百度、中国で高齢者・子どもの「尋ね人」問題にAIを活用

今回は「百度、中国で高齢者・子どもの「尋ね人」問題にAIを活用」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 認知症などを患う高齢者の徘徊が問題になっている。突然の徘徊で家族の行方不明を経験した読者もいるだろう。中国では、一人っ子世代が中年に差し掛かり、その親世代は高齢期に突入している。

 監視社会と言われる中国では、街中のさまざまな場所に監視カメラが設置されている。これは国外では否定的にとらえられることが多い。筆者は中国の監視カメラにまつわる情報をSNSで時々紹介している。その中で、例外的に肯定的に評価されたのが徘徊する高齢者の発見につながった事例である。

 中国では、高齢化社会が進展する中、アルツハイマー病や認知症による高齢者の徘徊が年々深刻になっている。高齢になると自分の身元や家族の連絡先をうまく伝えられないことがあるが、監視カメラと人工知能(AI)を用いた顔認証によって「尋ね人」問題が解決したというニュースをしばしば目にする。

 これは高齢者だけを対象としたものではない。子どもが尋ね人になることもある。中国では、小さい子をさらって国内の遠く離れた地域に連れていき、違法に就労などをさせることが社会問題となっている。もう10年以上前になるが、ブラウザーなどでアクセスした際に指定されたページが存在しない場合に表示されるNot Found(いわゆる404エラー)ページに行方不明になった子どもの情報をランダムに掲示する仕掛けもあった。また、中国民政部に認定された非営利的国際協力団体(NGO)が運営する情報提供サイトもあった。ただ、非常に多くの子どもが連れ去られているので、膨大な数の写真から見つけ出せるかどうかは運次第なところもあった。

 加えて、そうした子どもの多くは、行方不明になってから何年も経過しており、成長によって身体的な特徴も変化している。そのような状況で行方不明者の特定が困難を極めるのは想像に難くない。DNA鑑定で身元を特定するという方法もあるが、そこに持っていくまでが簡単なことではない。

 AI事業に社運をかけている百度(バイドゥ)は2016年に「百度AI尋人」というプロジェクトを立ち上げ、こうした問題に取り組んでいる。同社のディープラーニングラボ(百度IDL)やAIプラットフォーム事業部(AIP)、AIテスト事業部(AIQA)、プラットフォーム事業部(衆測)など、複数部署から十数人のエンジニアがメンバーとして参加している。

 ソリューションの中身は、深層学習技術を活用して監視カメラの映像から顔の特徴を抽出し、行方不明者のデータベースにある写真とリアルタイムに照合するというもの。これを実現するには、まず加齢などに伴う特徴の変化に対応できるよう顔認証の精度を高めなくてはならない。そこで学習用データとして全従業員に子ども時代の写真を提供してもらい、学習モデルを継続的に育て、認識精度を実用的なレベルまで向上させた。巨大企業だからこそできることだ。

 中国全土に行方不明者の情報を取り扱う事務局があり、各地で管理する3万人超の行方不明者情報が共有された状態にある。行方不明者の写真をシステムにアップロードすると、バイドゥのサービスを介して特徴が一致した10枚の写真が選ばれ、家族などはそれらの写真を見比べられる。

 近年、中国でも写真の投稿には敏感になっている。個人情報の取り扱いも神経質になっており、民間企業による情報漏えいには中国人も不満をもらすようになっている。顔認証機能はさまざまなサービスに搭載されるようになった一方で、写真を使ったなりすましで認証が通ってしまうことがある。それによって、顔認証を用いたサービスの登録やドアの施解錠、オンライン決済などで悪用されるリスクが中国でもたびたび報じられている。

 そこで、バイドゥのシステムは、アップロードされた顔写真などの生体情報を漏えいさせないように工夫している。Base64エンコーダーを使用して画像を文字列に変換した上で非可逆化の処理を行い、さらに暗号化することで安全対策を講じている。

 2021年3月の時点と少々データは古いが、百度AI尋人では、それまでに利用者から42万枚余りの写真がアップロードされ、結果として1万2000人の行方不明者の発見につながった。子どもが何年も前に行方不明になったとしても、成長や加齢に対応した顔認識技術を使って再会できた事例が相当数あったわけだ。

 テクノロジーの力によって何十年ぶりに友人や知人などと再会することも珍しくなくなったが、筆者(筆者でなくても)は数年の時を経て親子が再会したというニュース動画を涙なくして見られない。

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