人材不足の解消が喫緊の課題–量子コンピューティング分野
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テクノロジー分野の大半がそうであるように、量子コンピューティングも人材不足に直面している。
世界経済フォーラム(WEF)が9月に公開した調査結果によると、現在、量子コンピューティング企業の半数以上が求人中だ。
これは業界の課題になっている。政府や企業が、数百億ドルもの資金を量子コンピューティングにつぎ込んでいるが、優秀な人材が確保できなければ、業界の進歩は期待できないだろう。
この分野は通常、量子物理学といった専門知識や博士号などが求められ、それがこの分野に入る最初の障壁となっている。
しかし、量子コンピューティング分野のすべての仕事で、量子論や高度な数学、コンピューターサイエンスに関する博士号レベルの教育が必要なわけではない。実際、多くの仕事は、これまでのようにハードウェアやソフトウェアのスキルが求められる。つまり技術スペシャリストなら、量子コンピューティングのキャリアのために、再教育をほとんど、あるいは全く受ける必要がないかもしれない。
大量解雇によって、ビッグテックの世界が波乱含みのなか、英国の量子コンピューティングの新興企業Universal Quantumは、技術専門家が急成長中の量子コンピューティング分野に、自身のスキルを移すまたとない時期だと考えている。
「風変わりで謎めいた量子物理学者だけが、求められているわけではない」と、同社の共同創立者で、チーフサイエンティストのWinfried Hensinger教授は述べる。
同社は最近、6700万ユーロ(約96億円)の資金を確保したことを受け、採用活動を精力的に進めている。これは、量子コンピューター企業1社に対する政府契約としては、最大の受注を獲得したことによるもので、同社は世界初の100万量子ビットの量子コンピューターの構築に取り組んでいる。
IBMが製造する世界最強の量子コンピューティングチップが、433量子ビット(キュービット)であることを考えると、これは大胆な野望と言えるだろう。
同社は、実現できる自信があるという。しかし、従来のテクノロジー企業が求人に躍起になるなか、量子コンピューティングのような初期の段階にある分野に、テクノロジストを惹きつけるのは容易ではない。Universal Quantumはさまざまなスキルの人材を求めており、それは回路チップの設計者、デジタル設計の専門家、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)のエンジニアから、全く新しいプラットフォーム上に新しいソフトウェアを書くことにやりがいを感じるコーダーまでに至る。
「必要な人材の中には極めて特殊で、量子に特化した分野もある。その場合は当然ながら、ほかの特殊な人材プールと同様の課題に直面する。そのため、雇用者として強力なブランドを確立して、優れた従業員価値を提案し、企業が目指す目標の中で、従業員が自身の役割を理解できるようにすることが重要だ」と、同社の人材部門責任者であるSamantha Edmondson氏は説明する。
「人材確保で苦労するのは、こうした従来のエンジニアリング分野は非常に競争が厳しく、量子が近寄りがたい雰囲気を持つことだ。昔ながらのエンジニアリングの職務から、量子エンジニアリングへと移行できると思う人は少ないため、そうした人々を説得し、彼らが持つスキルを実際に必要としていることを納得させなければいけない」(同氏)