DXに向けたIT環境の再整備–情報システムと運営プロセスの両面での変革

今回は「DXに向けたIT環境の再整備–情報システムと運営プロセスの両面での変革」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 旧来のIT環境がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を阻害することがあるため、ITインフラやアプリケーションなどの情報システムを再整備するとともに、ITの企画・開発・運用の手法やプロセスを含むライフサイクル全般を変革する必要があります。

 連載では、前回の制度・権限の変革に加えて組織・人材など、5回にわたってDX推進のための環境整備について述べてきました。今回は、そのシリーズの最後として、環境整備の中でも難易度が高く、投資と時間を要するIT環境の再整備について考えていきます。

 DXに向けたIT環境の再整備を「レガシーシステムの刷新」と捉える向きがあります。例えば、経済産業省が2018年に「DXレポート~ ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」で指摘した「2025年の崖」を乗り越えるためには、レガシーシステムを刷新することがDXの必要条件と解釈する人が少なからず存在します。

 これは間違いではありませんが、決してそれだけではありません。DXを推進する際には、ITインフラやアプリケーションなどの情報システムを再整備するとともに、ITの企画・開発・運用の手法やプロセスを含むライフサイクル全般を変革する必要があります。

 それでは、なぜIT環境の再整備が必要なのでしょうか。それは、DXの推進において求められているIT環境と、現状の情報システムやIT運営プロセスとの間にギャップがあり、それがDX推進の阻害要因となっているからです(図1)。

 DXでは早期の立ち上げ、先進技術の活用、軽やかな始動と適宜柔軟な拡張と縮小、そして顧客や利用者の要求に即した迅速かつ継続的な改善が求められます。一方、現状の情報システムは、綿密な計画と長期に及ぶ開発が必要で、複雑化してブラックボックスとなっているために機能追加も難しい状況となっています。さらに、多大な初期費用がかかり、維持コストも肥大化していることに加えて開発や修正に費やす期間が長くなり、迅速な対応が困難となっています。このようなギャップを解消することが、DXのためのIT環境再整備の重要なポイントとなります。

 DXの進め方においては、不確実要素が多く、新しい技術にもチャレンジするため、最初から綿密な計画を立てにくいという特徴があり、迅速で柔軟な考え方や進め方を取り入れることが推奨されます。従って、このようなDXの推進方法に適合するように、ITの企画・開発・運用方式に変革することが重要です。

 ここで言うIT環境は、ITインフラ層だけでなく、アプリケーション基盤やデータ基盤層、さらにはアプリケーション層を含む全ての領域にわたります。また、ライフサイクルの観点では構想段階から開発・実装、維持、運用の全工程に至る、幅広いIT環境の再整備が必要になります(図2)。

 まず、各層と各工程の全般において必要となるのがリーンスタートアップや仮説検証を取り入れた柔軟なプロジェクト運営です。特に、ユーザーが直接利用するアプリケーション層では、リーンスタートアップの考え方が重要であり、まず最小限の機能を実装して世に送り出し、顧客や利用者の反応を得てそこから学習し、修正を加え、これを短期のサイクルでくり返すことが求められます。

 そのため、従来の要件定義・設計・開発・テスト・運用の一方通行の開発手法であるウォーターフォール型の進め方ではなく、開発担当者と運用担当者が緊密に協力・連携し開発を迅速に進めるDevOpsや、機能単位の小さなサイクルで計画から設計・開発・テストまでの工程を繰り返すアジャイル開発を取り入れたサービス実装の考え方が有効となります。

 企画・構想化の段階では、ITインフラ層からアプリケーション層の全ての領域において、変更や拡張が起こり得ることを想定したアーキテクチャーの構想化が求められます。

 開発・実装の段階においては、業務システムの再構築、レガシーシステムの移行に加えて、クラウドを活用した新たなプラットフォームを構築する場合もあるでしょう。また、運用においてはアプリケーション運用の自動化、クラウド環境の効率的な管理なども視野に入れる必要があります。つまり、DXに関わる新規のシステムだけでなく、それに連携する既存のシステムも含めた全体の運営を考えなければならないということです。

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