ヤンマーに聞く、草の根活動でDX人材を組織化した2年間(前編)

今回は「ヤンマーに聞く、草の根活動でDX人材を組織化した2年間(前編)」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、先進企業が語る「DX組織論」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 現在多くの企業が事業戦略の中核にDXを据えて取り組みを進めているが、DXマインドを社内に定着させ、そこからデジタル技術を活用したビジネスモデルの変革までたどり着けている企業は少ない。DXで着実に成果を上げている企業とそうでない企業は、何が違うのか。

 当連載では、「DX成功の鍵は実効性が備わった“専任の推進組織”にある」と考え、DX先進企業のケースを紹介しつつ、機能するDX推進体制の構築と運用のポイントを探っていく。今回は、“草の根DX活動”を起点に2年間で社内の取り組みを加速させてきたヤンマーホールディングス(ヤンマーHD)のDX推進手法を紹介する。

 ヤンマーHDは、世界で2万人以上の従業員を擁する産業機械メーカーである。1912年(明治45年)創業という社歴を持ち、現在は創業時から手掛けるディーゼルエンジンに加え、農業機械・農業施設、建設機械やエネルギーシステムの開発・製造・販売など、幅広い領域で事業を展開している。

 同社が本格的にDXに着手したのは2022年。それまでも個別の取り組みはあったものの、2022年度を開始年度とする3カ年のグループ中期計画「Change&Challenge MTP2025」の中で戦略課題の1つに「DXに対応する次世代経営基盤の構築」を掲げ、そこから全社的な取り組みがスタートした形だ。グループ内にDX専任組織を設置し、グローバルに人材を最大活用するための人事制度改革や、効率的な生産・新規技術を確立するものづくり体制の構築を目指すとともに、新しいIT経営基盤の構築に向けた活動を始めている。

 その中でDXの方向性を示すのが、「デジタル中期戦略(2022~2025年度)」である。同戦略では、まず具体的な方向性として、「デジタル基盤の構築」と「既存オペレーション最適化」、最終的に目指す姿として、「新たな付加価値の提供(DX)」という3つのステップを設定。具体的な施策としては、(1)基盤となるインフラの整備とセキュリティの強化、(2)データ基盤の再構築とモダナイゼーション、(3)草の根DX施策組織化・グループ展開、(4)データ活用・分析――という4つの重点取り組み事項を掲げ、同戦略に沿った形でDXが進められている。

 推進体制を見ると、2022年7月に取締役のレベルにデジタルとITを統括するポジションが設置され、グループ内のヤンマー建機で社長を務めていた奥山博史氏が同職に就任した。CDOの傘下には、新設されたデジタル戦略推進部やグループの情報子会社であるヤンマー情報システムサービスが配置される形となり、以降同氏が最高情報責任者(CIO)や最高情報セキュリティ責任者(CISO)も兼務する形で、領域が異なる4つの重点的な取り組みを一体となって進めている。

 ヤンマーHDがDXを推進するに当たり注目すべき項目が、(3)の「草の根DX施策組織化・グループ展開」である。DX推進戦略を進めるに当たって奥山氏は、それまで同社の社内でデジタルという視点と評価軸が欠けていた中、デジタル戦略推進部の支援の下で「草の根DX活動」を実施し、まずは「現場」側で成果を出すところから取り組みを始めた。

 この現場重視のアプローチには、「根拠」と「戦略」という2つの側面がある。

 まず、グループ中期戦略の中には、デジタルに関連する重要なポイントが2点存在している。1つ目は、モノ売りの会社だったヤンマーを、コト売りやソリューションを提供していけるように変革し、デジタルを活用して顧客にとっての価値を創出していけるようにすること。そして2つ目は、社員がチャレンジによって自己実現を目指してそれを周囲もサポートし、結果として会社や社会に貢献していく「HANASAKA(ハナサカ)」という同社が大切にしているマインドを、デジタル活用を通じて具現化できるようにすることである。

 それを踏まえると、「グループ中期戦略におけるデジタル化の最大の目的は、お客さまに対してデジタルを通じてしか実現できないような価値を提供すること」(奥山氏)であり、そこで重要な役割を担うのが、現場ということになる。

 「お客さまにとっての価値を一番分かっているのは、実際にお客さまに接し、工場で生産性の改善に取り組んでいる現場の社員たち。現場の人間がデジタルに詳しくなることで、デジタルを活用した製品やサービスが提供できるようになり、利用者であるお客さまの価値を高めていくことができるようになる。そこにチャレンジしつつ、同時にそれぞれが自己実現やHANASAKAにもつなげていく――というのが基本的な考え方となる」と同氏は説明する。これがまず、現場を重視した根拠となる部分である。

 そのため、DXに関するシステムもIT部門ではなく現場が開発できるようにし、機械学習や生成AIといった今後必要となるデジタル領域や、ノーコード開発やロボティックプロセスオートメーション(RPA)といった生産性向上に寄与するツールに関する知識を現場の人間が理解し、自ら必要な分析やシステムやアプリを作れるようになることを目指した。

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