IBMのクリシュナCEO、「AIは重要な転換点に近づいている」
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米国ボストンで開催された「IBM Think」カンファレンスに先立ち、最高経営責任者(CEO)のArvind Krishna氏は取材陣に対して、グローバル市場は人工知能(AI)の重要な転換点を迎えようとしており、大幅な生産性拡大を実現する可能性があると語った。
この主張を裏付けるように、IBMは、「2022 Global AI Adoption Index」(世界のAI導入状況2022年)を発表した。意思決定権を持つ上級管理職7502人を対象とした調査だ。これによると、現在事業にAIを取り入れている企業は35%で、前年から4ポイント増加している。また、企業の30%は、AIや自動化関連の最新ソフトウェアやツールを導入することで、従業員の時間節約につながったと回答した。
Krishna氏は、これらの数字は今後も着実に伸び続け、「50%前後で転換点を迎えるだろう。その後は90%まで急上昇する。つまり、今はこの転換点まであと少しの地点で、それはこうした生産性を引き出すものになる」と述べた。
同氏はPWCのレポートに言及し、AIの導入がこのレベルまで拡大すれば、2030年までにおよそ16兆ドル(約2000兆円)規模の経済効果が期待できると述べている。
IBM Thinkカンファレンスでは、IBMがマクドナルドといった顧客と連携し、どのように実用的なAIユースケースを展開しているかが紹介された。Krishna氏は、急成長するAI市場で、IBMがどのように存在感を維持するかを顧客、パートナー、投資家に示す狙いがあるようだ。同社は2022年に入り、かつて「戦略的インペラティブ」の1つと位置付けていた「Watson Health」事業の一部を売却すると発表している。
Krishna氏は取材陣に対し、IBMはAI業界のリーダーポジションを狙っていることに変わりはないものの、壮大な「ムーンショット」プロジェクトに注力するつもりはないと語った。
「今年、来年、そしてその翌年、顧客に価値を提供することに取り組まなければならない」と同氏は言う。「さらに、ムーンショットと位置づけているいくつかに取り組むかもしれない」
さらに同氏は、「(AIにおける)ヘルスケアの例は実現しうると考えている」と述べた。「しかし、これらの問題がいかに困難かを考えれば、成果を得るには数年あるいは10年以上を要するかもしれない。問題は生死にかかわるものだ」
Krishna氏は、究極のムーンショットともいえる汎用化されたAIの開発について、実現には遠く及ばないと考えていると述べた。科学者を対象に行った各種調査によると、そのようなAIが実現するのは2050~2075年あたりになるというのが大方の見方だという。
当面、IBMなどの企業は顧客の主要なプロセスの自動化を支援できるとKrishna氏は言う。実際に、マクドナルドはIBMのAIを導入して、顧客から注文を受けるプロセスを自動化している。IBMは顧客企業と協力し、ITプロセスにAIを導入しようとしている。
「AIが急速に成長している理由は、現在250京バイトのデータが毎日生成されている現状にある」とKrishna氏は言う。「どれだけの人がいても処理できる量ではなく、古いアナリティクスやデータベース技術では不十分だ。AIはそのデータを活用し、インサイトを得ることができる唯一のツールだ」