ラック、ウクライナ情勢のサイバー動向をまとめたレポートを発行
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ラックは8月2日、セキュリティ調査研究報告の最新号「サイバーグリッドジャーナル vol.14」を発行した。同日に記者懇談会を開き、同号で取り上げているウクライナ情勢のサイバー動向について解説した。
「サイバーグリッドジャーナル」は、同社で国家的なサイバーセキュリティ動向について調査研究を担当する「ナショナルセキュリティ研究所」が発行している。最新号では、2月に始まったロシアのウクライナ侵攻を巡るサイバー動向を中心に、6月中旬時点での世界情勢を分析した。
最新号を執筆したナショナルセキュリティ研究所の所長で元自衛隊 指揮通信システム隊 サイバー防衛隊長の佐藤雅俊氏は、今回のウクライナ侵攻をサイバー動向から見ると、2014年のロシアによるクリミア半島地域併合からの流れにあると指摘。2021年後半にロシアと北太平洋条約機構(NATO)の対立の深刻化によりロシアが軍事侵攻に踏み切る直前からサイバー戦が開始され、ここでは破壊型マルウェアをはじめとするさまざまなサイバー攻撃が繰り返された。
ロシア側からとされるウクライナへのサイバー攻撃やサイバースパイ活動が活発になる中で佐藤氏は、ウクライナを支援するサイバー義勇軍の「IT軍」の参入やAnonymousの関与など、軍事組織以外の勢力の関与が状況を複雑なものにしていると分析する。また、ロシアが組織的なサイバー戦の能力を保有しているのに対し、ウクライナも一定水準の能力を有するが、インテリジェンス能力はロシアに劣るために、欧米の支援でこれを賄っているという。
佐藤氏は、総じてロシア側がウクライナに対して淡々とサイバー攻撃を実行している印象があるとし、ウクライナ側はVolodymyr Zelenskyy大統領が演説で日本や西側諸国などに支援を呼び掛けるナラティブ(語り)による情報心理戦を仕掛けている点が特徴だと解説。直接的なサイバー攻撃のほか、インターネット空間におけるプロパガンダ、フェイクニュースなど情報攻勢が複雑に展開されており、こうした中で情報の正確性を見極められるかが重要になっているとした。
また最新号に寄稿し、国家安全保障に詳しい慶応義塾大学総合政策学部の廣瀬陽子教授は、ウクライナ情勢が今なお継続している前提の上で、今後の情勢について予想を紹介した。
廣瀬氏は、動向が行き詰まる中で、西側諸国とロシア勢に対し独自の動きを見せる中国やインドなどが第3勢力として台頭している点や、ロシアを非難する国際連合(国連)の決議などに反対や棄権を表明する国家が一定数存在し、ロシアへの配慮と欧米流の価値観に反発する流れが生じているとし、ロシアにエネルギーを依存する欧州諸国の動きも決して一枚岩でないなどと指摘する。
こうしたことから、従来の専制主義的な国家勢力と民主主義や自由主義を掲げる国家勢力の2極的な争いに台頭する第3勢力が加わり、新しい秩序の形成や現状を打破するための新たな枠組みの構築が求められていく可能性があるという。