物学の世界は驚きに包まれた。Googleの親会社Alphabet傘下の人工知能(AI)企業DeepMindが開発したこのシステムが、タンパク質の機能を制御する重要な要素であるタンパク質の折り畳みに関する数十年来の問題を解決したからだ。
最近の研究は、AlphaFold v2.0が開拓したこのようなアプローチがより広範な生物学コミュニティーに広まっていることを示している。米国科学アカデミー紀要(PNAS)が米国時間3月1日に公開した論文「Deep learning guided optimization of human antibody against SARS-CoV-2 variants with broad neutralization」(SARS-CoV-2変異株を広範に中和するヒト抗体の深層学習による最適化)もその1つだ。科学者らはこの論文で、新型コロナウイルスに対する既知の抗体を修飾して、この感染症のさまざまな変異株に対する効果を高める方法を説明している。
「(デルタ変異株に対する有効性を示していなかった)抗体の幅を広げ、デルタ株を含むSARS-CoV-2変異株に対する有効性をおよそ10倍〜600倍に高めることに成功した」と、科学者らは述べている。また、このアプローチがオミクロン変異株に対しても有効である可能性を示す兆候も見つかったという。
この研究は、北京にある清華大学のSisi Shan教授らと、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校およびマサチューセッツ工科大学の研究者から成るチームによって行われたもので、2つの重要な理由で深層学習を活用している。
1つ目は検索空間と呼ばれる、この場合は抗体を修飾するためのソリューションのセットを拡張することだ。ランダムな突然変異誘発などの既存のアプローチは有益だが、「時間がかかり、労働集約的」だという。そのため、深層学習の活用がこの作業の自動化と高速化につながる。
第2に、ランダムな突然変異誘発のようなアプローチは、抗体を改良することができるが、その良い部分を取り除いてしまう場合もあるということだ。つまり、最適な結果が得られない可能性がある。研究者らは、深層学習を用いることにより、成果を保存しつつ有効性を拡張したいと考えている。単なる改良ではなく、最適化を目指しているということだ。